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翌朝、目を覚ますとベッドで寝ていた。
いつ寝てしまったのだろうと昨日の夜の事を思い出そうとする。
「えっと…、話が纏まって…ウィル様に」
確か突然抱きしめられて、おでこにキスをされたら、いきなり眠たくなって…。
「そうだ!キス!?」
おでこを押さえて赤面する。
「強制的に寝させる魔法なんだろうけど…」
最近、全然寝れてないのを気付かれてしまっていたのだろうが、いきなり陛下達の前でしなくても!と頬を膨らませる。
目線を下げると、服が夜着に変わっていた。
「なっ!?誰が着替えさせたの!!」
「おや?お目覚めですか?」
ウィルが部屋に入っきたところだった。
「ウィル!服!」
少し混乱してるのか言葉がうまく出てこない。
服を少し引っ張りながら目で訴える。
「服?ああ、私が着替えさせましたと言いたい所ですが…、エルとアリアにお願いしました」
ホッと胸を撫で下ろす。
「良かった…」
「面白くない反応ですね。まあ、良いでしょう」
着替えたら、陛下達を呼びますから教えて下さいと部屋の外に出ていった。
服を着替えるために夜着を脱ぎ、用意されたドレスに袖を通す。
今までの淡い色ではなく、濃紺のドレスで首元まで被う物だった。
「随分、タイプが違うドレスですね」
何か意味があるのかな?っと首を傾げる。
着替え終わったので、ドアから顔を出すとウィルとルドラが立っていた。
「終わりましたか?では、兄上とエミリオを呼んで来ます」
これからの作戦を話し合う為、レイティア達の部屋に全員集まった。
「砦に合流するにせよ、作戦を練らなければならないですが…、エミリオどうしました?」
ウィルの視線の先には、顔色が悪く頭を抱えているエミリオがいた。
「昨日の夜の記憶が無いんだ。思い出そうとすると気分が悪くなり、思い出してはいけない気がする…」
現場を目撃していた2人は視線を反らし、当事者であるウィルは冷ややかな視線を向けている。
「…?何か有ったんですか?」
「お嬢ちゃんは気にしない方が良い」
昨日私が寝た後で何があったのだろうか?気にするなと力強く言われると聞けない。
「そんなどうでも良い事に時間は使えません。話を進めます」
「ユラシスに向かうとしても全員で行動すると目立ちますから、二手に分かれて移動します」
陛下・ルドラ・エミリオと、ウィル・レイティアに分かれましょうと提案する。
「ちょっと待て、何故レイティアと当たり前の様に叔父上が一緒なんですか!」
「いけませんか?」
「私が一緒に行く!私は触ってしまった事の責任も取りたいと思ってたからな」
「触ってしまった?何をだ?」
いきなり何を言い出すのだ。
わざわざ他人に言う必要なんて無いし、言われて恥ずかしいのは私じゃないかと慌てる。
「殿下!何を言うつもり…」
レイティアの言葉より早く、エミリオが答えてしまう。
「悪気は無かったが、胸を触ったからな。だが、しかし責任を取るつもりだ!」
威張って言い張るエミリオを見て、腹が立つやら恥ずかしいやらで顔を真っ赤にする。
「んっ?レイティアどうした?」
「殿下のバカ!!」
近くにあった小さなクッションを投げつけると、顔面にヒットする。
「今のはエミリオが悪い」
陛下の言葉にウィル達は首肯く。
「何故!責任を取ると言ったのに!?」
「エミリオ殿下…、だから、女性に嫌われるんですよ」
ルドラがエミリオの肩を叩きながら慰める。
話が脱線してしまいましたが、とウィルが話を続ける。
「陛下達は王都を通らないで、山道を使ってユラシスに向かって頂きます」
山道は険しいが王都を通過するより、安全だろう。
「お前達はどうする?」
「今回の件はレナードの協力が無ければなりませんが、死んだと敵が思ってるなら、姿を見せる訳にはいきません」
だから、レイティアと入れ替わって貰おうかと考えていると告げる。
