⑮
緊急連絡用に作られた魔法の鳥の足には手紙が無かった。
「途中で取れたか、付けられない程危険な状況だったか…まさか!?」
ウィルの顔色が悪い。
「大丈夫か?」
声を掛けても聞こえないくらい狼狽している。
「ウィル!落ち着け‼」
ウィルの頬を平手打ちする。
叩かれた事で少し落ち着きを取り戻す。
「隊長…、すみません。陛下に何か有ったかも知れない」
それだけ緊急用だと言う。
取れた可能性も否定できないが、手紙を落とすとは思えない。
「…ウィルは陛下の元に戻った方が良い」
そう決断すると、窓の外に手が見えた。
「なっ!?ここは2階だぞ‼」
何者!と2人は警戒する。
そこから顔を覗かせたのは、ルドラ大将軍だった。
「ルドラ大将軍!?何をやってるんです?」
「陛下の命が危なかったからな、連れて逃げてきた」
王妃や第3王子は安全な場所で身を隠してもらい、自分達は鳥を追ってここまで来たと言う。
「まさか兄上、陛下も来てるんですか!?」
「おう!おいでだぞ。ついでにエミリオ殿下もな」
確かに窓の下には2つの人影が見える。
「取り敢えず中へ案内して来ます」
ウィルは外に走っていく。
部屋に残されたのは、ルドラとレナードだけだった。
「んー。どこかで見た顔だな」
「初めまして、私はレイティアと申します」
ドレス姿なので慌てて、レイティアとして振る舞う。
「男の話し声が聞こえてたが気のせいか?」
キョロキョロ辺りを見ているので、違う話を振る。
「この場所だと魔法で分かったのに何故窓からいらっしゃったのですか?」
「殿…なんと呼べば良いんだ?あー、取り敢えずあの方は逃げるから、逃げられないように一応な」
ポンポンとレイティアの頭を叩く。
「しかし、何処で会ったこと無いか?」
「いえ、無いと思います」
会ったことがあるのはレナードで、レイティアでは無いからとぼける。
「ルドラよ、この状況で女性を口説いているとは…」
少し呆れた感じで部屋の中に入って来たのは陛下だった。
ウィルに少し似ているが威厳がある。
「違いますよ!会ったような気がしたから聞いてただけです」
慌てて弁明する。陛下の後ろからエミリオ殿下が姿を現す。
「レイティア!?何故君が此処に?」
「兄の無実を晴らすために私と行動を共にしてたんですよ」
最後に入って来たウィルが説明すると、3人の顔が曇った。
「その事なんだが…、反乱が起きて城が落ちた」
王宮の近くに魔物が多数出没し、兵が出払っている状況で反乱が起きたために逃げて来たと言う。
「体勢を立て直せば取り戻す事は可能だろうが、問題はラシア城だ」
「ラシア城も占領されましたか?」
「違う。火を放たれた。鍵が無かった為にレナードを救う事が出来なかった…」
悔しそうに唇を噛む。
「他に被害は?」
「王宮もラシアも怪我人が出たが、レナードを除いて犠牲者は出てない」
「レナードなら大丈夫ですよ。別な場所に移動してますから」
でも私の研究の資料が無くなってしまいました。と悲しんでいる。
「本当ですか?レナードは生きているのですか、叔父上?」
レナードが生きていると聞いたエミリオは、喜んでいる。
「君は、誰なのかな?」
陛下は優しげではあるが、観察するような目で聞いてくる。
「お初にお目もじします。ミルジュ侯爵が娘のレイティアと申します」
スカートを摘み貴婦人の最上礼を取る。
「ミルジュ侯爵…ソフィアの娘か、確かにレナードと似ているな。それで、ウィリアムとは、どういった関係なのだろう?」
「関係ですか?今回の騒動の解決の為に協力して下さっているので、関係と言われても…」
レナードなら砦の仲間になるが、レイティアとはどんな関係になるんだろう。自分でもわからず考える。
「兄上、レイティアと何を話しているんですか?」
「お前との関係を聞いていたんだ。他人にまして女性に興味の無いお前が、行動を共にしてるんだからな」
陛下は何か勘違いしてるようだが表情を緩め弟を見ている。
そんなやり取りをしていると、息子であるエミリオが参戦してくる。
「レイティアは叔父上と何にも無いよな!?」
「え?はい…」
