第117話:ご褒美の王都散策と、街への繰り出し
社交界デビューから明けた翌日。
無事に大役を果たしたご褒美として、私は王都の街へとお買い物に出かける許可をもらうことができた。
「オリカ、街へ行くのは良いが、護衛は絶対に欠かすなよ! 刺客や不審者がいないか僕が目を光らせて……」
「ルファス様、本日は王立魔導学院の特別講義がある日です。お忘れですか?」
一緒について行こうと必死なお兄様を、エリアス先生がすかさず書類でバシッと制する。
「ぐっ……! な、なぜ今日に限って……!」
「ご安心ください、ルファス様。本日のオリカ様のお買い物には、家庭教師兼・護衛役として私が同行いたします。……もちろん、街でのマナーや実地の社会勉強も兼ねて、ですが」
先生がフッとメガネの奥の瞳を光らせる。
ギルバートお父様とお母様も「エリアスがついていくなら安心だね」「羽を伸ばしておいで、オリカ」と笑顔で見送ってくれた。
「先生、今日はよろしくお願いします!」
「ええ。王都の商業区には、領地では見かけない珍しい錬金術の素材屋や、人気の洋菓子店がたくさんありますからね。オリカ様の良い気分転換になれば幸いです」
私の足元で、立派な姿へと成長したフェンリルのノワールが「クゥン」と嬉しそうに喉を鳴らし、大きな尻尾をゆっくりと振った。
体躯は大きく逞しくなっても、私に甘えてくる愛らしさは子狼の頃のままだ。
【絶対不壊】の魔法を忍ばせた、動きやすくて可愛らしいお出かけ用のワンピースに着替え、私はエリアス先生、そして頼もしいノワールとともに賑やかな王都の街へと繰り出した。
貴族街を抜けると、そこには見たこともないほど煌びやかなショップや、美味しい匂いの漂う屋台が立ち並ぶ巨大な商店街が広がっていた。
(うわぁ……! すごい人出! 王都ってやっぱり大都会だなあ!)
目を輝かせる私に、エリアス先生が優しく微笑みかける。
けれどその時――人混みの奥から、小さなドタバタという足音と慌ただしい声が近づいてきていることに、私はまだ気づいていなかった。




