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第四十六話 完全討伐への道筋

 自然の摂理に反し、完全復活を遂げた『アダマンタイトフォートレス』は巨体を回転させると、その勢いと共に自慢の尻尾で周囲を薙ぎ払った。


 

 その円周内には当然のように大勢の祝勝会参加者たちがいる。

 いや、いた――



 非現実的な事が現在進行形で起きているため、虚を突かれる形になってしまった周りの人々はウェートがのった尻尾にぶっ飛ばされる。



 円卓や食材などと一緒に勢いよく地面に叩きつけられた兵士たちは、うずくまったまま起き上がれない。

 この段になってようやく両国の指揮系統が効き始め、仲間が連携して負傷者を助けに入る。

 二次被害を免れるために細心の注意を払っているはずなので、その作業はなかなか進んではいない。歯がゆいがこればかりは仕方がない。



 速さを優先してやみくもに助けに行ってしまうと負傷者が増えるだけだとみんなわかっているのだ。

 


 とはいえ、なんでこんなことになっているのだろうか。

 体を真っ二つにされた『アダマンタイトフォートレス』は職人や商人たちの手によって素材ごとに解体までされていた。そんな状態で何故再活動できるのか。

 いくらここが異世界とはいえ、これはあまりにもアンフェアでは?

 

 

 そしてさらにこの危機的状況をさらに悪化させる材料がある。

 それは、『アダマンタイトフォートレス』を真っ二つに両断した次代の英雄候補(シエラ)がこんな時に限ってグロッキー状態で戦力にならない事だ。絶体絶命とは正にこんな時にこそ使う言葉であろう。抱えきれそうにない多くの感情が俺を襲う。

 


 頭がパニックになりかけるが、深呼吸して心を落ち着かせ、思考を停止しないよう努める。 

 緊急事態だろうが自分で決断し、行動を決めねばならない。

 


 精神年齢は学生時代からそこまで変わっていないが、俺は『大人』という役割を持っているのでシエラとライオットの安全を確保する義務がある――


 


 酒に酔って「う~う~」うなっているシエラと、つないだ手を強く握り返してくるライオットが自分の手の届く範囲にいる。勇者でもなんでもない俺はこの二人を守ることを第一に考える。             


「ライオット! 俺はシエラをおぶって野営地内まで走る。お前は俺の手を絶対に離すなよ」

「わ、わかったのじゃ」

 


 シエラをおぶり、先ほどより一層強く握り返された手を感じてから「いくぞ」と一声かけて俺は後ろを一切振り返らずに必死になって走った――

 

 

 野営地内の部屋に無事たどり着いた俺は、汗をぬぐうより先にシエラを布団の上に横たわらせ、次にやれることを模索する。

 


 あの大亀はシエラが何時間もかけてやっと倒せたような相手だ。一筋縄ではいかない。

 シエラと同じような『強力な力』を持った味方でもいない限り――



「アキラ、先に言っておくが」

「ん?」

 一体何を言い出すのだろう? 思考に浸る前にライオットから話があった。珍しい事だった。



「お主たちには悪いが『こういった場面』でわらわは加勢する事はできぬ……」

「そんなつもりは一切なかったから気にすんな」

 


 平静を装いつつ、聞き分けのいい大人がいいそうな言葉で返した。

 嘘だった。

 


 最初からライオットに頼むつもりはなかったが、『どうしても』となった場合その可能性を考えてはいたのだ。

 以前『生きた金属』のグロリア鋼をわからせた時のあの『超越種の子竜滅波』の威力は強烈だった。あれは『シエラ with エピックウェポン』の力に匹敵するのではないかと正直思っている。



 そんな力がこちらの陣営、しかも身内も身内のライオットに備わっているともなれば頼ってしまいたくもなる。それが見た目も精神面も未熟な子供だとしても…………いや、やっぱりこれはダメだ。

 


 人の生き死にが掛かっている以上、ライオットに頼みこむという選択肢もあるにはある。

 だが、事情をよく知ったうえでこちらに頼られる前にあえて伝えてきた以上、加勢できない、よっぽどの理由があるに違いない。

 だとしたらライオットに頼ってしまってはダメだ。大人としてではなく人として。



 と、物わかりのいい人になったところで、「だったらどうするの?」と現実的なことを言われたら答えはすぐには出て来ない。



 どうすればいい?

