精霊界
「カナトさん、カナトさん?」
突然途切れた意識の端に一筋の光が指し、僕はその声で目を覚ました。まだ意識は判然とせず、僕は細めた目を声のする方へと向けてみた。
するとそこには、この世のものとは思えぬ美しい女性の顔がぼんやりとだが写っていた。
(なんだ、天使か…?ああ、やっぱり僕は死んでしまったんだな)
悔しさはあったが、覚悟はしていた。
ここは異世界。剣の一振、魔法の一撃、魔獣の一噛で簡単に死に至る世界なのだ。
でもまさかたったの2日で死んでしまうとは思わなかったが…
「カナトさん、大丈夫ですか?」
また声が聞こえる。よく見れば彼女は半透明で光輝くオーラに包まれている。
「ああ、やっぱり天使か……」
それならばやはり僕は死んだのだ。じゃあここは…天国か?
『いいえ違いますよ、カナト。ここは先ほどの森の中で、目の前にいるのは精霊です』
「…………は?」
そこで僕の意識はようやく完全に覚醒した。
ガバァッッ
慌てて身を起こし、周りをキョロキョロと見渡す。身体には先ほどまでの痛みが、全くと言っていいほど消え去っていた。
「あ、あれ?」
も、森の……中?
僕たちは森の入口でベアウルフと戦っていたんじゃ?
『申し訳ございません、カナト。ワタクシの計算ミスのせいで、危うくあなたを死なせてしまうところでした』
「う、うん…えっと……」
まだ頭がぼんやりとしていて、状況が理解できていない。僕はどうなったんだっけ?
『ここはベアウルフと戦った森の中ではありません』
ん、違うの?どうやってここに来たのかは分からないが、どう見てもあそこから森に入って来た辺りに感じるのだが。
『位置的にはその通りなのですが、空間が違います』
空間?また違う異世界に来たということか?
『まあ、ある意味そうです。ここは精霊界なのですよ、カナト』
ああ、そう言えば精霊がどうとか言っていたなーーーって
「せ、精霊界だって!?」
「はい、そうですよカナトさん。あなた、森の入口で死にかけていらしたので、私がお連れしたのです」
この人が……精霊?
た、確かにーー
耳はエルフのように鋭く尖り、その身体は光に包まれ向こう側が微かに見えるほどに透き通っている。
まるでベールのような薄絹の衣をまとっていて、そこから伸びる手足はこの世の者とは思えないほどに白い。にもかかわらずまったく病的さはなく、むしろ神々しく美しい。
これが天使ではないというのなら、彼女の存在はそうーー精霊という他に表現が見当たらなかった。
「あ、あなたが助けてくれたのですか?」
「ええ、まあ、はい。正確にいえばまだ完全に助けたとは言えないのですが」
えっと、どういうことだ?
『カナト、ここは現世とは時間の流れが全く違うのです。この方はカナトを応急的に回復した後、すぐにこの精霊界に移動したのですよ』
時間の流れ?
「はい、ここは現世からすれば、ほとんど止まっているのと同じくらい時間の流れが遅いのです」
『ですから今もワタクシはカナトの生命エネルギーを消費して稼働している状態です』
「あなた方が森の入口にいたベアウルフを倒して下さったおかげで、歪めらた森の加護が元に戻ったのです」
彼女によるとそのおかげで精霊界と現世の入口が開き、村の様子を見に行くことができたという。
「急に扉が閉じてしまったので何事かと思いまして。村の様子を見に現世に出てみると、森の入口であなた方を見つけたのです」
『それで彼女はカナトを回復魔法で癒してくれたのですがーー』
いくら癒しの魔法をかけても全く回復しなかった為に、彼女はしかたなく精霊界に連れてきたのだとラムダが説明した。
「初めはカナトさんが猛毒に侵されているのかと思いましたが、ラムダさんから説明して頂いてなぜ回復しなかったか分かりましたわ」
「ああ、ラムダから聞いたんですねーーー」
ーーーえ?
