第115話:王族の御前と、極上の社交界デビュー
会場の熱気が最高潮に達した頃、会場奥の絢爛な扉が開かれ、ファンファーレの音が朗々と響き渡った。
「国王陛下、ならびに第一王子殿下、ご入場――!」
大広間にいたすべての貴族が一斉に会話を止め、綺麗な動作で頭を下げる。
私もギルバートお父様とお母様の隣で、エリアス先生に教わった最上級の深々としたカテシーを捧げた。
壇上に上がられた国王陛下が会場を見渡し、朗らかなお声を響かせる。
「皆、楽にしてくれ。今宵は秋の実りを祝う宴だ。……特に、本日初めて社交界へ足を踏み入れた若き芽吹きの者たちを歓迎しよう」
国王陛下の視線が、完璧な姿勢で控える私たちエヴェレット公爵家――そして私へと向けられた。
「そちらがエヴェレット公爵家の幼き至宝か。……なるほど、噂通りの気品と凛とした佇まいだな。グランベルの若き麒麟児をあのように優雅にいなしたと聞き、感心していたところだ」
「身に余るお言葉、光栄にございます、陛下」
ギルバートお父様が誇らしげに一礼する。
会場中の貴族たちが「なんと、国王陛下から直々にお言葉を……!」「やはり今宵の主役はエヴェレット公爵令嬢(オリカ様)か」と感嘆の吐息を漏らした。
謁見が終わり、ゆっくりと頭を上げると、お兄様がそっと私に歩み寄り、優しく手を差し伸べた。
「オリカ。素晴らしいお披露目だったよ。……さあ、僕と一曲踊ってくれるかい? 我が家が誇る最高の妹を、僕にエスコートさせてほしい」
「はい! 喜んで、お兄様!」
差し出されたお兄様の手を取り、私は軽やかに大広間の中央へと踏み出した。
過保護で温かい大好きな家族。
徹底的に叩き込まれた最高峰のマナー。
そして、誰にも破れない【絶対不壊】の魔法を宿した要塞のドレス。
シャンデリアの眩い光を浴びながら、私はお兄様の手を取って優雅にステップを踏み出す。
私の完璧で、ちょっぴり規格外な社交界デビューは、大喝采と眩い微笑みに包まれながら、最高の大成功を収めるのだった。




