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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第七章 友情ノ章

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EP 96 結晶。

冷たいラザニアの目は確実に殺すという意思表示に他ならない、

さあ、何を選択する。ラザニア。


私へ殺意を向けたところで、私も殺意を向けているのだ。

それみこれまでにないほど、もし私が彼であれば、きっと世界事滅ぼすほどに。

私は彼女を恨んでいる。


確実に殺す。


お前を殺す。


剣を握れ、ユズ。

この先にある終焉も彼女も。葬り去るのだ。


【号哭】


この地に浮かぶ魂とともに、彼女の額を貫いた。

この刃は、決して高級品でも何でもない。少しほころびた、彼の失敗作だ。

武器庫にほこりをかぶされたまま、銀色に輝く刀身が、のうのうと生きる魔族を殺すのだ。


「……どうして、どうしてそこまでするの? 人間。神楽ユズ」


「お前が和人を殺したから」


そんなこと。言われなくても分かるだろう。

いいや。分からないか。

魔族だ。


理由も、意味もなく人を殺す種族だ。


「愛? これが愛の形?」


狂ったように目を見開いて頭を抱える。

少しどころかかなり気味が悪い。


咄嗟に投げたのはいいものの、どうやってあの剣を抜こうか。


「人間って不思議。ねえユズ?」


「……?」


「愛って何? どこからくるの? どうせ無意味じゃない!」


愛とは何か。人間にだって分からない。


「分からないよ。そんなこと」


「そう……」


ラザニアは静かに納得すると、また疑問を投げかけた。

焦げ臭い匂いに気を取られないよう、気をつけなければならない。

この異臭は、少し魔力を感じるからだ。


「理由もなく人を刺したの?」


そう言うと彼女は刺さった剣をゆっくり引き抜いた。

血の滴る音と、肉の裂ける音が重なる。


少し、記憶を呼び覚ますように、まるで私の過去を知ってるかのように、ゆっくり引き抜き、手が伸び切ったところで今度は刀身を掴み、また血だらけの手で引き抜いていく。


ああ。記憶と重なって行く。

あの思い出したくのない記憶が。

一瞬にして、友達も世界も失ったあの日が。


———でもそのフラッシュバックは、彼の声で消え去った。


生き返ったわけではなかった。

けれど、呼び覚まされかけた記憶の中に、彼との出会いと過ごした日々、温かい声が待っていたのだ。


『ユズ。この豆は、少し酸味が強くて———』


ぼーっとしていた。

目の前にいる和人に、見惚れていたのかもしれない。


『ユズ?』

『あっごめん……何?』


『……少し、休憩しようか。まだ魔法の負荷が多いのかもだしな』

『うん分かった。隣にいて』


いつも言わない言葉を、所詮幻の彼に投げかけて、そっと袖を掴む。

彼はにっこりと笑うと、少し待っててと合図を出して、ソファで私を待たせた。


不思議だ。

幻なのに、現実のようで、どこか、温かい。

まるで今の戦いを忘れさせるように。


『はい。コーヒーだよ。あったかくてミルクを沢山入れたから』


『……ありがとう』


この時期ならば、結愛も居て魔法の訓練をしていた頃で、本当ならあり得ない状況だ。


でも今のこの景色から想像するに、私の脳が、限界を迎え幻であるものの、世界を創り上げたのだ。

記憶を基に、全く同じような違う世界を創り上げたのだ。


少し。悲しい。

泣きそうだ。


『ねえ和人』

『どうした? 冷たい方が良かったか?』

『いや、そうじゃなくて……』

『なら、なんだ?』


こんなイチャイチャ。あり得ないのに。

これも幻想なのかな。

そう思いつつ私は彼でない彼に質問をした。


『私が死んでも、和人が死んでも。愛してくれる……?』

『……もちろんだ。絶対に死なせないよ』

『ありがと。嬉しい』

『なら、どうして泣いてるんだ?』


全く。おかしいな。最近の私は。

生命等級に変化があって、しっかりと考えることができて、冷静で———


本当に。私なのかな。

生きるべきは、私なのかな。



……もういいや。



「ユズ!」


泣きながら倒れた私に真っ先に声をかけて駆け寄ったのはフィエールさんだった。ミライは少し遅れて、バリアを展開した。


「大丈夫。だといいけど」

フラフラしながら、力の入らない私はフィエールの方を掴んだ。


「あら? どうしたの人間?」


「なんでもない……から……」


めまいもする。

ただ少し、違和感を感じた。

フィエールさんの肩がいつもより不安定だ。


「殺す……チャンス……!」


目を見開いて、大きなエネルギーを感じたのもほんの少し、あっという間に世界は真っ白に閉ざされた。

攻撃をもろに受けた。

ミライのバリアで命は助かったものの、立ち上がるのが困難な上、ミライもフィエールも負傷した。


「……もう、これで終わりなのかな……和人―」



その後、私は意識を失った。


でも少しだけ。和人の気配を感じた。

結晶となった魔法が、私たちを守るように地面から生えてくる。


それが、私の視界の最後だった。


高熱と呼吸、心拍の上昇、気だるさ、全身の痛み、極度の耳鳴り。

それらを感じ取ったのち、完全に意識は遮断されて行くのを感じた。

視界は真っ暗で、耳は聞こえず、感覚もなく、先ほどの焦げ臭さも消えて行く。


本当に。終わりかな———

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