「意味が分からないが?」
「怒られるかも知れませんがレナードには女装して貰い、レイティアは安全な場所に隠れて頂きます」
レナードの存在を敵から隠せ、行動しやすいでしょうと説明している。
「服も入れ替わった時に違和感が無いように濃紺のドレスを用意しました」
だから首元まであるのかと思ったが、レナードの女装…。
作戦としては間違っていない。むしろ正解だろうが、レナードとしては危険なんじゃ無いかと思う。
「レナードと合流し次第、別の道を使いユラシスに向かいます」
「ユラシスに着いたらどうする?」
「それは、あちらの状況にもよると思いますので、着いてから話します」
ですが兄上には着いたら確認して欲しい事がありますと、何やら言っていたが話している内容までは聞こえなかった。
皆が準備するために出ていった。
「ウィル様…、レナードが女装と言うのは…」
「バレませんから大丈夫です。それともドレス姿だと、男に戻れませんか?」
一度ドレス姿で戻っているんだから、大丈夫ですよね。っと笑顔で言ってくる。
「戻るのは問題ありませんが、でも…」
女装して砦に戻るのだ。バレないとウィルが言うが不安しかない。
準備しようと荷物を整理するが、気持ちが沈んでしまう。
「レイティア、口を開けて下さい」
言われるがままに開くと、口の中に何かを放り込まれた。
チョコの甘さが口一杯に広がる。
「!!!」
「何かあったら私が何とかしますから、心配しないで下さい。
ただ、私以外の人に無防備に口を開けては駄目ですよ。毒だったら大変ですからね」
素直なのはとても良いですが、とクスクスと笑いながらチョコが入った袋を手渡し、陛下の所に行ってきますと出ていった。
チョコの甘さとウィルの優しさに気持ちが浮上する。
「国のためですから頑張らねば」
途中でレナードに戻る為に必要な物を用意していく。
全員の準備が整ったのは朝食の時間だった。
「まだ、時間が早かったんですね」
「そうですよ。貴女が起きたのは、朝日が昇る前でしたから」
ウィルがキッチリと服を着ていたから、遅く起きてしまったかと思っていた。
「ちゃんと寝てるんですか?」
「心配しなくても大丈夫ですよ」
人より少ない睡眠時間で足りますからと笑う。
「朝食を食べたら行動開始しましょう」
急いで朝食を食べて、馬を準備する。
「エル達には感謝してますよ。少ないですが宿代として下さい」
ウィルとルドラがお金を渡そうとするが要らないと断っている。
「お金よりまた来てくれた方が嬉しいよ」
エル達はお金を受け取ることが無かったので、次にまた来る事を約束して出発した。
分かれ道に差し掛かった時、エミリオが馬を寄せてきた。
レイティアに嫌いと言われたからか元気が無かった。
「色々とすまなかった。しばらくお別れだろう?だから、これ…」
詫びのしるしだと、可愛らしい花の形のブローチを渡して来た。
「ありがとうございます。大切にしますね」
礼を言うと顔を赤くしながら離れていった。
それを見て面白くなさそうな顔をしているウィルを、陛下が見ていた。
「本当に珍しいな…。人嫌いの弟の心を掴むとは、しかも我が息子まで虜にする、凄い娘だな」
「そうですね。しかも、計算してる訳では無さそうですからね」
早速ブローチを着けようとしてたから、陛下達にそんな事を言われてるとは思わなかった。
「では、ウィリアム。ユラシスの砦で会おう!」
「はい。ユラシスで会いましょう」
砦で会うことを約束し、分かれ道を別々に進んでいった。
少し進むとウィルがブローチを外すように言ってきた。
「エミリオ様から貰ったのに?」
「ええ、レナードに戻った時に外し忘れて着けていたら可笑しいでしょう」
だから預かりますと手を伸ばして来たので、それもそうかとウィルに渡す。
(エミリオが渡した物を身に付けている、レイティアを見たくありませんからね)
ウィルの本当の気持ちなど知るよしも無かった…




