第116話:大成功の余韻と、別邸への帰路
お兄様との華麗なダンスが終わり、大広間が割れんばかりの拍手に包まれる中、私たちの社交界デビューの夜は無事に幕を閉じた。
帰りの馬車の中。
行きと同じく【絶対不壊】の魔法がかかった快適すぎるシートに身を沈めると、どっと心地よい疲労感が押し寄せてくる。
「オリカ、本当によく頑張ったな! ああの陛下のお褒めの言葉を聞いたか!? 明日には全貴族の間で『エヴェレット公爵家に咲いた最高峰の蕾』として噂が広まるぞ!」
ギルバートお父様が感無量といった様子で目元を拭い、お母様も愛おしそうに私の手をとって優しく包み込んでくれた。
「ええ、本当にお見事でしたわ。あそこまで完璧に立ち振る舞えるなんて、お母様、誇らしいです」
「本当にね。……まあ、グランベルの奴が途中でちょっかいを出してきた時は切り捨ててやろうかと思ったが、オリカの完璧な拒絶で見事に退けてくれたしな」
お兄様が腕を組み、満足そうにフッと鼻で笑う。
(みんな、私のこと褒めすぎだよ……! 半分以上はドレスの錬金術のおかげなんだけどな……)
心の中で苦笑しつつも、大切な家族にここまで喜んでもらえたことが何よりも嬉しかった。
ガタゴトと揺れる馬車が王都の別邸に到着すると、玄関の前でエリアス先生がランタンを手に待ってくれていた。
「お帰りなさいませ、皆様。……そのご様子ですと、大成功だったようですね」
「先生! ただいま戻りました! 教わったマナー、ちゃんと全部使えました!」
私が馬車から降りて報告すると、先生はフッと目元を緩め、深々と頭を下げた。
「素晴らしいです、オリカ様。私の誇り高き生徒ですね」
膝の上で待っていたノワールも「ニャー」と甘えるように足元にすり寄ってくる。
こうして、私の大一番だった社交界デビューは、大切な人たちに囲まれた温かい夜とともに、最高の形で幕を閉じたのだった。




