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砦の方角に順調に進んで行く。
「乗り心地は良く有りませんが、これなら早く着けそうですね」
まあ、このライルは人を乗せてるのに、ジャンプしたり足場の悪い所を走ったりするのだ。
褒められたと思ったのだろう「チュー」と嬉しそうに鳴く。
その鳴き声に反応したのか、地底生物が集まってくる。
「本当に主なんですね。凄い光景です…」
ウィルは、若干顔を引きつらせて下を見ている。
その時洞窟の奥から、少し甘い不思議な匂いが漂って来た。動物達が警戒色を浮かべ洞窟の奥を見つめる。
「不味いな。こんな時に魔物が出るなんて」
ライルが鳴くと戦えない物達は物陰に隠れ、鋭い牙や爪を持つ物達は前に出て戦闘体勢をとる。
徐々に匂いが強くなり、花の様な魔物が近付いて来た。
「あの魔物が居るから訓練場所にして、粗方退治したと思ったのだが、残っていたか…」
手を上に翳して光の刃を生み出し魔物目掛け放つと頭に刺さった。
魔物が怯んだ瞬間を地底生物達は見逃さず、一斉に攻撃し始め退治した。
「動物にしては凄い連携ですね」
研究者の顔になっているウィルに、カイルが教育していた事を教える。
「それは興味深いですね。後でカイルに聞いてみましょう」
魔物がいなくなったので砦で向かってもらう。
その後は魔物など出てくる事がなく、無事に辿り着けた。
「ライルありがとう。助かった」
1日掛けて歩かなければならない距離を、数時間で移動出来た。
レナードが礼を言って顔を撫でると、ひと鳴きして帰っていった。
「ここから砦までは歩きになるが…、ウィル大丈夫か?」
少し酔っているウィルに声を掛ける。
「大丈夫です。多少酔いましたが直ぐ回復します。隊長は大丈夫なんですか?」
問題ないと答え、出口から人影無いか確認して外に出る。
自分達から少し獣臭がしているので、洗浄魔法を唱え、匂いと汚れをキレイにした。
周辺を警戒しながら進んで行くと、砦が見えてきた。
近くには、城の兵や近衛が集まっているのが見える。
「陛下達は無事に着いただろうか?」
「地下道のお陰で多分私達の方が先に着いたと思いますが、中に入らなければ分かりません。隊長くれぐれも私の事は内緒にして下さいね」
身分は隠したいのだと言う。
砦に近付くと、警戒した見張りの兵が寄って来たが、ウィルの顔を見て執務室に通された。
部屋の中にはザガートとカイル達がいた。
「ウィル!今まで何処に行ってたんですか!?」
「貴方がラシア城に隊長を拘束するように言ったから、隊長は…」
ウィルは、少し疲れているような二人に責められる。
後ろから顔を出すと、ザガートが気付き頭を下げてきた。
「申し訳無い。必ず助けると言ってたのにこんな事になってしまって…」
助けられなかった悔しさからなのだろうか、握られた拳はきつく握り締められ震えていた。
「ザガート、私だ。レナードだ」
「え!?ご無事だったんですか!どうやって助かったんですか!その格好はいったい!?」
「落ち着け。ウィルに助けられた」
ウィルの手引きて脱出したことを説明する。
「死んだと思われているならと、ウィルの提案で妹の振りをしてここに来た」
ザガートとカイルは安堵からか椅子に座り込んだ。
「隊長とウィルは今まで行動を共にしてたんですか?」
「違いますよ。私はレイティアと一緒に行動してましたので」
何故か挑発気味にザガートを見ながら答えている。
「何故、ウィルと一緒に行動してるんですか!?」
「泣いてたので手助けしたんですよ」
「だからと言ってウィルと一緒なんて、意味が分かりません‼」
二人が火花を散らしているので窘める。
「妹なりに私を助ける為に行動した結果だ。誰と一緒だったかなど関係無いし、ウィルも喧嘩を売るような言い方は止めろ」
二人に、掻い摘まんで今までの事や、知り得た情報を話す。
「そうだったんですか。そのラスと言う男は、裏切り者と特徴が一致してます。偽名だったのが判明してますので間違いないと思います」
裏切り者は、第1連隊のラッツと名乗っていた男だったと言う。
赤毛でソバカスがある男で、自分のミスで、カイル達に怪我をさせてしまったと言っていた者だった。
「わざとミスをして怪我人を作ったのでしょう」
動ける者が少なければ、行動しやすいと思っていたのだろう。
「妹君に助けられました。怪我の回復を待っていたのでは、こうは動けませんでした」
予定が狂って動けなかったようだと説明された。
「しかし砦の奪還等、仕事が早くて助かった。ザガートやカイル達には感謝する」
レナードは頭を下げる。
「約束しましたから。貴方を必ず助けると」
「連隊長として責任を果たしたまでです」
だから、頭を上げてくださいと言われた。
「それで彼女は無事なんですか?」
「無事だ。安全な場所に隠れさせている」
しばらく自分はレイティアの振りをするから、他の者には秘密にするように指示する。
「分かりました。しかし…隊長も美人だと思いますが、妹君の様な可憐な感じが有りませんね」
カイルがマジマジと見ながら言ってくる。
「当たり前だ。双子だから似ていたとしても、同じでは無いのだから」
お互い情報交換をし終えた時、陛下や殿下が到着した。
「距離からいって私達の方が先に着くはずなのに、何故おじ…」
言い終わる前にウィルに塞がれる。
「今の私はただのウィルです。くれぐれも叔父上と呼ばないで下さい。兄上も大将軍も宜しいですね」
ウィルに睨まれた3人は黙って頷いた。
「こっちは山道を爆走してきたのに早かったですね」
「そうだぞ。ルドラ大将軍の容赦無い強行軍だったのに!」
まさか自分達にきつい道を寄越したんじゃないのか?とエミリオ殿下が騒ぎだした。
「おや?殿下はネズミの出る道がお好みでしたか?」
ネズミが大っ嫌いなエミリオは青い顔をして黙りこむ。
「ネズミ?地下道を通って来たんですか?」
「そうです。カイルが調教したと言うライルの背中に乗ってきた」
ネズミの背に乗ったと聞いて、エミリオ殿下は気絶してしまった。
情けない息子は、そこら辺に転がして置いて構わないと陛下の言葉で、部屋の隅に寝かせておく。
「連携の攻撃も見事でした。後で、どう教育したか聞かせて下さい」
陛下やルドラ大将軍も気になるようだったが、今は目の前の問題を解決するべく、話し合いを始めた。




