(36)
光魔法石を受け取ったウィルは、首を傾げながら私を観察するように見てきた。
「砦に着た時と今では何故か雰囲気が変わりましたね。何かありましたか?」
眼に掛かっていた髪を掬いとられ、瞳を覗かれると胸がドキドキして後ずさってしまった。
「な、何も変わらないと思いますが?」
「かなり余所余所しいですよ。今も逃げましたし」
「そ、それは…」
好きと意識してしまった今は、ウィルの側にいるとドキドキしてどうしたら良いか分からないのだ。
「やはり呪を受け、私を嫌いになりましたか?」
ウィルは距離をとる様に離れると軽く息を吐く。
「私が側にいると、貴女の動きがおかしくなる」
「ウィル、それは…」
口ごもると、何を勘違いしているのか悲しそうな表情を浮かべ、貴女の護衛は別の人に頼んだ方が良いですかねと言い始めた。
「好きな人に嫌われてまで側にいるのは辛いですから、カイルにでも頼んであげますよ」
部屋を出ていきそうなウィルの上着を、思わず掴んだ。
「何ですか?同情とかならいりませんから、離して下さい」
振り払われそうになったので、きつく握り締めた。
「違うの嫌いじゃない!!ウィルが好きだから、どうしたら良いか分からないの!!」
「貴女が私を好き?」
自分から出た言葉に、口許を押さえて目を開いた状態で固まっていると、ウィルに抱き締められた。
「本当ですか?嬉しいです。レイティア」
抱きしめた状態でクルクルと回り始めた。
「きゃあ!ウィル、回さないで下さい」
抗議の声は聞こえないのか、しばらく回り続け開放される頃には目が回りフラフラして立てなかった。
「ウィルの馬鹿!もう、しらない!」
「すみません、あまりの嬉しさに思わず…」
最近の紳士な態度で忘れていたが、ウィルは嬉しい時などクルクル回ったりしていた。
「抱っこして部屋まで運びましょうか?」
「そんな恥ずかしいこと出来ません!」
立ち上がろうとして、バランスを崩し机に手をつくと小箱が机の上から転がり落ちた。
「何、この小箱?手紙もある…」
手紙を広げると母ソフィアからだった。
『レイティアに贈り物が届いたから送っとくわ。もう、レイティアったらウイリアム様やザガートさん以外にもモテモテなんだから、流石は私の娘ね』
送り主は分からないと書かれていたが誰からだろうと、蓋を開けようとするとウィルに取り上げられた。
「これは貴女が持って良い物ではありません」
ウィルは少しだけ箱を開くと黒い靄が少しだけ見えた。中には、リリスが言っていた石が入っているようだった。
「リリスの言っていた石?」
「その様ですが、話に聞いた以上の力を感じます」
険しい表情で箱を睨んでいる。
「調べて見ますが、絶対に貴女はこの石には触らないで下さいね」
預かります。とポケットに仕舞い、私に手を貸そうと手を伸ばすが、慌てて引っ込める。
「駄目でした。どのような影響があるか分かりませんから」
せっかく両思いになったのに残念ですと、私の手を見ながら呟いた。
触れませんが部屋まで送りますと着いて来てくれたが、ずっとご機嫌で鼻唄を歌いながらだった。
「ウィル、絶対にバラさ無いで下さいよ!」
「何故?言っても問題無いでしょう?」
「恥ずかしいから駄目!」
顔を赤くして言うと、何やら手をワキワキしながら葛藤している。
「あー!可愛い貴女を抱きしめたいのに、出来ないなんて石が恨めしい!」
自分の身体を抱きしめクネクネしているのを見ていると、なんか、間違った選択をしたかも…と思う。
ウィルを放置して用意された部屋に入ると、いつの間にか可愛らしい小物が置かれ女性が使いやすいようになっていた。
「本当にリリスに鍛えられたのね…」
容赦なく指導をされたであろう、研究員達を思うと少し涙が出そうになる。
ウィルに用意して貰った小物を整理していると、部屋をノックする音が聞こえた。
「はい。今開けますわ」
ドアの鍵を開けると、そこにはお茶のセットを持ったカイルが居た。
「カイル様?どうされたのですか?」
「お茶と菓子を持って来ましたので、如何です?」
「ありがとうございます」
部屋の中に入れるとテーブルに手際よく並べて行きながら、紅茶も用意してくれた。
「カイル様は、手際が良いのですね」
「自分でしないといけませからね。でも、ウィル様の方が手際も味も良いのですが手が離せないので私が来ました」
リリスの所にはザガートが持っていったと言う。
「何かありましたら遠慮なく言って下さい。リリスさんも遠慮なく言ってきてますから」
女性の部屋に長居するといけませんから失礼しますと、爽やかな笑みを浮かべ帰っていった。
仕事が忙しいので少し更新遅れるかもしれません。




