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第48話:キノコスープ、軽い雑談、そして失われた声

 フォレンス森は完全に夜に支配されていた。


 漆黒の闇が巨大な木々を覆い隠す。

 キャンプの中央で燃える小さな焚き火から放たれる黄金色の光だけが、その闇を追い払っていた。


 ファイア・バンに感謝すべきだろう。

 その炎のウサギが乾いた薪の山に向かって一度くしゃみをしただけで、彼らの暖炉は完璧に燃え上がったのだ。


 レントとカエンは、骨を刺すような夜気から体を温めてくれる炎を挟んで向かい合って座っていた。

 それぞれの手には、まだ湯気を立てているボーおじさんのキノコスープが入った竹筒が握られている。


「はぁ……この凍える森の中での温かいスープは、本当に命の恩人ね」


 カエンはキノコ出汁のスープをすすった後、そうつぶやいた。

 彼女の顔はずっとリラックスしており、夕方のレントの膝の上での恥ずかしい出来事を一時的に忘れているようだった。


 レントはただ小さく頷き、無言で自分のスープを飲んでいた。


 再び『石像モード』に入ったレントを見て、カエンは突然彼をからかいたくてうずうずしてきた。

 少女は片手で顎を支え、炎の向こう側にいる『自分自身の男バージョン』の平坦な顔を見つめた。


「ねえ、鉄仮面」

 カエンは遊び半分で声をかけた。


「ずっと気になってたんだけど。あんたって昔からそんなに平坦だったわけ? つまり、あんたを感情的にさせるようなことってなかったの? 大声で笑い転げたり、あるいは……過去の何かを嘆いて泣いたりとか」


 ピタリ。


 レントの手に握られていた木のスプーンが、空中で止まった。


 レントは竹筒の中のスープの波紋を見つめた。

 カエンの質問は非常にシンプルで些細なもので、一般的なキャンプ仲間の軽い雑談のように聞こえた。


 しかし、レントの頭の中では、その質問は意図的に凍らされた湖の表面に投げ込まれた石のようだった。


「過去……」

 レントは小さくつぶやいた。


 彼は記憶の引き出しを掘り返そうとした。

 しかし、そこには何もなかった。


 彼の過去の記憶の空間は、ただ空虚で灰色の白い部屋にすぎない。

 彼は非常に完璧に『初期化(フォーマット)』を行っていたのだ。


 少なくとも、彼はそう思っていた。


 突然、レントの右耳が激しく耳鳴りを起こした。


 ――キーン。


 目の前の焚き火の景色が一瞬にして歪んだ。


 葉のざわめきや薪の爆ぜる音が消え去り、防音された真空空間に取って代わられる。

 そして、その真空空間の底から、かすかな声が聞こえてきた。


 女の子の笑い声。


 非常に小さく、壊れており、無理やり引き伸ばされた古いカセットテープのように途切れ途切れだった。


 顔はない。名前もない。

 ただ、緑色のシルエットが網膜を横切り、続いて淡い青色のシルエットを覆い隠す暗紅色の血しぶきが……。


 ドクン!

 ドクン!

 ドクン!


 レントの心臓が暴れ出した。

 彼が必死に鍵をかけていた記憶が、外へ突破しようとしている。


 レントの合理的な脳が即座に危険信号を鳴らした。


(拒絶しろ!)

(この記憶を拒絶しろ!)

初期化(フォーマット)! 器を空っぽにしろ!)


「レント? 聞こえてる?」

 カエンの声が、水の中から聞こえてくるようにくぐもっていた。


 レントは目を大きく見開いた。

 彼の呼吸は突然、非常に浅く荒々しくなった。


 一瞬にして冷や汗が額と首を濡らす。

 信じられないほどの激痛――まるで何千本もの針が頭蓋骨の内側を突き刺しているかのような痛みが、容赦なく彼の頭を打ち据えた。


「うぐっ……!」


 レントは竹筒を落とした。

 キノコスープがこぼれ、地面を濡らす。


 彼はすぐに両手で頭を抱え込み、冷たい地面の上に膝から崩れ落ちた。

 頭が割れそうなほどの激しい痛みに耐えながら、歯を食いしばり、押し殺したうめき声を上げた。


「レント!」


 カエンはパニックになって叫んだ。

 少女は自分のスープを手放し、すぐさまレントの隣に飛び込んで膝をついた。


 モロもパニックになってレントの周りを飛び回る。


『ご、ご主人様!? どうしたんですか!? 急に魂の波長がひどく乱れて……! 息をしてください、ご主人様!』


 カエンはモロの声など気にしなかった。

 少女の手は、激しく震えているレントの両肩を即座に掴んだ。


 普段は常に冷静な鉄仮面が、荒い息を吐きながら自分の頭をかきむしっているのを見て、カエンの顔は蒼白になった。


「レント! ちょっと! どうしたの!? 頭が痛いの!? き、キノコの毒のせい!?」

 カエンはパニックに陥り、どうしていいか分からず目に涙を浮かべた。


 レントは目をきつく閉じた。


 下唇が少し白くなるまで噛み締め、脳に無理やり『初期化(フォーマット)』のプロセスを再開させた。

 すべての記憶を飲み込み直し、記憶の引き出しを無理やり閉め、その鍵を奈落の底へと投げ捨てる。


 緊張の中で二十秒が経過し、レントの呼吸はゆっくりと整い始めた。


 頭のズキズキとした痛みは徐々に和らぎ、冷たい麻痺した感覚だけが残った。


 カエンはまだ青年の肩を掴んでおり、同情と混乱に満ちた目で彼を見つめていた。

 カエンの胸は、彼を見ているとなぜか息苦しさを感じていた。


 ゆっくりと、レントは頭から手を下ろした。

 深呼吸をしてから、息を吐き出す。


 青年が目を開けてカエンを見つめた時、彼の紫色の目は再び平坦で、冷たく、灰色のものに戻っていた。

 彼の『空っぽの器』の仮面は再び装着されたのだ。


「離せ」

 レントはかすれているが安定した声で言い、肩にあるカエンの手を軽く振り払った。


 彼女が憎いからではない。

 弱く見える自分が憎いからだ。


 レントは立ち上がり、ズボンの膝についた土埃を少し払った。


「何でもない」

 レントは少女の視線を避け、平坦に答えた。

「ただ……急な目眩だ。夜風のせいかもしれない。忘れてくれ」


 レントは背を向け、彼らの狭い緑色のテントに向かって歩き出した。

 まだ地面に膝をついているカエンを後にしたまま。


 少女はレントの広い背中を無言で見つめる。

 この鉄仮面の青年が、その苛立たしい性格の裏に、非常に暗い何かを隠していることに気づき始めていた。

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