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陛下達と分かれて王都の南側に位置する村に向かっていた。
「あと数分で村に着きますので、そこでレナードに戻って頂く事になります…」
「わかりました。…ウィル様どうかしましたか?」
村が近くになった所で、ウィルの様子が可笑しい事に気付いた。
「何でも有りません」
そう言うが、ウィルの顔色が良くない。
馬から落ちない様に振り返り、ウィルのおでこに手を当てると熱があった。
「熱があるじゃないですか!」
「これ位大丈夫ですよ」
ウィルの両頬を手で挟む。
「駄目ですよ!酷くなったら大変です。村に着いたら少し休みましょう‼」
ウィルは警護の為に、ここ数日寝て無かったのだろう。
人より睡眠時間が少なくて大丈夫だと言うのは嘘で、疲れから熱が出たみたいだった。
どうにか村まで辿り着けたので、宿があるか聞いてみる。
「すみません、この村に宿はありますか?」
声を掛けた老婆が親切に宿の場所を教えてくれた。
村の宿はこじんまりしているが、清潔でキレイだった。
部屋に入り、すぐにウィルをベッドに寝かせる。
「苦しくは無いですか?回復魔法を唱えますが、今日は安静にして下さい」
実は回復魔法は万能ではない。回復を早めて治すので、病状によっては安静にしなければならない。
「すみません。貴女を守ると言いながら手を煩わせてしまって…」
「大丈夫です。今日はここで休みましょう?」
ウィルの額に手をかざし魔法を唱えると、浅かった呼吸が通常に戻っていく。
「後は少し寝て下さい」
疲れもあったのだろう、ウィルは直ぐに寝てくれた。
ウィルが寝たあと、食糧などを調達したりした。
村の人は全員親切で色々とオマケしてくれ、買ったもの以上の荷物になってしまった。
「これ位あれば良いかしら?」
宿に戻り荷物の整理をする。
一段落つくと、借りた部屋にはベッドが1つと、椅子とテーブルしか無い事に気付いた。
「どこで休みましょう?」
椅子でとも思ったが、今後の事を思うとしっかり休んだ方が良い。
ウィルが寝ているベッドは、かなり広く作られているので、もう一人寝ても余裕がありそうだった。
「どうしよう…。一緒に寝ても大丈夫そうだけど…流石に、女の姿の時に一緒に寝るのは…」
ウロウロと部屋の中を歩くが、それ以外の方法が無い。
「他に部屋を借りれないし、仕方無いよね…」
ウィルは目を覚ましそうに無いので、ベッドの端で寝ることにする。
お邪魔しますと声を掛けて、ベッドに潜り込むと、レイティアも眠りに落ちていった。
…………
………
……
朝になり辺りが明るくなった頃、ウィルは目を覚ました。
微睡みの中で、心地よい温かさと重さがある事に気付き、何だと思い視線を動かすと、レイティアが隣で寝ていた。
「!!!」
微睡みから一気に覚醒し、驚きのあまりベッドから落ちてしまった。
その音でレイティアも目覚めたのか、目を擦りながら起き上がる。
「ウィル様…?」
「何故、貴女が一緒に寝ているのです!?」
顔を真っ赤にして聞いてくる。
「他に休む場所が無かったので…」
それはそうかも知れませんが、男性の寝ているベッドに入るのは頂けません‼と怒られた。
「私だから良かったものを、他の男性でも同じことをするつもりですか?」
「他の男性?」
誰の事をいってるんだろうと考えていると、エミリオやザガートとかですと言われた。
「エミリオ様は嫌ですけど、ザガート様なら大丈夫そ…」
「駄目です!!男は狼なんですから気を付けなさい!」
「そう言えばウィル様、体調はどうです?」
「貴女の魔法と一晩寝たので回復しました」
本当に熱が下がったか確かめる為に、おでこをくっつけると、ウィルの顔が更に赤くなる。
「熱は無さそうですね。顔が赤いですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫です。そろそろ出発しないといけないですから、準備しましょう」
