第四十話 リーチ一発ネコ
294秒、293秒、292秒――
300秒あったタイムが減っていく。
五分弱で俺たちの命運が決まってしまうのだから大事に扱わなければならない。
本当はさ、超絶レアアイテムの『雷のピクシストーン』が手に入ったことを素直に喜びたかった。
時間に余裕があったのなら今後のためにも『合成品の検索サーチ』を使い倒しておきたかった。
ゲームで同じような状況だったら気持ちを落ち着かせるため、ひとまずポーズボタンを押して一息入れていた場面。
でもここはゲームの世界ではないので時はいつまでも止まっていてはくれない。
だからすぐに頭を切り替え、残り252秒でこの窮地に適した最高の武器を作っていく。
熟考している時間は既にないので今までの知識と経験を生かして『なるはや』で検索をし、武器を作ってしまおう。そうしよう。
よし、やってやる!
試しに『能力オープン』とか念じてみる。
言葉は何でもよかったみたいで俺が意思を示すと『プンッ』とゲームによくありそうなSEが鳴り、時間の止まった世界で近未来チックな立体映像が表示された。
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システムメッセージ
合成品の検索サーチを始めます。
武器、または防具を選――
天の声を最後まで聞いている余裕はないので話の途中で『武器』を選択する。
回線が混み合いすぎて何度も掛けなおしをさせられる音声ダイヤルの先読みみたいでなんだか笑ってしまった。
……それでは武器種を――
『短剣』!
探せばほかの候補もあるだろうが、ズボラなシエラが肌身離さず持ち歩いていた実績を踏まえ選択。相性は大事だ。それに今装備している短剣と新武器で二刀流なんかしたらカッコいいじゃん?
検索結果 アキラさんの合成スキル『エラーコードkc725578』で作成可能な短剣武器は530,021件になります。
約53万件! 多すぎーしかもバグってるー。
一個一個確認している時間は当然ながらないので絞り込みをかける。
こんな感じで。
『雷のピクシストーン』を使い『合成可能』で絞り込む。さらにその中から『攻撃力』の項目を降順で表示してくれ。
かしこまりました。
『雷のピクシストーン』を使い、攻撃力を降順で表示します。
検索結果3件
今度は極端に少なっ! 激レアな『雷のピクシストーン』が素材に絡むからだろうか?
まぁそれはおいておいて。この三件の中でひときわ目を引く武器を発見。
精霊合成選択武器
フォートレスデストロイヤー
必要素材
雷のピクシーストーン
要塞亀の甲羅
要塞亀の血液(体外に出てから10分以内)
金属500g
エルフの高位スクロール
必要合成スキル 999
推奨合成人数 10人~
※ルール違反です。検索欄から削除するか、他のデータに差し替えておいてください。
↓
素材を落とす魔物は討伐不可能なので気にしないでぇ。
↓
そういう事を言ってるんじゃないの。修正はよしろ。
↓
あとでやっておきま~す。
まずは『フォートレスデストロイヤー』という名前がいい。この亀を倒すためにあるようなもんでしょこれ。
あとなんか知らんけど、作っちゃダメっぽいやりとりがあるのもいい。こういうの見ると余計作ってみたくなるよね……ぶっこわれ武器っぽいし。
オンラインゲームとかの場合こういう運営の想定外なことを悪用すると短期ban食らったりするから選んじゃだめなんだが、多くの人の生死が掛かったこの場面でこれを作らないという選択肢はありえない。
だからこれに決めた。あとの二つは吟味している時間もないし忘れる。
必要スキルはギリギリだがもういくっきゃねー。
ポチっと、な――
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システムメッセージ
DATA ID:3204
ワールド内に5本目のエピックウェポンが誕生しました。
フォートレスデストロイヤー
銘 カグツチアキラ
装備可能レベル0
STR+1~2200(日頃の行いで増減)
INT-5
敵対心+25
特殊効果
デストロイヤー(通算2101匹討伐中)
強敵を倒すたびSTRが1ずつ永続加算されていきます
ブレイカー
相手の防御力が高ければ高いほどSTRとLUCにボーナスが加算される
ブレイバーIV
特定状況でボーナスを得る
魔王がベッドの上でもんどり打っています。
魔王がベッドの上から落っこちました。
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Wow! 合成スキルちょうどだったけど一人で成功しちゃった。さすが俺のチートスキル。やったぜ。
無事成功したこととラスボス後の隠しダンジョンで手に入るようなぶっこわれ武器が出来上がり、思わず外国人みたいなリアクションをとってしまったぜ。
あとはシエラにとっては突然現れたようにしか思えないこの武器をさりげなーく手渡しておいて亀を倒してもらおう。何か大事なことを忘れているような気がするけど。
システムメッセージ『仮』さん。この停止世界の猶予はあとどのくらいあるの?
二十秒ほどです。
二十秒か、もうそんなにないな。今のうちにやれることをやっておくか。
まずシエラに武器を渡しておかねば何も始まらんわな。
なので急いでこっちを向いて固まっているシエラのもとへ向かい、サムズアップしているほうの手に新武器を握らせた。
ふ、やはり二刀流は美しい……。
停止世界だからといって指が固まって動かないとかいうありがちなアクシデントもなかったのでよかったよかった。
あとは停止明けにシエラが疑問を口にしたら口八丁でごまかす。
よしっここまではパーフェクトプランだ。
それからそれから、あぁーーなんか緊張してきたぞ。
停止世界からの復帰直後が一番怖いわ。こればっかりはどうなるかわからんし。
ってあれ? なんで怖いんだっけか? と思ってふと『アダマンタイトフォートレス』の極太テイルレーザーの存在をいまさら思い出し、「あっ」とか言っちゃってる俺やべーわ。
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システムメッセージ
残り3,2,1――――
ああぁー世界が動き出しちゃった!
「ふにゃ? なにこれ?」
当然のことながらさっきまで持ってなかった新しい武器に興味を示すシエラ。
自分が今置かれている状況がわかっていたらそんなことしている余裕なんてないのに!
「シエラぁーそれより前だ。前を見てくれ」
といったところでもう時すでに遅し。
停止世界が明けたと同時に放たれた回避不能な極太テイルレーザーは俺たちのもとへ一気に突っ込んできている。
そしてあっという間に俺の視界には高出力のレーザーとシエラのシルエットしかみえなくなってしまった。
もうこうなったら攻撃に気づいていないシエラのバリアが勝つことを祈るしかない!
うおぉー頼むシエラ耐えてくれぇぇぇー。
だが、そう何度も都合よくいくことはなく、俺たちは一気に光にのみこまれて――
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システムメッセージ
フォートレスデストロイヤーの『ブレイカー』が発動しました。
玄武短剣と同等のステータスを持ったグリーンタートルナイフの能力『稀に全属性の攻撃無効』が発動しました。
この瞬間、『アダマンタイトフォートレス』のテイルレーザーが跡形もなく消え去った。
実際は目の前がチカチカと眩しいので確認できてはいないのだが、自分がまだ生きていることとシステムメッセージが伝えてくれたことを勘案してそうなったと判断した。
色々とバフ効果が重なっているとはいえ、この防衛戦の最中一度も発動したことがなかった特殊能力『稀に全属性の攻撃無効』をここ一番で引き当てるシエラの天運すげぇー。
こいつにはいつか俺のソシャゲアカウントでおはガチャ引いてほしいわ。一発で目当ての最高レア引いてくれそう。




