(37)
次の日リリスにお話しましょうと言われ、お茶をしていた所にエミリオ殿下がやって来たと知らせがあった。
一応、砦の管轄はエミリオ殿下なので訪問は仕方無いが、タイミングが悪すぎるし、何よりレイティアとしては会いたくない人物だった。
ウィルの元に行き小声で相談する。
「ウィルどうしよう。レナードは王弟殿下に会いに行ったことになっているのに…」
「エミリオが変な事を言ったら殴りましょう」
「そんな事して大丈夫なの?」
「問題ありません。………」
ウィルが急に黙ったので何だろうと思いウィルの方を見るとチュッと頬にキスをされた。小声で話す為に距離が近い状態だったから、ウィルがわざとキスしてきたようだった。
された瞬間、後ろに飛び退いてしまったが、誰にも見られてなかったのでホッとする。
キスした張本人は満足そうに微笑んで立っているので、軽く睨んでやった。
取り合えず、エミリオは今回の件で何やら話があるとの事だったので、部屋に来て貰ったのだが、部屋に入るなり驚きの声を上げた。
「なんで此処に君がいるんだ!?薔薇姫!!」
薔薇姫?誰の事だろうと全員が首を傾げる。エミリオの目線を辿るとリリスだった。
「わたくし?未だかつてその様な呼び名で呼ばれた事はありませんわ」
「それはそうだろう。私が勝手に呼んでいるだけだから」
昔にザガートと間違えて告白してきただろうと、リリスに向かって言う。
「その様ですわね。私はついこの間、間違えに気付いた所です」
申し訳ありませんでした。っと少し恥ずかしそうに扇で顔を隠して答えるリリスにエミリオは気にするなと笑う。
「薔薇を持って告白してきた、かわいい姫にハートを奪われたのに、ザガート宛の手紙がったからガッカリはしたが、もう一度会え嬉しい」
「まあ、お上手ですのね」
お世辞ではないと言うエミリオに、リリスは別の話を振る。
「エミリオ殿下、何か話しをしに来たのではありませんの?」
「ん?ああ、そうだった。私は叔父上の使い走りでは無いのだが、これを届けに来た。レナードとザガートの姿が見えないが、何処にいるのだ?」
ヤバイと思ったが、ウィルがすかさず二人は仕事手が離せませんので私が預かります。と返答したので殿下はそれ以上何も言ってこなかった。
もうレナード達の事より目の前のリリスが気になって仕方無く、書類を渡すとリリスに話し掛け始め、こちらの事は眼中に無いようだった。
ウィルが頼んだのは、神隠しにあった令嬢達への聞き取りだった。
確かに記憶が曖昧で覚えて無いようだったが、少し記憶がある者もいた。
話す事を許否する女性が殆どの中、自分の名前を出さない事と、名誉が傷付かないようにする様にしてくれるならと一人の令嬢が話をしてくれたと、それの報告書だった。
内容は、気付いたら見知らぬ場所に寝ていて数人の男性に囲まれていた事。裸にされ純潔かどうか確認され、違うと魔力を吸いとられて街に置き去りにされた事が書かれていた。
「何故、純潔を確認されたのでしょう?しかも魔力を吸いとるとは…」
意味が分かりませんと首を捻るウィルの隣で、レイティアは何かの書物で見た事がある様な気がして、レナードの部屋へと向かった。
魔物や歴史の本が並んでいる本棚の前で、どの本だったかとパラパラと捲りながら探していく。個人の本棚とはいえ五十冊以上あるので探すのは用意ではない。
「何を探しているのです?」
「あの報告書に書かれていた事と同じ様なのを読んだ事があるような気がして」
ウィルも探してくれたからか、似たような事が書かれている歴史書を見つけ出した。
隣国マジェリの大昔に、人の命令に従順に従う魔物を大量に造り出したと言う方法が書かれている本だ。
魔力が強い純潔な乙女のみ魔物を産み出す事が出来るが、しかし魔物を数匹産み出すと精神を病んでしまうため、当時は奴隷を使ってしていた。それでも効率と魔物に魔力供給の問題が有り、実用化まではいかなかった。
「なんて最低で酷い事をするんだと思って印象が残ってたの。もし、この実験をしてるのなら帰ってきてない娘達が危険」
「帰って来てないのは5人。早く救出しなければなりません」
貴族の令嬢が狙われたのは魔力が強いからだろう。平民になるほど魔力は弱くなるから。
「奴隷制度が無くなったから、我が国に目をつけたのでしょうか?」
「それも有りますが、マジェリ国は魔力が低下しているからでしょう」
ここ十数年の間に魔力の低下や持たない者が増えて、今でも魔力が強いのは王族やそれに親い者達だけだった。
「婚姻も魔力が強い同士でしても、産まれてくるのは弱い子供みたいです」
「それだとしても、マジェリは何を考えているのでしょう…」
「とにかく救出するにしても情報を集めないといけません。貴女も何か気付いたら教えて下さい」
数冊の本を持って部屋をでた。
そう言えばリリスとエミリオはどうしてるのだろうと、部屋を覗いてみると、まだ話しているようだった。
リリスの返事は少し冷たいようだが、エミリオは気にせず話を続ける。リリスもまたエミリオの魔法談義の話を真剣に聞いていた。
「リリスさんは魔法の研究してるから、エミリオと話が合うのでしょう」
「そうですね。エミリオ殿下も魔法研究してますからね…。でも、マニアックな話についていけるリリスも凄い…」
「そっとしときましょう」
お互い調べものをする為に、別れ部屋へと戻った。




