第五十一話 婚姻の儀
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システムメッセージ
DATA ID:3205
ワールド内に6本目のエピックウェポンが誕生しました。
アミルダガー
銘 カグツチアキラ
装備可能レベル1
VIT+20~100(機嫌で変化)
特殊効果
ファーストウェーブの優遇・保護
魔王が臣下ちゃんに泣きつきました。
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『神の声』からもらった対処法は『瀕死になったアダマンタイトフォートレスを素材にして、武器化すること』。それは『鍛冶スキル999』のおかげで成功した。
性能は今までの『エピックウェポン』に比べたら大分地味なものが出来たものだが、メッセージでは読み取りきれない隠された能力があるはず。それより前回のような致命的欠点がないのを評価したい。
ひとまずタフな戦いもこれでやっと……。
無事『アダマンタイトフォートレス』を武器化出来たし、やりきった余韻に浸りたかったが、そんな暇はまったくない。なぜなら俺たちはこの世界の重力によって垂直に落下しているからだ。
まぁ、そりゃそうだとしか言いようがない。
足の接地面だった『アダマンタイトフォートレス』の巨体及び甲羅がなくなったのだから、落下して当然。でもね、こうなることは想定内。
ただ、だからと言って冷静でいられるかというとそうでもなく、あそこが縮み上がってヒュンとなりっぱなしになってしまうくらいには怖い。
いや、すっげぇー怖い! すっげぇー怖いんですけど!
「うわぁぁぁぁぁー」
「んにゃぁぁぁぁー」
なんか今日叫んでばっかりですねぇぇぇぇぇ。
ここから自力でスーパーヒーロー着地を決める能力はもちろん持ち合わせていない。
ならどうするんだい!? と慌てる必要はこれまたない。実はこっちも先手を打ってあるのだ。
頼んだぞ、パーシャック――
パーシャックが俺との約束を果たしてくれていることを確認するため、強風で乾ききった瞳で前を向く。
「よしっ」
思っていたのとちょっと……いや、だいぶ違ったが、俺たちを助けるための陣形が既に完成していた。
落下予測地点には上半身裸の鍛えあげられた兵士達による筋肉の絨毯がしかれていて、青白いオーラをまとって俺たちを迎える準備をしてくれていた。そしてその中心には『聖都の戦乙女』を両手に持ち、ひときわ強いオーラをまとったパーシャックがいて、一心に祈ってくれている。
ラン、ランラララン的な音楽が聞こえてきそうな感動的なシチュエーションじゃなかろうか?
俺はすぐに訪れる鍛え上げられた筋肉との衝撃に耐えるため、大空で大の字になってその時を待った――
「俺たちが仕事を成し遂げたら、上空から放り出されることになる」
「え? え? いきなり何を言いだすんだ」
「まぁ落ち着いて聞いてくれ。そうなったら自力で助かる方法はないから、どうにかして落ちてくる俺たちを受け止めて欲しい。頼んだ」
「頼まれたっ!――」
パーシャックとは事前にこんなやりとりをしていた。
要望は伝えてあるが、その具体的な手段はパーシャック任せ。自分で頼んでおきながら、危なっかしい事をしたかもと思ったが、それだけパーシャックを信頼している証でもある。
無理難題を解決してもらったお礼は後日しっかりしておこう。王子様相手なのだからでっかいお礼をしなきゃね――
無事筋肉の絨毯に収まった俺たちを兵士たちは手荒く歓迎し、そのまま胴上げまでしてくれた。
「わーっしょい! わーっしょい!」
人生初の胴上げはされるがまま、野球中継で優勝を決めた監督のようにきれいな体勢はとれず、ドラム式洗濯機の中の衣服のようにもみくちゃにされていた。
それにくらべてシエラはなれたもので、伝説の波乗りのように完全に下からの押上げを乗りこなしていた。
ひとしきり胴上げをされお互い満足したあと、皆でねぎらいあった。