「あ、あなたは、その、ラムダと話をしたのですか!?」
僕は耳のイヤホンを指差して彼女に聞いた。
「ええ、最初は驚きました。カナトさんは完全に気を失っていらっしゃるのに、何故かどこからか声が聞こえてきましたので」
もはや音に関してはなんでもアリだな、このイヤホン。おそらくラムダはスピーカー機能のようなものをつかって外部にも音声が届くようにしたのだろう。
「聞けば魔石でラムダさんのパワーを回復しないとこのままカナトさんの生命エネルギーを消費し続けるという事でしたので、やむなくこの精霊界にお連れしたというわけです」
「あ、なんかスミマセン…」
「いえいえ、いいのですよ。本来ならあのベアウルフから魔石を採取していれば問題ないはずだったのでしょう?それが手違いがあって間に合わなかった、と」
ラムダは彼女にそのように説明したらしい。
『スミマセン、カナト。ワタクシが《解析》でエネルギー残量を計算したとき、パッシブスキルの存在を完全に失念していたのです』
そういうことか!
常時発動型ーーーいわゆるパッシブスキルは消費エネルギーは小さいが継続的に消費を続けるから、ラムダの計算から少しずつずれていたんだ。
「それで残り1%ーーまだ一時間以上あるはずが、あんな急にゼロになったんだ」
『貴重なエネルギーを消費しておきながら、誤った解答を出しカナトを危険に晒してしまいました。本当に申し訳ございません』
「な、何をいってるのさ、ラムダ!それなら僕だって作戦を忘れて不用意にベアウルフに近づいたんだから、おあいこだよ」
『……ありがとうございます。しかし、勝手にこの世界に連れてきたワタクシにはカナトを守る責任があります。今後はこの様なことがないようこの失敗を心に刻みます』
ほえーーー、殊勝な心がけだな。結局助かったわけだし別に気にしちゃいないのだが、魔道具に心があるというのならそうしといてもらおうか。
『ワ、ワタクシは完全な魔道具というわけではありませんので』
「あらあら、お二人はとても良い関係性が築けているのですね、羨ましいですわ」
「あ……、え?今の会話も聞こえてたんですか!?」
「もちろんです。先ほど言ったではありませんか、ラムダさんの声が聞こえる、と」
えーーー、ラムダが聞こえる様にしたんじゃなかったんだ。
『理由は分かりません。しかし、ワタクシが元々は加護を与える何かであった可能性は更に高まりました』
人間に加護を与えることのできる存在、か。
なるほど、ラムダが元は神かもしれないと言っていたが、精霊の可能性もあるのか。ということは逆にいえば魔族みたいな存在ということも
あるのだろうな。
『……その可能性は否定できません』
「まあまあ、ラムダさんが元々何者かなんてどうでもよいではありませんか。今のお二人はお互いを必要としているのですから、それを大切にするほうが未来があるというものです」
おおーーー、さすがは精霊様、良いこと言うな。確かに元々何だったかなんてどうでもいい事だ。そんなのは分かった時に対処すればいいさ。
『カナトは意外と楽観主義なのですね』
「ラムダが合理主義すぎるのさ」
僕はそう言って笑った。
「さあ、それでは私に改めてお礼をさせて下さいな」
そう言って彼女はにこりと微笑む。
「お礼……ですか?」
「ええ、ベアウルフを倒して謎の障害を取り除き、現世への扉を再び開いて下さったお礼です」
ああ、そうか。そんなことを言っていたが、その障害というのはたまたまじゃないのかな。
『因果関係は分かりませんが、あまりにタイミングが良すぎます。別の要因によるものの可能性もあるとは思いますが、ベアウルフとの関連性がないとは言いきれません』
ーーー別の要因か。村の存在と精霊、そして加護を無効にするような障害。なんだか一気に異世界じみてきたな。これがラムダが僕を連れてきた理由とも関係あったりするのかな。
