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第二十四話 王子のフラグ回避


「ハルバードか、なんでこの武器を選んだ?」

 実家にあった物干し竿とほぼ同じ長さ。重さも用途もまったく違うが、これを素人に扱えるとはとうてい思えなかった。



「だってこの武器、槍と斧が合体していてカッコいいじゃん!」

 あんまりな理由にずっこけそうになるも、どうにか堪える。

[そんな理由で選んでいいのか?]

「いいんだよ。おれは戦闘があっても参加しないし」 

  

 

「まぁそれならいいけど。希望通りハルバードを作るとしてもさ、こんな長くなくていいよな? 持ち運びやすいように短くしてもいいか?」

「え~」

 パーシャックは目を細め、わかりやすく不満げな顔をする。



「パーシャックは戦わないんだろ? 大遠征で長距離移動するならコンパクトなほうが持ち運びも楽だぞ」

「いーや、長さはこのままがいい!」



「でもな、重いしかさばるぞ?」

 こうやって駄々っ子をたしなめている感じ、なんか身に覚えがあるな……。

「だめだ! 長いほうがかっこいいし目立つ、そしてつよい!」

 


 思い出した! 

 子供時代だだをこねてた俺と、両親のやりとりに似ているんだこれ。 

 いま思い出すと恥ずかしさで「あああぁ!」と床を転げまわりたくなるが、当時は自分が世界の中心だと思いこんでいたのだから仕方ない。

 ……仕方ないよな?

 


 それより、幼い頃の俺と精神年齢が一緒なパーシャックってどうなの?

 王国で甘やかされているのだろうけど、このまま成長して大人になるのだとしたらちょっと心配だぞ。

 とか上から目線のてんこもりで、はっぴーにゅうにゃーしている自分自身が、大人になりきれない人間だったことを思い出し軽くへこんだ。

  

 

 その後、急いでメンタルを回復させ、パーシャックの希望するハルバードのフォルムやデザインの案を詰めていった。

 まず初めに話し合ったのはハルバードのフォルムだが、こっちはすぐに決まった。

 


 なんて事はない。工房にあったハルバードをパーシャックがいたく気に入ったので、それをそのまま採用する事になっただけだ。

 


 重視したのはデザインだ。

 斧の部分に細部にわたって王国の紋章を加え、刃先の素材を変更して既製品とは違ったオリジナルティと威厳を出して欲しいとのことだった。ここはさすがに一人では難しそうなのでサーニャさんの力を借りる事になりそう。



 そういえば俺もパーシャックに一つ提案をした。

 非力なパーシャックのために軽い素材を使うのはどうだろうかと。

 俺なりの優しさだが、うまく伝わったようで「いいぞ」と即答されたのでひと安心。

 


 お互いの案をすりあわせる事が出来たので、あとは実際に武器を作るだけとなった。

 朝からバタバタしたが、これでいつもどおりの日常に戻れそう。




「よし、こんなもんか」

「おう! 製作に入ったらおれは手伝えることないからな、城に帰る。あとは頼んだぞ」

「まかせとけって――」




===============


 システムメッセージ

 エピックウェポン:ユイリ愛用包丁+99の『フラグ回避IV』の効果が発動。

 24時間のクールタイムが発生しました。

 



あ、それ私のプリンですよ姉さん! 勝手に食べないで――――





 システムメッセージのあとのやりとりはこの際どうでもいい。

 なぜこのタイミングでエピックウェポンの能力が発動したのか、そこが問題だった。


 

 発動したのは『フラグ回避IV』

 確か、不幸なフラグを回避する能力だったはず。

 この能力が発動したという事はパーシャックとのやり取りの中で、何かバッドフラグ的なものを踏み抜いてしまったという事だ。



 それって何だ? 

「この戦いが終わったら俺、結婚するんだ」とか、『カ○コン製のヘリの操縦』のような典型的な死亡フラグを建てたのならわかりやすいのだが、そうではない。



 初めて発動する能力なので効果も発動条件も未知数。これは困った。

 気付かぬまま踏み抜いたバッドフラグをそのままにしておけばまた同じフラグを建てかねない。

 それは駄目だ。

 


 ここは必死に考え、原因を究明せねば。

 まずは能力の発動タイミングを検証してみる。

 確か武器製作のプランが決まって、パーシャックが城へ帰ると言った直後だった。

 


 パーシャックが城に帰ることが駄目なのか? 

