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終焉に終焉を。  作者: 終焉を迎えたTomato
第七章 友情ノ章

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EP95 乾いた記憶と、負けられない戦い

このタブレットがどうしてここにあるのか、私には分からない。

しかし。そんなことを気にしていられない。


この戦いは負けられない。

あの魔族も、どうやら終焉の力を有するようだ。

決して生かしてはおけない。

生かしてはならない。


溶けていく感情が、段々と記憶を呼び覚ます。

彼と出会う前、終焉が訪れる前、友人が、目の前で自殺する前。

清々しい朝を迎え、学校へ向かい、放課後にはカラオケやカフェなどで談笑した、忘れたくない日々。

たくさん笑って、時に喧嘩をして、でも。気づけば仲直りしている。そんな私たち。

絶えぬ戦争と、消えない芸能人の不倫報道と、相次ぐ殺人事件。

星に手を伸ばして、掴もうとしたあの時は、今思えば、全てが美しかった。

汚れているながらに、美しかった。


終焉が訪れることで、そんな日常は消えて行った。

終焉のおかげで気づけた感情も、終焉によって奪われたものも、全て、世界なのだ。


夕陽に撃ち抜かれながら電車に揺られた喧嘩した日、イヤホンから流れるもう一つの世界でさえも優しく、永遠に絶えないと思っていた。


でも、もう奪われた。

それはこの世界も同じで、きっとあの魔族を殺さねば、もっと遠くの、裏側の世界も奪われてしまう。


小さなこの命が、笑顔が、老人のゆったりとした日々が、暖かい日差しが。

何もかもが、無に帰す。そうなってしまう。

そういう未来だ。そういう運命だ。

和人が居ないと何もできない私たちもきっと、死ぬ原因は終焉だ。

そこに違いなどない。

たとえ、これで私が死んで、ミライちゃんやフィエールさん、そして和人が悲しみ続けても、私はそれでいい。

やるしかないのだ。


上空の飛行船は、大きな煙を轟音を発しながら地面へ近づいていく。


「みんな。行くよ」


「うん」

「ああ」


「「行こう」」


言葉を交わした。

瓦礫に身を隠しながら、ハンドサインのみで遠くへ向かう。

目指すは遠くの山の方。ラザニアの龍が来た方向とは逆の、緩やかな山々の方だ。


「……あれ?」

ミライが立ち止まった。

その顔は、何か重大なものに気づいたかのようで、一生懸命別の可能性にすがって、現実逃避しているように見えた。

「どうしたの?」

「……気のせいだといいんだけど、ラザニアの龍って、殺したっけ?」

「……」

記憶にはない。けれど、音も何もしない。もう死んでいる。そう思いたい。

次第に、聞こえる爆発音は二つあるかのように思えてきた。


「……近づいてない?音が」

「息を潜めろ、姿勢を低くして、瓦礫の中に隠れるんだ」

フィエールはそう言うと、少し離れたところで静かに立ち上がった。

建物が二、三軒、やっとの思いで形を保っているくらいで、それ以外には瓦礫か川か、血の滲んだ死体しかない世界を臨んだ。


まばたきをする時間の、十分の位置にも満たない速さで、遠くの街が崩壊する様子が、フィエールの美しい水色の瞳に映った。

数秒して、衝撃波が大地を揺るがす。

フィエールは、ただただその場面を見つめていた。

とても鋭い目で、勇者にふさわしい。


龍と聞き、また記憶の彼方に光が灯る。

聖天地に異変が生じたあの日。

和人が魔力コアを倒し、私が叫んで龍を知らせたあの時。

和人は首を狙った。尻尾を狙った。

殺すことを考えた。私を守ることを考えた。


「フィエールさん」

「悪いがミライ。貴様の予想は正しかった」


剣を構えたフィエールは、一点を見つめた。

大きな影が世界を隠した。

一部だけ赤くなった、あの空を隠した。


「……フィエールさん?」


ミライは、小さくつぶやいた。

冷たい風が起こすつむじ風、洗濯物に絡まる。


直後、龍の息が、龍の叫びが、頭をつんざく。

フィエールに向けて魔法を放ち、フィエールは素手で防ぐと、龍は空高く舞い上がった。

フィエールもそれに乗じて、高く跳躍し、バク転のようにして龍を蹴り上げ、遠くへ飛ばした。

私たちも慌てて外に出て、参戦すると、龍は体勢を立て直し、真っ先にこちらへ向かってくる。

確実に殺す勢いで、こんなことでは、ラザニアにも居場所が分かってしまう。

まるで銃を空へ向け、引き金を弾き続けるように、この戦いはラザニアへ居場所を知らせた。

突如としてやってきた龍に結晶となった魔法を放つ。

冷たい蒼い石英のような、魔法は、硬い龍の体を傷つけることはできなかった。

何度も何度も、繰り返し魔法を命中させても到底勝てそうにない。

フィエールの剣であれば。きっと殺せる。

私もミライも、フィエールを信じた。

そうしてフィエールはもう一度高く舞い上がり、火属性魔法や回復魔法を駆使しながら、龍の頭蓋を命中する。

その大剣の重さと、フィエールの実力は、一度で土地が傾き押し固められるほどであった。

ラザニアは、そっと3人と、死んだ龍を見つめた。

冷たい目が、記憶に焼きつく。

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