(26)
ザガートと別れ、ウィルとの待ち合わせ場所に向かう。
確かこの辺りだったと探していると男性達に囲まれてしまう。
「何処に行くの?僕たちと遊ばない?」
「すみません。人と待ち合わせをしているので」
「僕達は怪しい人物じゃないよ?僕らの父親達は男爵位をもらってるし」
確かに身なりはしっかりとしていて、男爵家の子息達だろうと思う。
「1人で歩いてると危険だよ」
かなりのしつこさにイライラすると、胸がチクリと痛んだ。
「…っ!」
思わず胸を押さえる。
その時にウィルが現れた。
「彼女に何かしたんですか?」
苛立ちを含んだ声で相手を睨む。
「ウィル様、違うの!声は掛けられたけど、何もされてません!」
「そうだよ。僕達は1人でいると神隠しに会うかも知れないから声を掛けただけで何もしてない」
相手が来たなら問題ないなと言いながら、逃げる様にいなくなる。
「何もされてないのに、痛そうにしてたのは何故ですか?」
「ちょっとだけ胸がチクリとしただけで、もう痛みは有りません」
真剣な顔付きになった、ウィルに肩を捕まれる。
「胸が?どこですか?」
「えっと、左胸ですけど…」
「痛みは今だけですか?他に異常は有りませんか?」
「痛みは今チクリとしただけで、異常と言われても…。少しアザがあったくらいで…」
急いで王宮に行きますよ!と手を引っ張って行く。
「ウィル様どうしたんですか?」
「迂闊でした。あの時完成してなかったとは言え、呪いが貴女の体の中に刻まれてたようです‼」
急いで王宮に着くと、自分の部屋へと連れて行き椅子に座らせる。
「嫌かも知れませんが、アザを脱いで見せて下さい!」
真剣な表情のウィルから、呪いが深刻なモノだと分かった。
恥ずかしかったが、先程から左胸に違和感があるので承諾する。
「わかりました…」
胸元のリボンをほどき胸を見せる。
アザは朝見たときより濃く大きくなっていた。
「アザが濃くなってる…」
「すみませんが、触りますよ」
ひんやりとしたウィルの手がアザに触れた瞬間胸に痛みが走る。
「痛っ!」
「思ったより酷いですね。光で浄化するとしても中から出さないと…」
ウィルが悩んでる間にもアザは徐々に広がっていく。
人に知られてしまったからなのか、呪いが急速に広がりを見せる。
「ウィ…ルさ…ま、苦し…い」
アザが熱を持ち痛みと苦しさが襲ってくる。
「レイティアしっかりして下さい!」
苦しそうなレイティアをベッドに運び寝かせる。
光魔法の水晶をレイティアに握らせ、魔法を発動させると水晶から光が溢れ始めた。
一旦、アザが薄くなってくが、奥に入り込んだ呪いは抵抗するかの様に、レイティアを蝕みまた濃くなり浄化出来ない。
「仕方無い‼」
ウィルはレイティアの胸にある、アザに手を置くとラスがしていた様に、胸を掴み呪いを外に出すための呪文を唱える。
奥まで入ってしまっている呪いは拒否するかのように、レイティアを苦痛が襲う。
直接、レイティアの胸のアザに口付けをし、吸い出すようにしてみると効果が見られる。
口付けた状態で呪文を唱えると、黒い靄が徐々に外へと出てくる。
出てきた靄は、光によって浄化されていく。
全部出てきたのを確認するために、胸を触るが穢れは見付からなかった。
「ふぅ…、これで大丈夫でしょう。レイティア大丈夫ですか?」
返事がなく心配して見てみると、レイティアは気を失っていただけで、呼吸は落ち着いていた。
「気絶しても仕方無いくらいの苦痛を伴った筈ですから…」
頑張りましたね。と衣服を整えた後に、額にキスを落とす。
気を失ってから数十分後に目を覚ますと、ウィルが心配している顔で除きこんでいた。
「ウィル…?私は一体?」
「良かった‼呪いは解けましたので安心して下さい。覚えてますか?」
「この部屋でウィル様に触れられたのは覚えてますが、それ以上は覚えて無いです」
覚えて無いのならそれで構いません。とウィルは頭を撫でてくる。
ウィルに撫でられると気持ちが落ち着いてくる。
「陛下の元に行けそうですか?」
「はい。もう大丈夫です。ウィル様ありがとうございました」
陛下に目通りを頼んできますから、座って待ってて下さいと部屋を出て行った。
本当に呪いが消えたのかなっとリボンをほどき、胸元を見ようと少しはだけた時だった。
ノックも無しにエミリオ殿下が入ってきた。
「叔父上に確認したいこ…」
少ししか開けて無かったから、谷間が見える位だけだったと思うが鼻血を垂らし始めた。
「何で君が?」
胸元を押え、出てって下さいと言うが、こちらを凝視しながら動こうとしない。
恥ずかしさから、しゃがみこむ。
「何をしてるんです?エミリオ?」
怒気を含んだウィルの声が聞こえたと思った瞬間、エミリオがゲンコツを食らっていた。
「痛‼何もしてないぞ。部屋に入って来たらレイティアの胸が見えただけだ!!」
叔父上の部屋で何をしてたんだと、逆ギレしてくる。
「陛下に会うので服を直そうとしてたら、ノックも無しにエミリオ殿下が入ってきたんです」
「ノックも無しに?やはりエミリオが悪い!」
もう1回殴るとエミリオ殿下が文句を言い始めた。
「とにかく服を直すから2人出てって下さい‼」
と言うと、ウィルがエミリオの首根っこを掴みあげて出て行った。
呪いの確認をした後、服を急いで直してウィルを呼ぶ。
「エミリオには説教しときましたので、かわりに謝ります。済みません」
「ウィル様が謝らないで下さい。呪いを確認しようと思った私も悪いので…」
陛下も待ってるので行きましょうかと促され、陛下達が待つ部屋まで案内された。
「わざわざ来て貰って済まんな」
陛下と王妃様が部屋で待っていた。
「まあ、貴女がソフィアの娘のレイティアね。会いたかったわ」
王妃様はレイティアの手を取りブンブンと振る。
「王妃よ、困ってるだろう?礼を言うために呼んだのだから離してあげなさい」
「あら、ごめんなさいね。私も会いたかったから、つい」
席に座るように勧められた。
「君が色々と調べてくれたから、今回の被害を少なく騒動を鎮める事が出来た。礼を言うぞ」
「いえ、私はウィル様に付いていっただけで何もしてません。むしろ足を引っ張ってしまったくらいです」
礼を言ってもらうような事をしてないと言うと、ウィルが否定する。
「レイティアが動かなければ、私も真実にたどり着くまで時間かかったでしょう。やはり貴女のお陰ですよ」
笑いながらレイティアを見つめる。
「ねぇ。レイティア貴女好きな人はいるの?」
「好きな人ですか?誰もいませんが…」
「じゃあ、ウィリアムはどうかしら?」
「ウィリアムはレイティアを気に入っているようだし、嫌じゃなければ結婚してはどうだろう?」
陛下と王妃様に言い募られる。
「兄上、義姉上いきなり何を言い出すのです!彼女が困ってるでは有りませんか」
お前が人と接するのも珍しいが、彼女と一緒だと良く笑うからな。と陛下が言う。
「確かに私はレイティアを愛してますが、無理強いをするつもりは有りません」
突然の告白にビックリする。
「ウィル様…。でも、私…」
「分かってます。だから待ちますよ。でも、私が愛してることを覚えてて下さい」
そんなやり取りを陛下と王妃様は、にこやかに笑いながら見ていた。