歓喜の輪にそのまま取り込まれたシエラは、みんなと喜びを分かち合っているのでそのままにしておいて、兵士たちの間で勝利の象徴として祭り上げてもらおう。間違いなくあいつは称賛されるべき功績を残した。俺はちょっと休憩したいので輪の中から離れよう。
「おーーーーーーーい」
そんな俺を目ざとく見つけた奴が一人いた。ジャンプしながら両手をぶんぶん振って俺にアピールしているのは、身分を隠してはいるが一国の王子様である。
走ってきたパーシャックはブレーキをかけることもなく、猛牛のようなタックルをかましたのち、地面に倒れた俺に抱きついてきた。
「ぐふっ」
パーシャックには珍しい手荒い歓迎の仕方だが、喜びがダイレクトに伝わってきて悪くない。
ただ、婚姻の儀になったら身分がばれるのだから、一般人と仲良くしすぎなところを他に見られたらよくないと思うんだがなぁ。そういうのを気にしないのがこいつのいいところではあるけどさ、やっぱり少しは気になっちゃう。
「アキラよくやってくれた! 大金星だな」
息を弾ませ、一気にまくしたてるパーシャックは今までで最高の笑顔をしていた。
俺に対するボディータッチも多めだし、顔を寄せすぎてキスになってしまいそうな勢いは、まるで人懐っこい大型犬みたいだ。
「みんなの助けがあってこそだよ」
謙遜とかではなく、本当にみんなの力があってこそ成し遂げた偉業だ。
フィニッシャーは確かに俺たちだったかもしれないが、目的地にたどり着くために『アダマンタイトフォートレス』の動きを最小限に抑えてくれていたのは両国の兵士たちの守り。
彼、彼女らのおかげで、頂上まで登りきることが出来たのだ。上から見ていたからわかってはいたが、すっごい感動したんだからね! 正直感動して泣きそうだったよ!
「これで、おれも作戦が実行しやすくなるよ」
「ん? 作戦? まだなんかあったっけ」
仇敵の『アダマンタイトフォートレス』は無事に倒した。長かった大遠征もあとはパーシャックの婚姻の儀を残すのみ。両国のしきたりやらなんやらでガチガチに縛られているであろう婚姻の儀で、作戦とか余計な思惑が入り込む余地は一ミリもないはず。
「いや、こっちの話だった。アキラはなーんにも心配なくていいから。な、半裸の人?」
「そうにゃ、あとはにゃーたちに任せれば万事解決なわけにゃ」
「お、おう」
いつのまにかシエラが戻ってきていた。こいつが絡んでいるとわかったとたん、なんだか心配になってきたぞ。
婚姻の儀の出し物の相談であってくれと下らん事考えちゃったが、そんな事ありえんな。直感だけどそう感じた。だとしたら作戦ってなんだろう?
パーシャックとシエラの二人だけで始まった内緒話はとても楽しそうで、時々こっちをちらっと見てはキャッキャしている。そこに深刻な何かを相談しあっている雰囲気はまったくない。どっちかというと学生時代にもよく見かけたゆるーい光景に似ていた。
これなら深く考える必要はなさそう。というか、婚姻の儀を間近に控えて無茶なことなどしないよね。一国の王子なんだからそこらへんはわきまえているはず。はずだよね――
数日後、婚姻の儀にパーシャックの従者兼友人代表として招かれた俺たち三人は、会場で驚くべきものを見てしまった。正確には驚いていたのは俺一人だけだったけど。
シエラはそんな俺を見て「にゃふふ」言いながらニヤニヤしていた。ライオットなんか「本当に気づいておらんかったのか……?」と言って憐みの目を向けてくる始末。
正解を見せられてから、今まで何度かあった違和感、いや、与えられていたヒントを思い出してみる。ここでようやく色んなピースがピタリとハマり「そういうことだったのか」と合点がいった。
婚姻の儀のために正装で神妙な顔をしている『カイル王子』と、想像を絶する美しさで列席の方々に「ほぉ~」と感嘆のためいきをつかせる『パーシャック王女』を見て、自分の鈍感さにびびった。
まぁこのあと更に度肝を抜かれることになるんだけどね。
なぁ、シエラにパーシャック?




