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ルージス侯爵邸の前で、何やら数人が揉めている様だった。

「ザガートもいるみたいだが、やはり何かあったようだな」

「その様ですね。ですが、緊迫した感じでは無いですね」

近寄ってみようかと歩み寄ってみると、主にザガートと、何処かの令嬢が揉めていた。


「そろそろ、私も砦に帰らなければならないので、貴女も帰って下さい!」

「いいえ!ザガート様が考え直して下さらない限り帰りませんし、帰しません‼」

令嬢はザガートの服を掴んで離さないようだった。


「リリス様、ザガート様にもお仕事が御座いますので、そろそろ…」

「お黙りなさい‼幼少の頃に約束した事を認めて頂かなければ、次はいつ会えるか分からないのですから‼」

ザガートの服を掴んで離さないのは、男爵令嬢のリリスだった。

「だから、昔から言っているでしょう!そんな約束はしていないと‼」

「まあ!そんな事を言って無かった事にするおつもりですか!」


口を出したくないが、連れて帰らないとならないので話しかける。

「何を揉めているんだ?」

「隊長!助けて下さい!」

「助けて下さいとは、どう言う事ですの!!」


落ち着けと声を掛けて、何故揉めているのか詳しい話を聞く。

リリス嬢の話では、幼少の頃に結婚の約束をしたのに、全然手紙の返事はくれないし、会ってもくれなかったと言う。

「だから前から言っている通り、私はそんな約束をしてません‼」

「取り合えずリリス嬢、何歳頃で、何処で約束したか覚えてますか?」

「覚えてますわ!私が10歳で、ザガート様は12歳の頃です。場所は王宮の側の広場です!

初夏の頃で、恥ずかしすぎて顔を見る事が出来ませんでしたが、薔薇の花を差し出して告白したんですわ」

「だから、私は貰ってない!」


リリス嬢は渡したと言うが、ザガートは貰ってないと言う。

広場で薔薇ね…。女性から告白は少し珍しいし、薔薇を渡して告白とは情熱的だな。

そう言えば昔、子供だったが一度だけ見たことあるな…。


「ん?リリス嬢、もしかして渡した薔薇の色はピンクだったか?」

「そうです。ピンクでしたわ」

「薔薇にピンクのリボンを巻いて?」

「あら?よくご存知ですのね。渡すときに、恥ずかしくて俯いている私の手を包んで、薔薇を受け取って下さったんですわ」


…………何だろう。その現場を見た覚えがある。

ただし、受け取ったのはザガートじゃない。

「リリス嬢、言いにくいのだが、貴女が薔薇を渡した相手はザガートじゃ無い…」

「まあ!貴方までそんな事を仰るの!?嘘を庇うなど信じられませんわ!」

「いや嘘では無く、渡した相手が違う。貴方が渡した相手はエミリオ殿下だ」


確かあの日、城で勉強して帰る時、殿下が途中まで送ると言って3人で歩いていたが、ザガートが忘れ物をしたと戻って行った時だったと思う。薔薇の花を持った女の子が寄って来たのは。

下を向いたまま突然、告白して来て薔薇の花を殿下に差し出した。


「あの時の少女は名乗らなかったし、相手の名前も言ってない」

「そんな…。嘘ですわ…」

「確か『僕を好きと言ってくれて嬉しいよ。手紙を書いてくれたら、必ず返事を書くから』何て事を言ってたはず」

「そうですわ。その後ギュって手を握って下さって…。イヤーーーーー!!!!」

リリスは、絶叫して動かなくなってしまった。

「リリス嬢大丈夫ですか?」

「そんな…だから、お返事も来ないし…違うと言われ続けたのですわね…」

キッと顔をあげたかと思うと。

「ザガート様、申し訳ありませんでしたわ。全て私の間違いで私の愛が伝わって無かったなんて、今度改めて告白して振り向かせますわ‼」

そう宣言してお供を連れて帰って行った。


「嵐の様な令嬢だったな…」

「付き合ってあげたら宜しいではありませんか?」

「ウィル他人事だと思って…。それに、私は愛してる方がいます」

「レイティアは相手にしてないですよ?だったらリリス嬢と結婚した方が良いと思いますが?」

勝手な事を言うなと、バチバチと喧嘩を始めたので止める。

「止めろ!そろそろ帰らないと砦に着くのが真夜中過ぎるぞ」


そう言うと2人は止めたのだが、砦へと帰る間、無言でにらみ合いを続け始めた。

「そうだ、ザガートに聞きたいのだが、黒づくめの男達と聞いて何か覚えがないか?」

「黒づくめですか?…魔物騒動の時に近くの街に出入りしているとされてましたが、関係無かったと報告受けてますが」

「その報告書はまだ有るか?」

密偵達が色々調べた物がありますが、気になる点は有りませんでしたよっと言われるが、魔物騒動に関係無くとも、もしかしたら何か分かるかも知れない。

「急いで帰るぞ‼」

「待って下さい。隊長‼」


***


砦に急いで帰ってきたが、着いたのは夜だった。

「遅くなってしまったな。疲れてるとは思うが、ザガートさっきの報告書を見せてくれ」

「急ぎですか?分かりました。少しだけお待ちいただけますか?」

「頼む」

着替えたのち部屋に持ってくので待ってて下さいと言われたので部屋に戻ろうとすると、ウィルに呼び止められた。

「隊長、例のネックレスはしてますよね?」

「してるが、何かあったのか?」

「してるなら良いのですが、風呂や寝る時も外さない様にして下さいね」

呪がかかりやすくなってるので、絶対外さないで下さいねと良いながら研究棟に戻って行った。

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