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第3話 《照らす》

 あの騎士が何処かへと向かって何十分経ったのだろうか。

雅と鎧の騎士の間に流れる時間は静止したのか、と思える程に何も話さず、視線も会うことすらない。それぞれあまり話すのが苦手なのだろうか。とても気まずい空気が流れていた。

「ぁ…」

 この空気を打破しようと雅は何か喋ろうとするが、1文字目で詰まってしまう。その言葉はゆらゆらと部屋の中に響いたように感じ、更に空気は重たい感じになってしまう。2人とも早く帰ってきてくれ、ただそれだけを願って床を見ている。

 そんな空気が限界に達しようとした時、バン!と勢いよく扉が開き、白髪の騎士と茶髪のセンター分けをした執事らしき人が入ってくる。そして彼は雅を見るなり、目を輝かせてすぐ近づいてきては雅の手をギューッと握りしめる。

「は…はぁ……?」

「君も!日本出身だな!?」

「あ、はい、そうですけど…。君もってことは、貴方も?」

「ぁあ!その通り…。1ヶ月くらい前にこの世界に来てね!今はとあるお嬢様の元で住み込みで働いてるんだよね」

 なんて初めの勢いからゆっくりと減速していく執事の話し方に困惑しながらも同じ日本出身がいて雅は安心している。

「僕は萱星照(カヤボシ テラス)宜しく。君は…?」

「ぇ、ぁあ、小鳥遊雅です、よろしく、?」

 雅はスンとしたテラスの挨拶にまたしても困惑してしまうが差し出された手をゆっくりと取ると痛いほどにぶんぶんと腕を振られて顔を顰めてしまう。

「いやぁ!良かった良かった!」

 そう嬉しそうに笑う白髪の騎士は雅への警戒心を解いたらしく、立ち上がって雅の方へ寄って微笑む。

「俺はえっと、アーサリア・エクストルフ、宜しく」

「ぁあ、宜しく」

 なんて軽く頭を下げる。雅は、鎧の騎士は一向に口を開かないものの、信頼しているかのような顔は見えぬが暖かい視線を鎧の隙間から送っている気がして、思わず嬉しそうに顔を綻ばせている。

「そう言えば!雅君も僕みたいに何か魔法とか、能力みたいなの使えるの、?」

「ぁ、いや、わかんない…」

 魔法とか能力、その言葉に一瞬固まる。そもそも自分なんか使えるのかな、と考えていた、なんてことは無く、普通に存在を忘れていたからである。見たこともない異世界に、住む場所がないのにそんなこと考えていられるかって話である。

「なら、確かめて見たら?深呼吸して、ぎゅーってして、何かでろ〜!って、」

「は…はぁ?」

 ふわふわした説明に思わずため息を漏らしてしまうものの、理解しただろう!と信じ込んでいる照の新しい玩具を目の前にした子供のような輝かしい目で見つめてくるのを見て、言われた通りに、目を瞑り、深呼吸、そして何かを探り当てようとする。しかし、一切そんな予兆はなく、ただ深呼吸をしただけになってしまう。

「ダメだな…」

 そう苦笑いをしている。まぁ心のどこかでは照の教え方がアレだから、と思ってはいるのだが、本人の目の前でアーサリアに聞いたりすると傷ついてしまうのではないか、そう思っているのだ。過保護かもしれないし、考えすぎなのもわかってる彼だが、勇気がない、弱い人間だからこそ、苦笑いをしているままである。

「まぁ、ゆっくり生活しているうちに気づけるよ!

そんなことより、家とかないなら僕の居候させてもらってる場所に来る?住み込みで働かせてくれるよ!」

 雅の様子に気を使ってはそう話題転換して誘ってくる。その言葉に安堵したように、抑えきれないほどの嬉しさを隠しきれず喜んでしまっている彼に照もアーサリアも微笑ましそうである。

「いいんですか!?」

 今日一の食い付きを見せた彼はそのまま、照について行くことに。そのはもう既に夜になりかけている。照に案内され、ついて行くと森の少し開けた場所に到着する。そこには1匹の翼竜?が佇んでいた。どうやらそれに乗っていくらしい。

「落ちないですよね…」

「多分大丈夫!」

 そうサムズアップをする照に不安になりながらも翼竜にまたがる。風に撫でられ、月らしき天体に照らされて。

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