いや、まだそうだと決めつけるのは早計か。

 


 武器製作のプラン自体が問題だった可能性もある。

 ただ、こっちが原因だとすると、大遠征中でも戦う必要のない立場にいるパーシャックには無関係なはずなのだが……。

 



 だめだ、ぜんぜんわからん。

 原因を解明できないので、不安をぬぐいきれない。

 抜本的な解決をしていないのだ。また同じ過ちを繰り返すのは明白。

 問題を解決せぬままクールタイム中に別のバッドフラグを踏み抜いてしまったら……………………。



 一度縁が生まれ、こうして関わってしまった以上、のちのち後悔しそうな選択肢は取れない。

 エピックウェポンや、人間を脅かす魔物や魔王がいる不思議な世界でもここはゲームの中ではない。セーブしてリトライなど出来ないのだ。 

 



 ここは多少無茶をしてでもパーシャックを城に帰すわけにはいかないな……。

 エピックウェポンの能力『家内安全IV』が効いているこの工房で、『フラグ回避IV』のクールタイムが明ける24時間はここにいてもらったほうが安全と判断し、俺はパーシャックに声をかける。




「パーシャック! まだ帰っちゃ駄目だ」

「うおっ! そんな大声出すなよ。ビックリするだろ」

 お供二人と帰り支度をしていたパーシャックは、胸元に手を当て、心底驚いたような顔をして俺を見た。そりゃこんな大声出したらそんな顔になるよな。ただ俺もそれだけ必死なのだ、許してくれ。


 


 パーシャックに近づくと、肩をつかみ大真面目に説得を試みた。

 自分らしくない力技だと思う。だけど、最終的に熱意が人を動かす。そう信じての行動だった。



「いいから、お前はここに残れ。なんなら今日はここに泊まってもいいんだぞ。サーニャさんいいですよね?」

「お、おう。ユイリも喜ぶだろうし、私は別にいいが……どうしたんだ、いきなり?」

 いきなり話を振られたサーニャさんも少し戸惑っていたが俺の熱意にほだされたのか、あっさり了承してくれた。サーニャさんありがとうございます。 





「おいおい、アキラ~。そんなにおれと別れるのが寂しいのか~? んん?」

 こっちはなんか変な勘違いをしているような気もするが、問題を解決するまでここに残ってくれさえすればいい。理由を説明したところで変な奴にしか思われないのはわかりきったことだ。


 


「お前はこの国にとって大事な人間だ。だから、な? 頼む」

 もう、熱意というか拝み倒しに入る。伝わってくれ俺のこの想い!

 


 目をぱちくりさせたパーシャックだったが「はは~ん、そういうことか」とつぶやいた後、ニヤニヤ顔で

「そんなに頼まれちゃ、しゃ~ないなぁ」と言ってうれしそうに首を縦に振ってくれた。




「タップス、フィルダー。おれはここに残る。国王とユークリッドにはいい感じに伝えて置いてくれ!」

「それは困ります! パーシャック様、今日は大事な懇親会が」

「知っている!」



「私たちが国王にしかられます」

「知っているっ!」

 今日初めて口を開いたタップスとフィルダー(どっちがどっちだ?)は王子の突然の心変わりに困惑顔。

 


「もういいだろ。おれがいいっていったからいいのっ! ほら、行った、行った」

 タップスとフィルダーは王子に背中を押され、無理やり大通りに押し出される。その際、王子をそそのかしたようにしかみえない俺をひとにらみしてから、大通りの人並みに消えていった。

 すまぬ、すまぬ……あれもこれも全部王子のためだからね!




 部下二人を見送ったパーシャックは、ドアの前で振り返ると俺に向かってこう言った。

「大事な約束を破らせたんだからな、さいっこうの武器を作ってくれよな!」

 



 全力で武器を作ってバッドフラグを回避できるかはやってみないとわからない。

 それでも俺がやれるのはこれくらいしかない。

 パーシャックのために、チート能力を使って『さいっこうのハルバード』を作ってやるからな。



「任せとけ!」

 こうして強い決意の元、俺とパーシャックの長い一日が始まった。

 


次回、王子の願いを叶えた最高のエピックウェポンが出来上がるお話になる予定です。

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