第114話:夜会の主役と、膨らむ評判
グランベル侯爵家との応酬を完璧に制した私の周りには、いつの間にか他家のご令嬢や貴族たちが集まり始めていた。
「お初にお目にかかります、オリカ様。先ほどのご対応、本当にお見事でしたわ!」
「まあ、そのお召し物もなんて素晴らしいのでしょう! 夜空のような深い紺色が、オリカ様の雰囲気にぴったりですわね」
「ありがとうございます。皆様にお会いできて光栄です」
エリアス先生と特訓した通りの完璧な笑みを浮かべ、私は次々と挨拶に訪れる貴族たちに対応していく。
お兄様のライバルであるあのレオナルド様を一枚上回るいなし方を見せたことで、会場内での私の評判は一気にうなぎ上りとなっていた。
「噂通りの可愛らしさだけではなく、あの度胸と気品……」
「グランベルの若頭の魔法をあのように優雅にいなすとは、一体どれほどの魔術の素養がおありなのか……」
ヒソヒソと囁かれる絶賛の声。
(魔術の素養というか……ただの「物理&属性無効のチートドレス」を着ているだけなんですけどね……!)
心の中でひやひやしながらも、表向きは『完璧な公爵令嬢』を演じ続ける。
そんな私の横で、お父様とお兄様は誇らしさと警戒心が限界突破していた。
「ふむ、見る目が立つ貴族たちだな! そうだ、我が娘オリカは世界一可愛くて賢いのだ!」
「父上、浮かれている場合ではありません。オリカの周囲に害虫(若い男たち)が群がり始めています。僕が剣の柄に手をかけて威圧しておきます」
「ルファス、それはやめなさいな。夜会の雰囲気が台無しになりますよ」
お母様が苦笑しながら二人を制するが、過保護な男二人の目はギラギラと光ったままだ。
ふと視線を感じて大広間の奥へ目をやると、壁際でグラスを傾けるレオナルド様と目が合った。
彼は私に向かって、静かにグラスを掲げて見せる。
そこには先ほどの刺々しさはなく、一人の優秀な淑女に対する純粋な敬意が込められていた。
私もそっと扇を胸元に添えて微笑み返す。
(お兄様のライバルとも、良い関係になれそうでよかったな)
家族の過保護な視線と周囲の称賛を一身に浴びながら、私のデビュー戦は最高の形でピークを迎えていた。