「それで、お礼なのですが」
おっと、そうだった。
「そんな、お礼なんか……。僕たちはあなたに助けて頂いたわけですから」
「でもベアウルフの魔石を回収していないわけですし、ラムダさんのパワーを回復しないと現世に戻ることも出来ませんのよ?」
なーーーるほど!ここは時間の流れが遅いから大丈夫なだけで、このまま現世に戻ったらまた同じことの繰り返しというわけか。
「そ、それは困ったな…」
「そこで、これを差し上げます」
そう言って彼女は一粒の光輝く鉱石を僕に差し出した。エメラルドグリーンに輝くその鉱石は、美しさもさることながらどこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。
「不思議な感じのする石ですね…。エメラルド……じゃないですよね?」
この世界にエメラルドがあるのかどうかすら分からなかったが、僕は思わずそう聞いていた。
「これは、精霊石といいます」
ーーー精霊石。
彼女によるとそれは数ある鉱石の中でも特に希少性が高く、非常に多くの魔力を秘めているという。
そんな貴重な物をもらっていいのだろうか。
「いいのですよ、カナトさん。これは人間界では希少でもここ精霊界では割とありふれた石なのですから」
なるほどーーー。
人間にとっては精霊界への出入りそれ自体が困難を極めるが、精霊たちには比較的採取しやすい鉱石なのだそう。
「そ、そうですか。それならばありがたく頂いておきます」
「ええ、ええ、そうして下さいまし。それで、先程からお二人が仰っている『充電』というものをぜひ私に見せていただけませんか?」
ああ、ラムダを充電するとこが見たかったんか、この精霊様は……。
確かにこの世界でもラムダはかなりレアな魔道具らしいからな。
「さあさあ、私に見せて下さいまし!」
う、うんーーわ、分かったから……。
ただ僕もどうやれば充電出来るかは、まだ詳しくラムダから聞いてないんだよな。
「さあ!さあ!」
彼女は先程までとはうって変わって、目を見開いて僕に詰め寄る。
せ、精霊様?ちょっと怖いんですけど……
僕が引きつった笑みを浮かべるとーー
「あらあら、ごめんなさい……。珍しい物には目がなくて、私ったらつい興奮してしまいましたわ。以前にお会いした方も、それは珍しい物を見せてくださったものですから」
彼女は慌ててそう弁明し、僕から距離を取りくねくねと恥じらい仕草を見せた。
か、可愛い……っていやいやそうじゃない!
「い、以前会ったって、もしかしてその人僕みたいな格好してませんでした!?」
僕がそう尋ねると、彼女は顎に人差し指を当てながらしばし考えこみーーー
「あらまあ!確かに似ておりますわね。そう、あれは五十年ほど前でしたか、カナトさんと同じ格好をした方も面白い物を見せてくださいましたのよ」
やっぱり、村長の言っていたもう一人の異世界人のことなのか!であれば、彼の言っていたことは本当だったのだ。
村長が子供の頃に村に異世界人が来て、コンクリートの材料を彼らに渡し礼拝堂を作らせたというあの話。
その時会いに行った精霊が、まさに目の前にいる彼女だったわけだ。まあ当然といえば当然か、彼らはこの村に加護を与えた精霊に会いに行ったわけだし。
「その時はどんな珍しいものを見たんです?」
「まあまあ、それはお話できませんのよ?かの御仁はご自分のお力を明かすことは、この世界では命に関わるから誰にも話さないようにと念を押してましたの」
えーーー、スーツで冒険者やってたのに精霊にも能力は秘密にしてたのか?なんか良く分からんやつだな。
と、その時僕はそう思ったが、彼には彼なりの事情があるのかもしれない。
ここはその異世界人の意思を尊重して、なにも聞かないでおくとしよう。
「ラムダ、充電方法は?」
『媒体をカナトが持つだけです』
は?それだけ?
