第二十二話 美少女だったとしても許されない残虐な行為
※ヒロインの一人であるシエラの部屋に移動した後、『非常に残念な描写』があります。
食事の前後にお読みにならないようお気をつけください。
マクシミリアン工房の未来を方向付ける依頼をうけた次の日の朝。
早朝の仕事を終え、食卓で朝食をとっているのだが今日はいつもと様子が違った。
今マクシミリアン工房の食卓で食事を取っているのは鍛冶屋の母と子に地球からの転生者と竜人族の幼女。そして昨日出会ったばかりのパーシャック王子だ。
朝もはよからお供二人を引き連れやってきて、一緒に食事を取っている。
王子のフットワークの軽さにも驚くが、動じる事もなく食卓に招き入れた親子の肝の据わりっぷりも凄まじい。
その王子はというとユイリちゃんの作った料理が大変気に入ったようで
「庶民の食事もなかなか悪くないな! おかわり!」と上から目線ながらも出される料理をおいしそうに平らげ、おかわりまで要求。
「お前が普段何を食っているのか知らんが、ユイリが作った料理なんだからおいしくて当たり前だろ」
「えへへ~。いっぱい食べてね~」
母親と王子に褒められ、ユイリちゃんもまんざらではない様子。
笑顔でおかわりをすすめていた。ユイリちゃんまじ大天使。
おかわりを要求した王子も、ユイリちゃんの作った料理を笑顔でおいしそうに食べている。
あまりにおしそうに食べるもんだから俺もつられておかわりを頼んでしまったほど。
「俺もおかわりいいかな?」
「うん! お兄ちゃんもいっぱい食べてね」
ユイリちゃんも食事中だというのに健気に応えてくれる。なんて出来た子なのだろう。
九歳でこのきめ細やかな気遣い。将来が楽しみですね。
こんな面々が揃った食卓は会話の内容もバラバラで結構楽しい。(王子のお供は会話に混ざってこないが)
ライオットは自分の母親がどれだけ偉大で素晴らしいかを語ってくれたし、王子は兄と姉がどれだけ優秀で、王国に貢献しているかを自分の事のように自慢していた。
こっちの世界に来るまでは弧食のほうが気楽でいいと思っていたが、子供の頃の給食のようにみんなでワイワイ食べるのもまたいいものだと思い出せた。
鼻から牛乳をだしてむせていたあいつは元気だろうか……
と、朝っぱらからしんみりしそうになったがもう一人の事をすっかり忘れていた。
グロリアの英雄こと、酔っ払い胴上げ猫のシエラは昨日の暴飲がたたって二日酔いに苦しみ、ベッドの上でふにゃーふにゃーうなっている。
あんだけ飲めばさもありなん。
「さて、食事も済んだしそろそろ仕事に戻るか」
「はい」
楽しい食事も終わり、昼まで仕事だ。
腕をぐぐっと伸ばし気持ちを切り替える。
「いよいよおれの装備を作ってくれるんだな? 遠くから見ても目立つカッコいいの頼むぞ!」
目をきらきら輝かせた王子は、サーニャさんににじり寄る。
当たり前だが食事を食べに来たわけではない。
こっちが本来の目的なわけで、いてもたってもいられない様子。まるで誕生日におもちゃ屋に連れてこられた子供のようなテンションだ。
それを押しとどめながらサーニャさんはこう言った。
「……それはひとまず置いておこう。装備一式を作るには正確な体のサイズを知らなくちゃならん。今から採寸するぞ」
「うおおおおおぉー!」
それを聞いた王子はうれしそうに左手をつきあげ、雄たけびをあげた。
風雲拳の使い手なのん? ブーメランつくる?
食卓から工房へ大人数でぞろぞろと移動。
移動中の王子は見るもの全てに興味津々なようで、「ほー」とか「へ~」とか言いながら工具や商品の武具をいじり倒していた。怪我だけはしないでね。
「よしっ! んじゃ早速採寸すっか。王子、そのひらひらした服を脱いでもらっていいか」
「おう! 任せろ」
気持ちが逸っているのか、王子は女性の目があっても一切躊躇することなく上着の裾を掴み脱ぎ始めた。
そこにユイリちゃんから「えっ! ちょ、ちょっと待って!」とストップがかかる。
「どうしたんだ? ユイリ」
全員の視線がユイリちゃんに集まる。
王子も腕を交差して掴んでいた裾を下ろし、はてな顔で状況を見守っていた。
何もおかしい事はないはず。一体何をそんなに慌てているのだろうか?
