第4話 《お口が悪いお嬢様》
彼が翼竜に跨り、サドルの持ち手らしきものを持つと、照は後ろに覆い被さるように座りサドルの持ち手を握る。
「近い…」
「しょうがないやん、落っこちてええん?」
その密着度に愚痴を呟いてみるが、勿論聞こえていたらしく正論を投げられて黙り込むしか無かった。そもそもせっかく連れてって貰ってるのに愚痴を吐くとは、と説教を始めそうな雰囲気である。まぁ結局説教はなく、夜の空を飛び、館の方へ。
早速到着したかと思えばその大きさに彼は驚いて固まってしまう。お嬢様と呼ばれる人がいる上、執事が居るということも含め館は大きいことはわかっていたのだが、実際見てみると圧倒されてしまったようだ。そんな様子をニヤニヤと、そして自分かつてそうだった、と言わんばかりに顔を覗き込んでくる照。
彼が呆気にとられて、固まっていると、照が声をかけるより先に館の扉が開き、ピンク髪のお嬢様らしき人が此方へやってくる。
「テラス!遅いよ…、ご飯食べ終わっちゃったよ?」
「ぁ、エレナお嬢様、申し訳ございません。少々、僕と同じ場所出身の方がおられまして、」
視界に写ってるはずの雅は一旦スルーして、照の方へ声をかける。雅はその声に意識を取り戻せるものの、照のその対応に流石だなぁ、と感心しながらも、見えなかった、と言わんばかりに不思議そうに見てくるエレナに苦笑いを浮かべている。
「ぁあ、初めまして、小鳥遊です」
相手はお嬢様。そもそも元の世界で生活している中でお嬢様と話す機会なんてほとんど無い。いや、無いのだ。だから
こそ初めてお嬢様と話すことになりどうしたらいいか分からないものの今彼の脳みそにある最大限の礼儀を振る舞おうとする。しかし緊張からか、声が裏返りかけている。
「タカナシさんね、えっと、テラスと同じ異世界人ってことは、無一文の家無し、なんだよね?」
合っている。確かに合ってるのだがもう少し言い方を考えられなかったのだろうか。事実を言われだけなのだが、刺々した言い方のお陰でほんの少し傷ついている。
「照君、もう少し言い方教えれなかったの?」
「それは、僕のせいだね。何せここに働かせてもらう時に無一文の家無しなのでって、土下座したからさ?」
「いやそれでも…。お嬢様だし、同じ日本語的なの話すんだから他に言い方があったでしょう」
彼は心の中で思った。
(苦手だわ、この人。
確かに天然、と言われたら天然なのかな、とは思うが、
初対面からお嬢様としてあの言い方はないだろう?
教育者は何をしてるんだ…)
「おーい、雅~?」
「ぁ、すみません」
どうしたの?と困惑気味に顔を覗いてくる照を見て少しビクッと跳ねて驚いてしまうものの、すぐに会釈しながら謝罪し、歩き出した照とお嬢様について行く。
「ほーら!早く~!ご飯、冷めちゃうよ?」
なんて照の手を引いてる様子を後ろから見て、苦笑いをしていた。本日何度目、苦笑いしかしていない気がする。森からほんの少し不気味な叫び声も聞こえた気がするが、気のせい。そう自分に言い聞かせ、館の方へ足を運ぶ。お嬢様の周りにはどんな人達がいるのだろうか、と少し不安を感じて。




