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唐辛子のような日々  作者: ミト
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緊張と緩和のはじまり

「熊田さんは大分早めに来たのですか?」とカーキー色で薄手のストールを脱ぎながら私に尋ねた。


「あっ、えーっと、今来たところですよ。 私ってあまり友達もいなくって、こういったお誘いを受けたことが少なく、お誘いを受けた時からずーっとそわそわしてたの。」…本当は緊張から来るそわそわと言うより、期待から来るそわそわだったのだけど、これから始まる会がどういった会になるのかわからないため、詳しく説明することを省くことにした。


「鈴香さんはところでこんな会合によく積極的で参加しているの?」と、ホットコーヒーにスプーンを優しく入れて回しながら、鈴香さんを見つめた。


ん、可愛い。

 

ペットショップでは店員さんとして見たので気づかなかったけど、お化粧をきっちりして私服姿になった鈴香さんは前回会った鈴香さんとは思えない程、カジュアルでアクティブな彼女から落ち着いて魅力的な女性に変身していた。

あまりの変身に、持っていたスプーンの動きが止まり、意識がどこか遠のいてしまった。


「ん? ええ、積極的と言うほどでも無いですが、私は一人っ子で両親を訳あってどちらとも亡くしたんです。 

だからか人恋しいと言うか、どうしても気付いたら人のいる所に足が向かってしまうんです。」

彼女はオレンジジュースのストローの紙袋を折ったり戻したりしながら、言いにくそうにゆっくり話した。


「そうなんだ。それは失礼なことを聞いてしまってごめんね」


「ううん。大丈夫。寂しさはあるけどそのおかげで外に気持ちを意識出来るようになったし、何よりこうして熊田さんとも出会えたのだから。」

彼女は自分に大丈夫と思い込む感じで顔を上げて微笑んだ。



時間は15分ほど過ぎただろうか、たわいのない会話を続けた後、

鈴香さんは「そろそろ行きましょうか」と言って、持っていたコートを手に取り席を立ちあがった。


「この喫茶店を出てすぐ右に曲がったところが集合場所ですよ。 みんな熊田さんが集まる今日を楽しみにしてましたよ。行きましょう。」


「うん」と私は言ったものの、急に緊張感が出てきた。


お店を出て、右にに曲がると彼女の言ったとおりそこはすぐだった。





そこは門扉が見えない先まで続く外壁に囲まれた大きなお屋敷一軒家で、その壁の高さも家が見えない程高く、これは家なのか?と思うほど巨大な建造物だった。


到着した門扉には私の身長より高い門が立ちはだかっていて表札は無く、インターフォンの横に「ナチュラル思考同好会」と書かれた表札らしき文字だけ?が書かれていた。


彼女はインターフォンを押すと、しばらく間があってから「はい」と男性の声が聞こえた。


鈴香さんは「こんにちは、山岡です。」と明るい声で伝えると、「お待ちしてました」と男性の声が聞こえてきて、大きな城門のような扉が重々しくゆっくりと自動で開いた。


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