『はい、あとはワタクシがカナトを通して媒体からエネルギーを吸収します』
よ、よーし、それじゃあさっそくやってみることにしますか。
「こうでいいの?」
『高密度エネルギー反応を確認。エネルギー変換シーケンスを開始します』
おお、なんかそれっぽいこと言ったぞ。僕はゴクリと喉を鳴らし、精霊石に変化が起きるのを待った。
そして横では精霊が好奇心丸出しの顔で、僕の手のひらの精霊石を見つめていた。
「う、うわ、わわわわわ」
精霊石が一瞬強い光を放った次の瞬間、それは僕の腕を徐々に上り始めた。そのまま光は導かれる様にイヤホンへと向かいーー
『充填率上昇……18%……32%……58%』
ラムダのエネルギーとなって吸収されていく。その光景に僕の周りをくるくると飛び回りながら精霊が驚嘆の声をあげた。
「まあまあまあ、素晴らしい現象ですわ!自らエネルギーを鉱石から取り込み、その活動の糧とする魔道具なんて初めて見ましたわ!」
ほう、さすがはレア度SSSの魔道具なだけはある。が、それにしてもエネルギーの吸収速度が速すぎないか?
『エネルギー充填完了。全機能を正常化しました。さすがは精霊石、高いレア度を誇る鉱石なだけはあります。充電が完全回復しました』
「か、完全回復……?マジですか?」
「おやおや、どうやらラムダさんのエネルギーは満タンになったのですね?」
「あ、はい、そうみたいでーーー」
僕が呆然としながらも彼女にお礼を言おうとしたその時だったーーー
パキィィィーーン
精霊石は粉々に砕け散り、僕の手のひらで霧散するように消えてしまった。
「あ、あ……」
うーむ、これほど貴重な鉱石だから、あと何回かは使えるかと思っていたのだがーー
「こ、これは驚きました!確かに少々小粒な精霊石ではありましたが、それでもミスリル鉱石に劣らない魔力量を秘めてましたのに...」
え?ミスリル?それって、あのミスリルなの!?
『どうやらそのミスリルのようです』
マジか……。それってあのアダマンタイト、オリハルコンとならぶ異世界の三大有名鉱石の一つじゃないか!
いくら残量0からだったとはいえ、フル充電一発で砕ける?そりゃ僕の生命エネルギーの消費に切り替わったら、一瞬で死にかけるわけだ。
「ラムダ……分かってたの?」
『いえ、分かっていませんでした。あの時はエネルギー残量を優先し、ベアウルフを討伐するための最低限の解析しか行わなかったので』
そうなんだよね、仕方なかったんだーー
ーーでも
「ラムダ、今こそ《解析》を使って正確なエネルギーの消費量を算出しておくべきだと思う」
そうだーーもうあんな目には会いたくない。
『そうですね。それとステータスがないとはいえ、カナトの生命、精神エネルギーも出来る限り把握しておきましょう』
そうか、《解析》で数値化してしまえば、ステータスがなくても関係ない。
今後ラムダのエネルギー残量を0にするような事はしたくないが、そうなった場合の対策は必要だ。
他には何かないかな。例えばーー
「この世界の鉱石、魔石からどの程度充電できるかも調べられそう?」
『完全には不可能です。この世界の鉱石、魔石にどの程度の魔力が内包されているかの把握は、ワタクシの記憶には内臓されていません。しかし今精霊石で充電したので、後はベアウルフの魔石を回収しその内包魔力を知ることが出来ればある程度の推測は可能です』
そうか、だったら《解析》はそれからの方が良さそうだ。
「精霊さん、僕たちはそろそろ帰りたいと思うのですが……」
「あら、そうですわね。人間を何の理由もなく精霊界にいつまでも置いておくのは、私にとってもリスクが大きくなります。残念ですがお別れの時間とすべきですわ」
そうだよなーーやっぱり。もしかしたらここで精霊石の採掘させてもらえないかな、なんて思ったがそれはさすがに無理があるか。
