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砦に戻って数日がたった。
ザガートに渡された報告書を見ても、黒づくめの男達は特に不審な点は見付からなかった。
「う~ん。気のせいだったのか?」
報告書を見つめながらタメ息をついていると、背後に人の気配を感じ振り返りながら拳を突き出すが、受け止められてしまう。
「ウィル何故気配を消して近付く?しかも、いつ入って来た?」
「ノックはしてませんが、先程入って来ました。気配を消すのは前にも言いましたが、驚く顔が楽しいからです‼」
「悪趣味だな!何しに来た!?」
「酷いですね。せっかく神隠しの件と男達についての報告書を持ってきたのに」
手には報告書らしきモノを握っていた。
取ろうと手を伸ばすが、ウィルは手を上に上げて渡してくれない。
「これを調べるのに苦労しました。ご褒美は頂けるのですよね?」
「仕事だろうが!」
「仕事の範囲を越えてます。ご褒美が頂けないのなら渡しません」
渡せ、渡さないのやり取りで揉めるが、ウィルが今の状態で抱き締めてキスしたら、どうなるのでしょうとニヤリと笑ったので、こちらが折れる事にした。
「分かった…。褒美を用意するから、報告書をくれ」
「本当ですね?二言は有りませんね?」
「二言はない。だから寄越せ」
では、こちらに受け取りのサインを下さいと言われ良く見ないでサインしてしまった。
「これが報告書になります。レイティアとデートとキスのご褒美が楽しみです!」
報告書をめくりながら見ていると、ウィルが変な事を言っているのが耳に入った。
(今なんと言った?キスとか聞こえたが、聞き間違えか?)
「変な事が聞こえたが…」
「契約書にサインしたのですから、守って頂きますからね!」
ウィルの手の契約書には、確かにデートとキスと書かれており、自分のサインが書かれていた。
「受け取りのサインと言っただろう!騙したな!」
「良く見ない隊長が悪いんです」
ウィルは取られないように、素早く上着の中に仕舞う。
「ああ、そうそう調べてみて気になる事がありましたよ」
報告書を開きながら説明されたのだが、黒づくめの男達が街にいる日に、神隠しがおこっていると言う。
「偶然かも知れませんが」
街の報告書には神隠しの件は書かれてないが、王都で神隠しがあった日か翌日に現れている。
「いや、偶然じゃ無いだろうな…。この事を陛下や王都の衛兵に知らせて調べてもらうか…」
砦近辺なら手出しは出来るが流石に管轄外には手出し出来ないだろう。
「衛兵に言った所で、何も出来ないのがオチでしょう」
出来てたら、もう解決してるはずですし。と言われ確かにと思う。
「じゃあ報告後に、街の方だけでも詳しく調べるか…」
「王都も調べて動きたいのなら、私に頼まれたと言えば良いのでは?」
「何がウィルに頼まれた何ですか?」
ドアを開けながら入ってきたザガートが聞いてくる。
ウィルが王弟殿下なのは教えて無いので、なんと説明しようかと思っているとウィルが説明始めた。
「呪術関連の書です。専門知識が無ければ取り扱い出来ないでしょう?私に頼まれたと言えば、受けとる事が可能だと思いまして」
「本人じゃ無いとダメだろう。ウィルが取りに行けば良いのでは?」
何とか誤魔化せた感じになった。
「隊長に指示された通りに、街に密偵を送り込みましたが、何の意味があるんです?」
「神隠しの話は聞いた事が有るだろう?その件に黒づくめの男達が関係してるみたいなんだ」
ウィルの報告書をザガートに渡すと、ペラペラと読んでいく。
「……そのようですが、何故黒づくめの男達が怪しいと思ったのでしょうか?」
「呪術を使っている者は、微かながら黒い靄が見えるのです。それをこの間見かけたので調べたのですよ」
靄が見えるのは、術者の中でも上位の者だけですが。とザガートに説明していく。
「上位の者だけ。見える者を潜伏させる訳にはいかないのですね」
「兎に角、黒い服を着ているみたいだし、不発に終わっても構わないから調べてくれ」
分かりましたと2人は返事をしてくれた。
それはそうと、書類を突き出してきた。
「確かに気にはなりますが管轄外ですので、通常業務をきちんとこなした上で調べましょう。魔物騒動以降、仕事がたまっていますので」
書類に判子を押してくれと、大量に渡される。
「…大量だな。わかった。通常業務に障らぬように調べよう」
「では隊長、私も研究があるので失礼します。何かあった時は呼んで下さい。私も分かった事が有ったら報告します」
ウィルが部屋を出ていった。
「神隠しで思い出しましたが、この間帰った時に侍女達が噂してましたが、神隠しに有った令嬢は、共通の宝石を持っているとか言ってましたね」
「宝石?何の宝石か分かるか?」
「そこまでは聞いてないです。あくまでも噂なので信憑性は有りません」
令嬢は宝石の類いは、一杯持ってますからね。と言いながら調べておきましょうと言ってくれた。
調べるから、判をさっさと押して下さいと指をさされた。
「今は判を押すのが優先事項ですので、押して下さい」
次から次へと書類を持ってこられ、しばらくの間は一日中判を押す日々が続いた。
そんななか、リリスが神隠しになったと連絡があった。