「お兄ちゃんはお邪魔じゃないかな~って」
原因は俺なの? まったく心当たりないぞ。
「え、ユイリちゃんなんでそんなひどい事いうの……」
「……ん~」
へこみながら聞いてみるも、ユイリちゃんすごくいいにくそう。
「そうだぞ。こいつには少しでも多くの事を覚えてもらわないといけない。だからここにいてもらわないと困るんだが」
「……それはそうなんだけど~」
普段聞き分けがいいだけにサーニャさんも少し困り顔。
だからといって、娘のいう事を無視したりはしない。
「こいつに言えない理由でもあるのか?」
「うん、でもぉ」
そう言ってユイリちゃんはこちらをチラっと見たが、すぐに視線をサーニャさんに戻してしまった。
ううぅ……知らないうちになにか怒らせるような事でもしてしまったのだろうか……。
まぁ、このまま悲しんでばかりいられない。
まったく検討つかないが、ユイリちゃんの中で俺にいられちゃまずい事が実際あるのだろう。
のけものにされたようで少し寂しいが、ここは自分から出て行ったほうが早い。理由はいずれ教えてくれるはずだ。
「食器の後片付け当番が寝込んでいますし、今日は俺が変わりにやっておきます」
「……そうか。すまないな」
「お兄ちゃんごめんね。でもだーい好き」
ええ…幼女心わからない……
一人食卓へ戻り台所で食器を洗う。それを全部済ませ水気をふき取り、食器棚へお皿を戻していく。これだけの時間がたってもパーシャック王子の採寸はまだ終わっていないようで、工房から声は掛かってこない。
待っているだけの時間は手持ち無沙汰だ。採寸なんかしたことないから時間がまったく読めない。
どうしたものかと思案したのち、出た答えは二日酔いで寝込んでいる猫娘に何か胃に優しいものでも持っていってやるかということだった。
善は急げ。
残り物を使ったおかゆを手早く作り、シエラの部屋へ向かった。
昨晩の羞恥心のかけらもないフライング酔っ払い猫を思い出す。
あれはひどかった……。
だけどあんなのでも一応女の子であることには変わりない。
ドアをノックをして返事を待った。
…………さすがに寝入っているかな?
そうだとしたら申し訳ないが、自分自身の『トシャ物』で一大事ということもありえる。一応無事は確認しておきたいので「入るぞ」と声をかけてからドアを開け、シエラの安否を確認することに。
いつもどおりだらしない格好(全裸に近い半裸)をしていたが、ちゃんと寝息を立てていたのでひと安心。
余計な事はせずこのまま寝かせて置いてあげたほうがいいのかもしれない。
出て行く前にシーツはかけ直してやるか。お腹を冷やすとかわいそうだし。
おかゆと水の入ったコップをのせたトレイを手近なところに置いて、ベッドからずり落ちていたシーツを起こさないようにそっとかける。
最後にシエラの寝顔を確認すると鼻がすんすんと音を立て、動いている事に気づいた。
「んにゃ~…………誰かそこにいるにゃ?」
「悪い。起こしちゃったみたいだな」
「にゃ……でもちょうどいいところに来てもらったにゃ」
元気のよさが取り柄のシエラがこんなに弱弱しくなっていることに少々戸惑いつつ、近くにあった椅子に腰掛けて話を聞く体勢をとる。
「どうした?」
「…………き……う」
「ん??」
なんかボソボソ言っているが、まったく聞き取れなかった。
シエラも俺が聞き取れていないことに気づいたのか、手で来い来いと手招きしている。
さっきまでしゃべれていたのに一体どうしたんだ?
不思議に思いつつもベッドに近づいていく。
「大丈夫か?」
ベッドに腰かけると、加重でギシっと音が鳴った。
これだけの距離になっても手で来い来いと再度手招きをしてくる。
もっと近寄れと? ベッドの上でFace to faceをお望みなのだろうか?
さすがにそれはそういう関係になってからじゃないと――――って思って気を抜いた自分を恨みたい。
二日酔いで参っていたくせに妙な力強さを発揮したシエラに体を引き寄せられ、あげく体勢を崩されてしまう。そしてそのまま手際よく俺の服の襟を引っ張るとそ出来上がった空間に顔を突っ込んできた。間違いなく計画的な犯行。
「お、おい!まさかお前――」
そのまさかだった。
「えろろろろろろろぉぉぉぉぉ」
服の中が生暖かいもので満たされて行く………………
吐き終えたシエラが服から顔を出すと涙目ではあるが満面の笑み。
こんな事しておいてなんでそんな顔ができるの――
「うぷっ!」
とっさに手で口元を覆ったシエラのほっぺたが一瞬でリスみたいに膨れ上がる。
望まれぬ第二波の襲来で一気に緊迫する室内。
「んー」
俺の襟を掴んでどうする気だ。
まさかそれも俺の服の中に吐き出そうってわけじゃないよな?
シエラ、俺お前の事信じているからな――
「おろろろろろろろぉぉぉぉ」」
もう好きにして。




