↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/52

第四十八話 完全決着までの軌跡

 


 金属と筋肉で戦っていた世界観に、突如弾道ミサイルがぶっ放されたようなインパクトはすさまじく、俺は『エルフの代行人』達から視線を外せずにいた。

 


 地球の歴史で考えると中世から近代へ一気に科学力が進化した感じか。

 すげえなぁと素直に喜ぼうとしたが、ルナール王国の『十年分の軍事費』が掛かったスクロールを『とある事情』でダメにしてしまったことを思い出し、すぐに何とも言えない気持ちになってしまった。



 だってさ、一発一億の『ライトニングアロー』五発でこんなに威力があるんでしょ?

 件のスクロールが実戦投入されていたらすでに勝負がついていたのでは――




 ===============


 いえ、あれはそんなに甘くありませんよ?

   

 うおっ、びっくりした。今日は珍しく何度もやってくるね


 アキラさんへの特別大サービスです、喜んでください


 素直に喜ぶよ。そしてありがとう


 いえいえ

 

 で、話を戻すけどさ。甘くないってどういうことなんだ?


 そうでした! 私ったらいけない。えっと簡単に説明すると『アダマンタイトフォートレス』はあなたがたでは『倒せない』ようになっているんです


 倒せない、ときたか……

 なんでそんなことを知っているんだ? とか野暮なことは言わない。今まで行使してくれた奇跡を思い出すと、『天の声』の中の人たちは自分が想像つかないほどの大いなる存在だろうってことくらいはさすがに理解している

 

 えへへ~大いなる存在だなんて恥ずかしいですよう~


 …………まぁそれはそれとして。どうやってもあの亀は倒せないの? それは困るんだが

    

 ええ、『アダマンタイトフォートレスはこの世界では倒せないように生まれてきた存在なんです』。なのでアキラさんの推察通り直に復活して動き出しますよ~


 倒せないのに動き出すことはほぼ確定と……。それじゃあんまりだよ、どうにかならないわけ?


 実はですね~~なるんです!!


 なっちゃうんだ!?


 ええっと、今から授ける戦法を使えば『アダマンタイトフォートレス』を無力化する事ができます。

 で、す、が。それにはシエラさんとパーシャックさんの力が必要になります。二人とも抜き差しならない状況なのでどうにか協力を得られるよう頑張ってくださいね? 


 おう


 私好みのいい返事です。

 それでは『アダマンタイトフォートレス』の対処法を授けますね――



 ===============



「はっはっはっはー! これがルナール王国の底力だ!」

 そう言って剣を構え馬上に立ち上がろうとしたカイル王子にびっくりしたのか、馬は両前脚をあげ、カイル王子を振り落とすようなそぶりを見せる。



「おーっとっと。俺の愛馬も喜んでいるな!」

 ……違うと思うな。

 とか突っ込んでいる場合じゃない。

 

 

 完全に生命活動を停止したようにしか見えない『アダマンタイトフォートレス』だが、直に復活しまた大暴れする。それがどのタイミングかわからないが、息をひそめ真剣な表情で様子を伺っている兵士たちには事前に伝えておたほうがいいだろう。


  

「俺は仲間の様子が気になるので見に行ってきます。皆さんには申し訳ありませんがこのまま警戒を怠らないでください。復活とかするような魔物なんでとても嫌な予感がするんです」

 真実を伝えても信じてもらえる保障などないので、このくらいの注意喚起ですませておく。実戦に関してはあちらがプロなので、判断を誤るとは思わないけど一応ね。



「俺たちも嫌な予感がしているんだ。気を付けるよありがとう。坊主も気をつけてな、魔物の加勢がいつ来るとも限らん」

「はい。こちらこそありがとうございます」



 思っていた通り話の分かる大人たちでよかった。気兼ねなくこの場から離れることが出来る。俺を皆に頭を下げてからシエラのもとへ急いだ――

 

  


 

「シエラ、大丈夫か?」 

「ふにゃ~」

 


 一緒にいる時間がそれなりに長いだけあって、この一言でダメそうなことはすぐにわかった。

 普段なら飲み過ぎに対して、ちょっといじったりするのだが今日はそういう訳にはいかない。

 体調を気遣いながらも心を鬼にして、戦場に連れて行かなければならないからだ。いらんストレスはできるだけかけないほうがいい。 

 


