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⑰

陛下達と分かれて王都の南側に位置する村に向かっていた。

「あと数分で村に着きますので、そこでレナードに戻って頂く事になります…」

「わかりました。…ウィル様どうかしましたか?」

村が近くになった所で、ウィルの様子が可笑しい事に気付いた。

「何でも有りません」

そう言うが、ウィルの顔色が良くない。

馬から落ちない様に振り返り、ウィルのおでこに手を当てると熱があった。

「熱があるじゃないですか!」

「これ位大丈夫ですよ」

ウィルの両頬を手で挟む。

「駄目ですよ!酷くなったら大変です。村に着いたら少し休みましょう‼」

ウィルは警護の為に、ここ数日寝て無かったのだろう。

人より睡眠時間が少なくて大丈夫だと言うのは嘘で、疲れから熱が出たみたいだった。


どうにか村まで辿り着けたので、宿があるか聞いてみる。

「すみません、この村に宿はありますか?」

声を掛けた老婆が親切に宿の場所を教えてくれた。

村の宿はこじんまりしているが、清潔でキレイだった。

部屋に入り、すぐにウィルをベッドに寝かせる。

「苦しくは無いですか?回復魔法を唱えますが、今日は安静にして下さい」

実は回復魔法は万能ではない。回復を早めて治すので、病状によっては安静にしなければならない。

「すみません。貴女を守ると言いながら手を煩わせてしまって…」

「大丈夫です。今日はここで休みましょう?」

ウィルの額に手をかざし魔法を唱えると、浅かった呼吸が通常に戻っていく。

「後は少し寝て下さい」

疲れもあったのだろう、ウィルは直ぐに寝てくれた。


ウィルが寝たあと、食糧などを調達したりした。

村の人は全員親切で色々とオマケしてくれ、買ったもの以上の荷物になってしまった。

「これ位あれば良いかしら?」

宿に戻り荷物の整理をする。

一段落つくと、借りた部屋にはベッドが1つと、椅子とテーブルしか無い事に気付いた。

「どこで休みましょう?」

椅子でとも思ったが、今後の事を思うとしっかり休んだ方が良い。

ウィルが寝ているベッドは、かなり広く作られているので、もう一人寝ても余裕がありそうだった。

「どうしよう…。一緒に寝ても大丈夫そうだけど…流石に、女の姿の時に一緒に寝るのは…」

ウロウロと部屋の中を歩くが、それ以外の方法が無い。

「他に部屋を借りれないし、仕方無いよね…」

ウィルは目を覚ましそうに無いので、ベッドの端で寝ることにする。

お邪魔しますと声を掛けて、ベッドに潜り込むと、レイティアも眠りに落ちていった。



…………

………

……

朝になり辺りが明るくなった頃、ウィルは目を覚ました。

微睡みの中で、心地よい温かさと重さがある事に気付き、何だと思い視線を動かすと、レイティアが隣で寝ていた。

「!!!」

微睡みから一気に覚醒し、驚きのあまりベッドから落ちてしまった。

その音でレイティアも目覚めたのか、目を擦りながら起き上がる。

「ウィル様…?」

「何故、貴女が一緒に寝ているのです!?」

顔を真っ赤にして聞いてくる。

「他に休む場所が無かったので…」

それはそうかも知れませんが、男性の寝ているベッドに入るのは頂けません‼と怒られた。

「私だから良かったものを、他の男性でも同じことをするつもりですか?」

「他の男性?」

誰の事をいってるんだろうと考えていると、エミリオやザガートとかですと言われた。

「エミリオ様は嫌ですけど、ザガート様なら大丈夫そ…」

「駄目です!!男は狼なんですから気を付けなさい!」


「そう言えばウィル様、体調はどうです?」

「貴女の魔法と一晩寝たので回復しました」

本当に熱が下がったか確かめる為に、おでこをくっつけると、ウィルの顔が更に赤くなる。

「熱は無さそうですね。顔が赤いですけど大丈夫ですか?」

「大丈夫です。そろそろ出発しないといけないですから、準備しましょう」

