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唐辛子のような日々  作者: ミト
11/16

加点

少し肌寒い無機質な建物の中を進んでいくと、大きめな扉の前に通された。

「こちらでお待ちください」

案内役の男性は、そう言うと来た道を戻って行った。



「緊張しますか?」


鈴香さんは私の気持ちを察したのか、不安そうな顔で私を見つめてきた。


「まあ…」


「ですよねえ〜…私も初めて参加した時は凄く緊張しましたけど、いい人たちばかりなので安心して大丈夫ですよ〜」


そう言いながら鈴香さんは扉を開いた。





中には60人くらいだろうか?

主に女性が八割残り二割が男性といった感じだ。

リラックスさせる効果があるのか、いい香りのアロマが焚かれていて、最近の曲をピアノで演奏したBGMが流れている。

造りは中学の頃の体育館のようだ。

演台のようなものもある。


なにかセミナー的なものが行われるのだろうか。





しばらく中を観察しているとBGMが止まった。




「皆さん、お待たせ致しました。只今より第12回ナチュラル思考同好会日本支部開催致します。」


アナウンスが流れると、演台に40代くらいのスッキリとした印象の男性が出てきた。




パチパチパチ


ザワザワしていた会場が一気に静まった。




「皆さんもご存知の通り、地球の環境は年々悪くなっています。人間が便利に暮らすために地球の寿命をどんどん削っていってるのはおわかりですね?

でも、ここに集まって下さっている方たちは、そんな地球環境をどうにかしたいと思って今日この時を生きていると信じています。」



確かに。

そういうナチュラル思考について考えると地球に優しくなった気にもなってくる。



「川や海を汚す合成洗剤等の使用で、いくら日本の下水処理が優秀でもやはり生物的には悪影響です。

きちんと自然に還ることの出来るナチュラル洗剤、つまり純石鹸であったりセスキや重曹、クエン酸の使用が地球を救います。

ちなみに九州のとある島で1ヶ月全員がこの洗剤を使用した所、海や川の水質が大幅に改善したとのデータもあります。

これを日本全土でやったらどうなるか…聡明な皆さんならおわかりですよね?」



ワァーーー!!!


会場は大盛り上がりだ。鈴香さんも興奮している。


この熱気に包まれて私も気分が高揚してきた。


ナチュラルクリーニングはとにかくめんどくさい。


掃除に時間もかかるし、洗い物だって普通の洗剤に比べると洗いにくい。だから、誰とも分かり合えないと思っていたけれどこんなに共感できる人がいるなんてことに少し感動した。



「今日も皆さんで素敵な意見を交換する場になれば幸いです。

これから2時間立食式のパーティが行われますので、楽しんで行ってください!

わたしとお話したい方、今日は特別大サービスでポイント10ポイントで受け付けております!!


では、楽しんで!」



男性は舞台袖へと消えて行った。



ポイント??


なんの事?




「あの…ポイントって…」


鈴香さんに聞いてみた



「あ、ナチュラル思考同好会の会員カードがあるのだけど、一定ポイント貯まると商品と交換出来たりするんです。さっき言ってたセスキや重曹等…」


「え、そうなんだ!凄く良い!


…でもどうやってポイント貯めるの?」



気になるのはそこだ。

何か購入しなければいけないのか?

今日はあまりお金持ってきてないけどなあ…。



「まず、ここを出る前にアンケート用紙に記入すると1ポイントもらえます。

その他にも自分の活動をSNSで報告したり、合成洗剤を使ってる人をナチュラル洗剤に切り替えさせることが出来たりとか…後は今日私がしたみたいに、新しく人を呼ぶことでもポイントはもらえます。


あ、でも少しはポイントの事も考えましたけど、熊田さんの事はほんとに仲良くなりたいとか、この会を紹介したいという気持ちなので誤解しないで欲しいです〜…」


少ししょぼくれている鈴香さんも可愛いのであまり気にはならなかった。


ふと舞台横の扉を見ると長蛇の列が出来ている。



「あの列はなんだろう?」


「あれは、さっき話していた代表と話すための列ですね〜。10ポイントで話せる事なんて珍しいので皆ここぞとばかりに並んでますね〜」


「普段はもっとかかるの?」


鈴香さんは苦笑いしながら

「はいそうなんですよ〜。普段は100-200くらいは最低かかりますね〜…」



そんなに偉い人なんだ!そりゃ、並ぶか!


だが、並んでいない人達もちらほらいる。

その人達はバイキング式の食事をしながら談笑している。


「鈴香さんはいいの?行かなくても」



「はい〜!

今日は熊田さんを皆さんに紹介したくて。

ほら、行きましょ!」


私は笑顔の鈴香さんに手を引かれ、パーティの真ん中へ腕をひかれていった。

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