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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第七章 友情ノ章

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98/108

EP 98 君は星のよう。

この世界と、あの世界の狭間に違和感を感じる。

何かがおかしい。この世界の終焉を初めて見た時と同じように、おかしさが、引っかかる。

普通であれば、この九百年間生きてきた俺の記憶と、信用はしていない七百万年の記憶。

その中に生まれたいくつもの世界での終焉。それは、今とは違う、もっと無機質で、生命の対義語を具現化したような、セカイに反する存在。

そんなようだった。ただただ冷たくくすんだ鉄のような、そんな物質であった。

ただ、今は……


「和人! あいつ勝てないよ! どうすればいい?」

「簡単だ。建物を使え。遮蔽物が建築レベルにもなれば、ほとんどの魔力探知は不可能だ。数少ない可能性に賭けるしかない」

「わかった、でも……」

「いいからやれ、とりあえず生きることを最重要事項として戦え」

「……わかった。行ってくる!」


この幻のラシュトールの冷たい空気が、状況の悪化を知らせる。

違和感はそれだけが原因ではなさそうだ。


終焉は大空に根を刺している。

ユズがここに迷い込む前、

今の世界とは違う世界だった。

ラシュトールではない別の世界。

死んでから5時間ほどたったのに、いまだに復活の予兆がない。そんな俺はこの幻想の中でさまよっていた。いくつもの「終焉世界」で戦闘もあれば、暇もあった。

俺の手から零れ落ちた、小さき命の幻を追いかけ続けた時もあった。

そんなことで思い詰めて、ただ下を向いて突っ立っていると、ユズと「和人」の戦闘の音だけが耳に入る。

……ユズ。強くなったな、というかなりすぎだ。「和人」との攻撃の音が完璧すぎる。

何があったのだ。という疑問を捨てた。

ふと見たユズは安定して飛行していたから、生命等級と関係があるだろう。

俺が初めて見た終焉も今のユズも変わってしまった。

かつてきれいだと馬鹿みたいに笑った世界も全部、変わってしまった。


俺自身。変わったのだろう。

俺が迎えた、人生初の死の前、俺は何を思っただろう。


気が付けば、あたりはまた別世界を映し出していた。

東京の、ようなうるささもなく、埼玉のような静寂もない、そんな世界。空は見えなかった。

分厚い雲が空を覆い、その隙間からはおそらく聖天地のような、巨大な浮遊大陸。

そういえば、高さを調整しなければそろそろ地球が持たないな。


「和人!」

「どうした。ユズ」

「あの和人がいなくなったの、それになんか周りもおかしくて……これって戻ってきたのかな」

うれしそうな声をしながら悲しそうな表情だ。

あふれるユズの感情が少しだけ、見えるように感じられた。ここから10kmもないところには都心だろう。

俺らは渋谷のスクランブル交差点近く、俺が墜落した場所へ向かった。

ユズの願いだ。聞いたわけではないが、少なくとも、その震えていく声と、目に溜まる結晶がそう叫んでいた。

なぜそこに行くのか、というのも、きっと「お母様」に関する事だろう。


「ユズ。大丈夫か」

「うん……大丈夫」

「ならついてこい」

俺は歩き出したが、ユズは動かなかった。

数歩歩いて、その事実に気づいて、振り返った。


「どうした? 歩けるか?」

「……」

黙ったかと思えば、今度は崩れ落ちた。

「大丈夫か?!」

「……おんぶして」

甘い声、頬をゆっくり伝う涙、いつもかわいい表情。そのすべては俺を誘惑し、断れなかった。

「よいしょっ、大丈夫か?」

「うん……」

少し、いやかなり柔らかいのが当たり、年頃の体をそそる。


数十分経つと、ユズはぐっすりと眠っていた。

向こうの、本当の世界での戦闘で何があったのかは分からない。けれど、ずっと恐ろしく激しい戦闘が繰り広げられ、文明のほとんどは消滅していただろう。そして、何よりユズのことだ。どうせ自分が一番傷ついて、消耗していたのだろう。


あと半分くらい。だと思う。「世界」は次々に世界を変えていく。持続しながらも、世界観が細かくなっている。どういうわけか、俺の過去に見た名所も、戦争に赴く前の景色もロードされている。

戦前がある。というのは、ユズの世界とは別の世界だ。


「……和人ぉ」

「ユズ? 寝言か」

「お母様ぁ……これが和人だよぉ……えへへぇ……」

かわいい、うん。かわいい。


ユズの知らない、俺の知ってる世界。

魔法で溢れ、技術で溢れ、仮初の平和を繕う世界。

飛び立つ鳩は、やがて狩られる。

どこか知らない場所で苦しむ少年少女の声は、「生きるのがだるい」という少年少女の声で消されていく。大人もそれを知っても動かず、ただの偽善に手を合わせ、平和を願うだけである。

単なる偽善者の集まりが、やがて国となっていく。文明となっていく。

痛みを忘れて、自分を殺して、"普通"を演じる人生の中で、君は何を思う?

差別が飛び交う街の中、雨に打たれたあの日を思い出す。

小5だったあの頃の記憶は今や鮮明に掠れている。


やっとのことで歩き出した俺は。

「君」のために成れるのか。

今日も明日も明後日も、人は夢を見て希望を抱く。


苦しむ人なんて知らんぷり、ただ脳内でセーフティかけて生きている。

こんなに優しい「君」も同じなのかな。


夕陽が空から逃げようと、必死にかけている。

夜空は陽を追い、行かないでと叫ぶように月は輝く。


今から約1年と半年前世界の(いのち)は途絶えたのだ。

この世界の生命(いき)の根が絶えたのだ。

たった一人の、悲しき人間によって。

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