第48話:禁じられた外出
セレーナの影に怯えるリュカ。
アイリスを失う恐怖から、彼は彼女の「自由」を完全に奪うという選択肢を選びます。
「……アイリス。二度と言わせるな。一歩も、この敷地から出ることは許さない」
リュカ様の低い声が、冷たく閉ざされた作業室に響いた。
彼の手の中で握りつぶされた桃色の花びらが、無残な残骸となって足元に散っている。
「ですが、リュカ様。ドレスに合わせる糸の微かな色味を確認するには、正午の自然光の下で、王都の市場にしかない特殊な染料を……」
私が言いかけた言葉は、リュカ様の強引な抱擁によって遮られた。
彼は私の肩をきつく掴み、そのまま壁際へと追い込む。魔法なきこの地で、彼という圧倒的な武力に抗う術を私は持たない。
「糸など、俺が部下に命じてすべて買い占めてこさせる。お前が自ら外へ出る理由にはならん。……あの毒婦がお前の居場所を嗅ぎつけたんだ。門を一歩でも出れば、どのような卑劣な罠が仕掛けられているか分かったものではない」
「リュカ様、私は……」
「黙れ! 俺を、これ以上苛立たせるな」
リュカ様のアイスブルーの瞳が、焦燥と独占欲で濁っている。
彼は私の顎を力強く持ち上げ、逃げ場のない至近距離で私を射抜いた。
「お前は、自分の美しさがどれほどの毒になるか分かっていない。……エドワードが血眼になって捜し、セレーナが憎悪を燃やしている。今の貴族街にお前が姿を現せば、瞬く間に野犬どもに食い荒らされるだろう」
リュカ様の指先が、私の頬を、そして唇を、所有権を刻み込むようになぞる。
かつてエドワード様は、私を飾ることで自分の価値を高めようとした。けれどリュカ様は、私を隠すことで、自分だけの平穏を守ろうとしている。
その愛は重く、鋭く、私を縛る。
「……お前の指先も、その瞳も、俺だけに見せていればいい。……外の世界など、お前にはもう必要ないはずだ」
彼はそのまま、私の首筋に深く顔を埋めた。
抵抗を許さぬ拘束。
私は、彼から伝わる激しい鼓動と、狂気にも似た保護の意志に、ただ静かに身を委ねるしかなかった。
窓の格子越しに見える王都の空は、自由を拒むように高く、遠い。
私は豪華な「檻」の中で、リュカ様という名の愛に、深く、深く閉じ込められていった。
第48話をお読みいただきありがとうございます。
リュカ様の独占欲が「禁じられた外出」という形で爆発しました。
「重すぎる愛がたまらない!」「アイリス、閉じ込められても幸せそう……」と思ってくださった方は、
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次話、閉じ込められたアイリスが、窓越しに「過去の残像」を目撃します。




