第6話 《新しい生活へ》
揺れるカーテンから、微かに入り込んだ朝日は運良く彼の目元へと向かう。その光で起きた彼は昨日のことが夢であることを願うように目を開ける。高級感のある赤を基調とした部屋。夢では無い。いや、まぁそりゃそうなのだが、現実逃避したくなったのだろう。少し現実を読み込むのに数秒固まっていると、コンコンコン、とノックの音が鳴り響く。
「タカナシ様、起きてらっしゃいますか?」
昨日のあの怖いメイドの声だ。わざわざ起こしに来てくれたようだ。タイミング良く起きていたので彼は「起きてま~す!」と聞こえるように返事をしながらも布団から出て、部屋を出る。
「ガリディア様がお呼びでございます」
「えっと…その方は?」
「エレナ様のお父様でございます。直接あなたと話したいと」
その言葉を聞いたミヤビは背筋が凍ったような気がした。こういう場所の親は大体怖そう、という偏見と、勝手に泊まらせてもらってるからこそ、怒られると思ったのだ。怒られて当然だが、やはり怖いものは怖いらしい。
重たい足取りを何とか運んで、少し他の所より豪華な扉の前へと到着する。緊張して少し躊躇ってしまっているとメイドは焦ったそうにして代わりにノックをして扉を開けてしまう。
「失礼します。タカナシ様を連れてまいりました」
空いた扉の先に座っていたのは白髪でモノクルをつけたとても親とは思えない若々しい人だった。
「あ、昨日は無許可で泊まってしまい、すみません、、、」
先手必勝、と言った所か。なるべく責められないように、と先に謝る。やはり彼は性格はとてもいい訳では無い。しかしそんな言葉にガリディアは微笑んでいた
「タカナシ君だったかな。構わないよ。うちの娘が許可を出したんだ。それなら私は認めるしかないさ」
と、案外簡単に許してくれた。安心から彼は緊張が少し解れているようだ。
「私が話したいのはこの先、行く宛てがないなら働いていかないか、ということなのだけれど、」
「いいんですか!?」
勿論彼は食いつくように、そして二つ返事で頷くものの、あまりの必死ようにガリディアは苦笑いを浮かべている。その瞳の奥には、無礼だな、なんて思っているのだろうか。
「ぁあ、構わないよ。カヤボシ君も働かせているからねそれに異世界の料理が美味しくてね、君も作れるのだろう?」
「ぁあ、一応、作れるかと」
なんて苦笑いをしている。まだ高校生であるし、作れるとはいえ簡単なものだけである。レシピがあればまた別だが、この世界にはないからこそ、ほとんど作れないようだ。
「それではタカナシ君、分からないことはその子に聞いてくれ。うちの自慢のメイドだよ」
なんてガリディアが指したのは雅の後ろに立っていた明度である。そのメイドは褒められたことが嬉しいのか、自慢げな表情でミヤビの方を見ている。
「ガリディア様、お任せ下さい」
「ぁ、はい。えっと、お名前だけ聞いても、?」
これから話す中で一応名前を聞いていた方がいいだろうと思った彼はそうメイドへ問いかける。
「アリス・エンチェント。よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします」
だなんて軽く頭を下げると、アリスはよろしい、と微笑んでいる。
「それでは、朝食をとってきなさい」
ガリディアがそう促す。すると、大きな咆哮が響き渡る。狼のようなけたたましい咆哮が。雅は驚くものの、アリスとガリディアは、少し驚くがすぐに表情は戻っている。
「魔獣が現れたようだね」
ミヤビはそれを聞いて少し震えてしまう。わかっていたことだが改めて聞きいて、その咆哮を感じると、死というものが間近来た気がして怖いようだ。しかし興味から、怖いもの見たさというものでその場から離れ、少し窓から覗きに行く。