「レイティア、貴方はいつからエミリオと知り合ったんですか?」
レイティアとエミリオの間に割って入る。
「えっと…、舞踏会でお逢いして挨拶をしました」
「エミリオは女性の扱いが下手ですから、近くに寄らない方が良いですよ」
シッシッと手で追い払う様な仕草をする。
「叔父上こそ変態では無いですか!」
2人が喧嘩をはじめてしまうと、陛下と大将軍に手招きされる。
「甥と叔父の関係だが年齢が近いせいか、喧嘩をはじめると止まらない。奴等はほっといて話をしよう」
「はい。では今お茶を用意しますね」
頼むと言われたので、陛下達に椅子を進め、お茶を淹れる。
「お城が落ちたのなら、王都は混乱してるのでしょうか…」
「いや多分、民はまだ気付いて無い」
ウィル達からの忠告を聞いて直ぐに行動していたと言う。
まさか息子のイルミオに剣を向けらるとは思っても見なかったがな…っと少し寂しそうに呟く。
抗戦するのも可能だったが、街や民にまで被害を拡大する怖れがあり、何より魔物が厄介だった。
「ならば一時的に撤退して、体勢を立て直した方が良さそうだと判断した」
「兵の方達はどちらに?」
「ユラシスの砦だ。裏切り者から奪還したと副隊長のザガートから連絡があったので、兵はそちらに向かわせている」
ザガート達が無事で安堵するとともに、仕事の早さに感嘆する。
「でも、何故陛下達は何故砦のでは無く、こちらに?」
「ウィリアムが騒動の事を知っているようだし、呪術には詳しいからな」
ユラシスに行くより、弟の居る場所に向かった方が早く解決出来ると思ったから来たと言われた。
「君達は何か掴んだのだろうか?」
「…はい。騒動の真犯人がわかりました」
陛下に知り得た情報を話し、失礼かと思ったが、ラスの件も一応聞いてみる。
「その女性の事は分からないな。それに私は正妃である妻以外の女性と関係をもった事は無い」
「陛下は王妃様にぞっこんですからな」
やはり勝手な逆恨みで騒動を起こしたのだろう。
「兄上、原因も解決方法が分かりましたので兵に合流するのが良いかと」
いつの間にかレイティアの隣に座りお茶を飲みながら答える。
「ですが、今日はもう遅いので休んだ方が良いでしょう」
「ああ、そうだな」
話が纏まったタイミングで、部屋がノックされる。
「ルー様?部屋を用意したけど、2部屋しか出来なかったけど大丈夫かい?」
「急でしたから、2部屋でもありがたいですよ」
じゃあ何かあったら呼んでおくれ。と出ていった。
「俺は警護が有るから部屋は要らないぞ」
「では、兄上とエミリオが用意された部屋をお使い下さい」
「レイティアと叔父上はどうするんです?」
「一緒の部屋ですが、何か問題が有りますか?」
そう言うとエミリオが噛み付いた。
「有りまくりでしょう!若い女性と一緒の部屋だなんて可笑しいでしょう‼」
「警護も必要でしょう?」
「なら私がします!私が一緒の部屋で警護しますよ」
また2人で言い争いになるが、陛下が止める。
「2人とも止めないか!元々、ウィリアムと同じ部屋の予定だったのだろう、レイティアが嫌でなければ、ウィリアムで構わないだろう」
エミリオは納得してないが父親の言葉には逆らえないのだろう、口をつぐむ。
「話が纏まりましたし、今日は休みますか」
そう言うとレイティアを抱きしめ、額にキスをする。
「!!!一体な、に、を…」
レイティアはウィルの腕の中で崩れ落ちる様に寝てしまった。
「ここ数日、全然寝てなかったみたいですからね…」
強制的に魔法で眠らせた、レイティアをベッドに運ぶ。
その様子を見て、3人が信じられないものを見る様な目で見ている。
エミリオに至っては口をパクパクさせている。
「叔父上!何をしているんですか‼」
「五月蝿いですね。貴方も寝させて欲しかったんですか?」
五月蝿い甥を黙らせる為に襟を掴み引き寄せ、口を口で塞ぐ。
濃厚なキスをされ、エミリオは気持ち悪さから泡を吹いて気絶したようだった。
「ふんっ!気持ち悪いモノに口付けしてしまいました」
吐き捨てる様に言うが、見せ付けられた2人はドン引きしていた………
次の投稿は、仕事が忙しいので2~3日後になると思います。