 難しく考えようとしたって駄目なのは経験上わかっているのでもっとシンプルに考えるべき。

 そう、シンプルイズベストって誰かも言ってた。

 


 この世界で俺が唯一他の人間より優っているところはなにか?

 考えるまでもない、限界を超えて999も振り切った鍛冶スキルだ。それと俺にしか聞こえない『天の声』もある。この『天の声』は何かと俺を贔屓してくれている気がする。

 この局面でこの二つの力をどうにかして活かせないだろうか? 

 

 

 『通常合成』は時間も場所も素材もない。ないない尽くめである。なので却下。

 


 だったら『精霊合成』となるが、これも手持ちにピクシーストーンがないので今はできない。

 再度都合よく『連続生存ボーナス』とやらがここで来てくれればいいが、今後あるにしても今日は百二とか百三日目あたりなのでキリが悪すぎる。なのでこれも却下。

 


 新規に武器を合成する案はなさげ、だったらあるもので勝負するしかない。

 考えろ、考えるんだ……。

 


 シエラの『エピックウェポン』と同等の強さを持った武器がどこかにないか? ってなったところでピコーンと唐突に思い出した。というかよく今まで忘れていたもんだと思ったくらい。



 パーシャックに贈った『聖都の戦乙女』があるじゃないか。あれならシエラのとは違ったアプローチで『アダマンタイトフォートレス』をぶっ倒すことが出来るはず。

 てか、できなきゃ困る。

 


 希望の光がわずかに差した気がする。

 すると次の行動への道筋がしっかり見えてきた。まずはパーシャックと合流しよう。これが俺が出したシンプルな回答。

 あっているかは知らねーが、やってみる価値はありますぜ。



「ライオット、ここでシエラを見ていてもらっていいか?」

「そのくらいなら構わぬ、というかわらわは何べんもこやつの面倒を見せられて、今や工房内随一のお守マスターじゃぞ?」

「そうだったな」

 


 お守マスターの語呂が面白くてつい笑みがこぼれた。いい兆候だ。

 まぁその称号なら俺もお前とはいい勝負になりそうだけどな!



「もしもこいつの体調が回復するようだったら戦場へ加勢を頼んでほしい」

 難しいかもしれないが、勝率を少しでも上げるため打てる手を全て打っておきたい。

「わかったのじゃ」



「それと」

「うむ? まだ何かあるのか?」



「ここも危なくなったら二人してどうにか逃げてくれ。その際はここに避難している人が何人かいたからその人たちを頼ってほしい」

「うむ、わかったのじゃ。ただそうはならぬと信じておる」



 その一言に強い信頼感を感じた。某ペルソ〇だったらここで絆レベル的めいたものがあがってお互いの仲が一層深まる場面だね。まぁ大人として、ゲーマーとしてこの気持ちに応えてやりたくなるのは当然。

 


「ああ、任せておけって」

「うむっ」と言ってからニコっと笑顔。

 最高のご褒美をもらって、強い決心がわいた俺はパーシャックを探しに『アダマンタイトフォートレス』のいる危険な戦場へ舞い戻った。



 眼前には前回以上に機敏な動作で戦場を支配している『アダマンタイトフォートレス』がいて、好き勝手に暴れ散らしている。

 だがここにきて突然「お前の横暴もここまでだ!」とか叫べそうな強気な気持ちがわいてきていた。 



 なんだか知らんが戦場に戻ってきてから危険度が増すにつれて、その気持ちは高まり、心と体に無限の力みなぎってきている。



 というかこの不思議な現象は俺一人ではないようで両国の兵士たちも自分が見てきた以前の戦闘より統率が取れて動きに無駄が一切ない。『アダマンタイトフォートレス』の猛攻に耐えながらなんとか食らいついているほどだ。



 さて、いったいこの短時間で俺たちになにが起きたのか? と疑問に思ったところでその原因を一瞬で理解できるものが視界に映った。

 


 思わず息をのんでしまう美しさと神々しさを兼ね備えた『聖女のようなたたずまい』の王子は見るものに絶対的な安ど感を与える光に包まれ、その中で目を閉じながら祈り続けている。


 

 光はパーシャック専用のエピックウェポン『聖都の戦乙女』から発せられているもので、そこから放たれたオーラがわが子を守る母親のように王子を優しく包み込んでいた――

 

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