 ただ、そうは言ってもどう頑張れば立つのもつらそうなシエラと一緒に『頂上』へ行けるのか。まったく名案が浮かんでこない。『アダマンタイトフォートレス』を討伐するためにはどうしても『頂上』まで行かねばならないのだが……。 


 

 思考にふけっていると突然外が騒がしくなった。

 嫌な予感がする。

 前回に比べて早すぎるが、きっと自己再生を始めたのだろう。



「ったく、もうちょっと時間をくれよ……」

 答えは一向に出てこないのに、非情にも事態は悪い方向へ進んでいく。

 気持ちだけが焦って、案が出てこないし、出てきてもまとまりそうにない。


 

 でもね? 思考停止しそうになりそうなこんな時の思考法や解決策は、おかげさまで持ち合わせています。ありがとう社畜時代の経験。



「ライオット、すまん知恵を貸してくれ。今かくかくしかじかでこういう状況なんだが――」

 猫の手ならぬ、幼女ドラゴンの手でも借りなきゃダメなほど追い込まれているのを自覚していたので、大人のプライドなぞぶん投げてアドバイスを求める。



「どうやってその答えに行きついたのかわからぬが、シンプルに考えればシエラをその場所に連れていくことなど、お主ならたやすい事じゃ。そうじゃろ?」

「すまん、全然思いつかないんだ。考えている時間も惜しい。答えを教えてくれ」

 


「ふむ、仕方ないのう」

 どんな答えをくれるのかドキドキしながら続きを待つ。



「な~に至極簡単な話じゃ。シエラを背負って気合で登ればいいだけじゃろ」

 子供特有の柔軟な考えだなぁと思いました。ただそう思ったと同時にこれは俺にできることか? という疑問も当然生まれた。だって俺はワン〇のような握力は持ち合わせていないし。



「男女二人分の体重で、『アダマンタイトフォートレス』の『頂上』まで行くのは流石に――」

「気合じゃ」

「いやいや、気合にも限度ってもの――」



「男なら女々しいことなど言うでない!」

「!!」

 幼女の迫力に言葉を返せない中身アラサーのおっさん。情けなさ過ぎでしょ。



「皆の命が掛かっておるのじゃ燃えてくる展開ではないのか? それにお主が頑張ればパーシャックの婚姻だって、ゴホンゴホン」



 最後の一言が気になったが、そこは今は重要なところではない。

 もうすでに、『やるかやらないかではなく』、『やるしかない』状況になっていたんだ。

 男なら根性見せてみろと無言で見つめてくるライオットの期待に応えてやらねば、男が廃るってもんだ。もうね、やります。やってやりますよ。



「わかったよ。やってやる」

「その意気じゃ」

 気持ちは決まった。あと俺がここでするべきことはただ一つ。 



「シエラすまん。どうしてもお前の力が必要なんだ」

「ふにゃ~仕方ないのにゃ……。にゃーを必要とする人がいる限りにゃーに平穏は訪れないのにゃ……」

 布団からふらふらと起き上がってくれたシエラの顔色は悪いが、気迫を感じる目つきではある。その証拠に二つの短剣も忘れずに携帯してくれている。ライオットもだが、シエラも戦ってくれているのだ、もうマジでやるしかない。



 シエラの前で腰を落とし、背中を向けシエラの積載準備に入る。

「よし、乗ってくれ」

「ふにゃ~」と力なく一言もらし、全体重を預けるシエラから少々お酒の匂いが漂ってきた。体調は悪いのは間違いない俺がしっかりしなくちゃな。

 

 

「お主、ちょっと待つがよい。その密着度じゃちょっと心もとないのう。途中でシエラがずり落ちてしまうかもしれん。紐かなんかで縛ったほうがよかろう。少し待っておるのじゃ」



 そのあとはもうライオットにされるがまま紐で縛られ、シエラとの密着度がさらにあがった。

 俺の背中にはギューと押し付けられ、存在をこれでもかと主張してくるやわらかい双丘に、首筋をくすぐる美少女の弱弱しい吐息。ここだけ抜き取ったら恋愛ADVでありそうなドキドキシチュエーションだが、実際には『抱っこ紐を使う主婦の気持ちになるですよ』ってなもんでなんか変な気分。まぁ大事な人を守るための行為という点では一緒か。



「ありがとうな、ライオット。行ってくるわ」

「うむ。男を見せてくるんじゃぞ」

 ビっと親指を立て返事をし、なるべく縦揺れが起きないようにして『アダマンタイトフォートレス』のいる戦場へ駈けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。