「あ!?そういえばバタバタしちゃってたからあなたの名前を伺うのも忘れてーーごめんなさい、僕たちの名前は覚えてもらったのに」
「あらーー、そんなこと。いいのですよ、カナトさん。精霊には個体名はないのですから」
へーーそうなんだ。そういう習慣がないのか、それともそれが当たり前のことなのか。
「名前を持つのは一部の名付けをされた精霊以外は精霊王だけなのです。それではカナトさん、現世の扉へご案内しますね」
ああ、名付けかぁ。これも異世界ものではよく耳にする話だな。僕には絶対出来そうもないやつだな。
「出来ればあのベアウルフの所に行きたいのですけど……」
「分かりましたわ。この森の近辺なら出る場所の調整は簡単ですの」
それは助かる。ここが現世の森の中のどの辺りかは分からないが、村に戻るまでにまた魔獣と出くわすのは勘弁願いたい。
「そろそろ着きますわ」
前を見ると確かに光の流れが途切れたように空気がねじれた場所がある。
「あそこを抜ければ先程のベアウルフがいた場所辺りに出るはずですわ」
彼女はそれでは私はここまでです、と言い立ち止まった。
「なんか色々お世話になりました、ありがとうございます。ちなみに村への加護って元に戻ったんですか?」
「はい、大丈夫ですわ。それに今後は定期的に監視もいたしますわ。ですので安心して現世にお戻りください。それではカナトさんとラムダさん、ごきげんようー」
彼女は陽気に手を振って僕たちを見送った。結局加護が失くなった理由も分からないままだったが、彼女はあまり気にしていないようだ。
そもそもなぜこの精霊が村に加護を与えたかも分からないんだよな。
「楽観的な精霊だったな…」
『精霊や妖精というのは、元来そのような存在ですよ。加護を与えたのもきまぐれだったのかもしれません』
まあ、そんなものか。あれくらい楽観的になれたら楽かもしれないな、と彼女の美しい笑みを思い出しながら僕は扉をくぐった。
そして扉の向こうに出ると、確かにそこは森と村との境界に近い場所だった。
しかしーーー
ベアウルフが倒れていたはずの場所には、何もなかったのだ。
「……ない!なーーんもないぞ!?」
地面には戦闘の跡だけが残り、あれほど巨大だった死骸は影も形も消えている。
『周辺にベアウルフの死骸、魔石ともに確認できません』
「誰かが持ち去ったのか……?」
やはり何かがありそうだ。加護が一時的に失なわれたこともーーベアウルフが現れ、そして消えたことも全て無関係とは思えない。
『調べますか?』
「……今は村に帰ろう。皆にこれまでのことを報告しないと」
『ワタクシはそれを推奨しません』
「え?いや、だって…リオのこともあるし…」
『このままカナトがあの村に戻っても、おそらく覚えているのはリオだけでしょう。さらにベアウルフが消えたとなれば、今回の騒動の原因がカナトにあると村人たちは推測するでしょう』
「………そうなるかな、やっぱり」
『かなりの高確率でそうなるでしょう』
なにか不穏な空気を感じるが、僕が冒険者の真似事をするには足りないものがあまりにも多すぎる。
リオを助けるどころか、自分の立場すら危うくなる、か。
『とにかくここは一旦この村を離れ、情報を集める事に力を注ぐべきです。今回の様なことがそう続けて起こるとも思えませんし』
確かにラムダのいう通りだ。精霊が定期的に監視してくれるなら、リオには悪いが命の危険は少ない。だが今のままでは僕はその危険と常に隣り合わせなのだ。
「よし、ラムダに従うよ。このまま村を離れよう」
ベアウルフを倒し、加護を取り戻した。一応の決着は着いたのだから文句はないだろう。
それにどちらにしろリオ以外は僕の事などすぐに忘れてしまうのだ。
「じゃあ、行こうか」
『賢明な判断です』
(ごめん、リオ)
心の中でそう呟き、僕は森と村との境界に伸びる小道を、村とは反対の方へ歩き始めた。