私は一旦部屋を出ますねと、ぎこちない動きで出ていった。


男に戻る為に夜着を脱ぎ、布で胸を潰し昨日着ていた濃紺のドレスを着る。

深呼吸をして気持ちを切り替え、レナードに戻る。

「ウィル、準備が出来た。入ってきて大丈夫だ」

声を掛けると、いつの間にか着替えたウィルが入ってきた。

「本当に見事な切り替えですね。失礼ですが胸はどうしたのですか?」

「布を詰めてある」

ウィルに昨日のうちに必要な物を用意して置いた事を告げる。

「ありがとうございます。隊長、馬に女乗り出来ますよね?」

「出来る。一番最初に砦に戻った時もそれで行ったからな」

「では、馬を用意しましょう。二人乗りだと遅くなりますから」

昨日は村に泊まる予定が無かったから急ぐ必要がある。

「どこを通って行く予定なんだ?」

「この道を行くつもりだったのですが、封鎖されている可能性があるので、こちらでしょうか?」

地図を広げ指をさしながら説明する。

その道を行くとなると、2日掛かってしまう。

「馬が使えないが、ここを通れば時間を短縮出来ると思うが」

地図に載ってない場所を指す。

「そこに道は無いですよ?」

「地下道だからな。訓練で使った事がある」

正確には地下道では無く地底生物の獣道兼住みかなのだが、砦の近くに出る事が出来る。

「ただ、ウィルはネズミは平気か?」

「別に平気ですが、地下道に出る感じですか?」

「ああ、苦手なら通ることが出来ないだろうな…」


連れていけないので馬を預け、地下道を通る時に必要になるかも知れない干し肉を追加して買う。

「何か意味があるのですか?」

「一応な。使う事になるかも知れないから…」

ヤツが出てくるだろうしと心の中でつぶやいた。



村から徒歩で地下道まで移動し、山肌の割れ目から中に入っていく。

「ここから行けるのですか?」

「ああ、何ヵ所か出入り口があるが此処が一番広いからな」

天然の階段を降りると、かなりの広さがある空間になっていた。

地下道は当たり前だが暗く何も見えないので、光魔法で周辺を照らし出すと、光に慣れない地底生物は驚き逃げていった。


しばらく砦の方角に向かって歩いていると、【ドドドド】と大きな足音が近付いて来る。

「何の音です?」

ウィルが警戒して辺りを見回していると一匹のネズミが姿を現す。

「何て大きさです!?」

現れたのは高さが2mを越す大きさの白いネズミで、鋭い爪を持っていた。

ウィルが剣を抜こうとしているので止める。

「大丈夫だ。ライル伏せ‼」

レナードがそう言うと、ネズミが伏せをする。

「こいつは、この地下道の主だ。訓練の時にも出てきたんだが、カイルに懐いてしまってな」

いつの間にか調教してしまった様で、とにかく訓練の度に出てくるようになってしまったため、ここで訓練しなくなった。

「大丈夫なんですか?」

「問題ない」

荷物の中から干し肉を取り出して、ネズミに与えると嬉しそうに食べ始めた。

「干し肉はこのためだったんですね」

「ああ、カイルが居ない時にエサを与えないと追いかけられるから、必要なんだ」

エサが無いなら遊べと、追いかけられていた隊員達を思い出す。

ネズミのライルは遊んでいるつもりなのだろうが、巨大なネズミが追い掛けてくるのは恐怖しかない。


話している間に食べ終わったのだろう、ネズミのライルが顔を寄せてきた。

「食べ足り無いのか?」

干し肉を出そうとすると違うと首を振り、背中を向けて乗れと手を動かしてくる。

「乗せてくれるらしいが…、どうする?」

「早く着くなら乗せて貰った方が良いと思いますが、本当に大丈夫なんですか?」

信用して良いのかウィルは悩んでいるようだったが、カイルの調教は完璧だったから大丈夫だろう。

「時間が無いし乗せて貰うか。何かあったら戦えば良いし」

悩んでいるウィルを連れて、ネズミの背中に乗り砦の方角に走るよう頼むと、ライルが走り出した。


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