私は一旦部屋を出ますねと、ぎこちない動きで出ていった。
男に戻る為に夜着を脱ぎ、布で胸を潰し昨日着ていた濃紺のドレスを着る。
深呼吸をして気持ちを切り替え、レナードに戻る。
「ウィル、準備が出来た。入ってきて大丈夫だ」
声を掛けると、いつの間にか着替えたウィルが入ってきた。
「本当に見事な切り替えですね。失礼ですが胸はどうしたのですか?」
「布を詰めてある」
ウィルに昨日のうちに必要な物を用意して置いた事を告げる。
「ありがとうございます。隊長、馬に女乗り出来ますよね?」
「出来る。一番最初に砦に戻った時もそれで行ったからな」
「では、馬を用意しましょう。二人乗りだと遅くなりますから」
昨日は村に泊まる予定が無かったから急ぐ必要がある。
「どこを通って行く予定なんだ?」
「この道を行くつもりだったのですが、封鎖されている可能性があるので、こちらでしょうか?」
地図を広げ指をさしながら説明する。
その道を行くとなると、2日掛かってしまう。
「馬が使えないが、ここを通れば時間を短縮出来ると思うが」
地図に載ってない場所を指す。
「そこに道は無いですよ?」
「地下道だからな。訓練で使った事がある」
正確には地下道では無く地底生物の獣道兼住みかなのだが、砦の近くに出る事が出来る。
「ただ、ウィルはネズミは平気か?」
「別に平気ですが、地下道に出る感じですか?」
「ああ、苦手なら通ることが出来ないだろうな…」
連れていけないので馬を預け、地下道を通る時に必要になるかも知れない干し肉を追加して買う。
「何か意味があるのですか?」
「一応な。使う事になるかも知れないから…」
ヤツが出てくるだろうしと心の中でつぶやいた。
村から徒歩で地下道まで移動し、山肌の割れ目から中に入っていく。
「ここから行けるのですか?」
「ああ、何ヵ所か出入り口があるが此処が一番広いからな」
天然の階段を降りると、かなりの広さがある空間になっていた。
地下道は当たり前だが暗く何も見えないので、光魔法で周辺を照らし出すと、光に慣れない地底生物は驚き逃げていった。
しばらく砦の方角に向かって歩いていると、【ドドドド】と大きな足音が近付いて来る。
「何の音です?」
ウィルが警戒して辺りを見回していると一匹のネズミが姿を現す。
「何て大きさです!?」
現れたのは高さが2mを越す大きさの白いネズミで、鋭い爪を持っていた。
ウィルが剣を抜こうとしているので止める。
「大丈夫だ。ライル伏せ‼」
レナードがそう言うと、ネズミが伏せをする。
「こいつは、この地下道の主だ。訓練の時にも出てきたんだが、カイルに懐いてしまってな」
いつの間にか調教してしまった様で、とにかく訓練の度に出てくるようになってしまったため、ここで訓練しなくなった。
「大丈夫なんですか?」
「問題ない」
荷物の中から干し肉を取り出して、ネズミに与えると嬉しそうに食べ始めた。
「干し肉はこのためだったんですね」
「ああ、カイルが居ない時にエサを与えないと追いかけられるから、必要なんだ」
エサが無いなら遊べと、追いかけられていた隊員達を思い出す。
ネズミのライルは遊んでいるつもりなのだろうが、巨大なネズミが追い掛けてくるのは恐怖しかない。
話している間に食べ終わったのだろう、ネズミのライルが顔を寄せてきた。
「食べ足り無いのか?」
干し肉を出そうとすると違うと首を振り、背中を向けて乗れと手を動かしてくる。
「乗せてくれるらしいが…、どうする?」
「早く着くなら乗せて貰った方が良いと思いますが、本当に大丈夫なんですか?」
信用して良いのかウィルは悩んでいるようだったが、カイルの調教は完璧だったから大丈夫だろう。
「時間が無いし乗せて貰うか。何かあったら戦えば良いし」
悩んでいるウィルを連れて、ネズミの背中に乗り砦の方角に走るよう頼むと、ライルが走り出した。




