第109話:王都別邸の到着と、先生の応援
快適すぎる馬車に揺られること半日、私たちは無事に王都にある公爵家の別邸へと到着した。
「オリカ様、道中のおさらいも完璧でしたね。私から教えるべきマナーは、もう何一つありません」
馬車から降りたところで、エリアス先生が満足そうに微笑みながら、一礼して手帳を閉じた。
先生は夜会会場である王城には入らず、ここ別邸でお留守番兼、領地からの連絡役を務めることになっている。
「先生、道中も付き添ってくださってありがとうございました。教わったこと、しっかり出し切ってきます!」
「ええ。オリカ様なら何の心配もいりません。……ただ、ルファス様とお父様が会場で暴走されないよう、それだけが少々心配ですが」
先生がちらりと視線をやると、そこではお父様とお兄様が「刺客はいないか!」「いや、壁の陰に不審な気配が!」と別邸の庭木を検分して警備兵を振り回していた。
(先生の心配の方向性が正しすぎて何も言えない……!)
「……善処します」
「ふふ、健闘を祈っておりますよ」
先生に見送られ、私たちは別邸に入って夜会に向けた最後の身支度を整えた。
鏡の前に立つと、仕立て上がったばかりの深い紺色のドレスを身にまとった私が映っていた。
裏地にはお兄様特製の防護糸と、私自身の【絶対不壊・元素無効】の錬金術。
帯飾りには『霜降り草の氷の花』。
靴底には衝撃吸収の付与。
(見た目は華やかな公爵令嬢のドレスだけど、防御力はもはや要塞レベル……!)
「まあ、オリカ……!tなんて綺麗なこと……!」
部屋に入ってきたお母様が、感涙で胸を押さえる。
お父様とお兄様も言葉を失い、ただただ愛娘(妹)の完璧すぎるドレス姿に瞳を潤わせていた。
「さあ、まいりましょう。我が公爵家の誇り高き至宝をお披露目する時間ですわ」
お母様の言葉に、私は力強く頷いた。
過保護な家族の愛と、絶対に破られない秘密の魔法を身に纏い、いよいよ社交界の戦場――王城の大夜会へと向かうのだった。




