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ハブクは身体を捨てて楽園に発った。よほど人生が嫌だったのだろう。迷いは一切なかった。
しかし信参はそんな事を知らないし、知ったところで何も変わらない。今はなんとか脱出しようと、生成した金属の棒で壁を削り続けていた。
「諦めろ。この壁、かなり厚そうだ」
「うるせえ!お前も十八番の魔法道具でなんとかしろ!」
「とっくにやったさ」
優は諦めきったかのように落ち着いていて、喜美子に至ってはこの絶対的な危機の中で横になり眠っていた。
「くぅ…なんでこんな…」
「そう悲観するなよ。愛想よくしていれば無事に下船させてくれるかもしれないだろ」
そう言われても信参の手は止まらない。
ガリガリと壁を削る音だけが辺りに響いた。
どれだけ時間が経ったか分からない頃、信参が握っていた棒が折れた。
新しく棒を作ろうとするが、呆れた様子で優が止めた。
「やめておけよ。魔力の浪費だ」
「殺されるかもしれないのに何が浪費だ!こうなったら何がなんでも逃げ出してやるんだ!」
「逃げる事には私も賛成だ。だがもっと効率的にいこうじゃないか。今体力を使い果たして、いざチャンスが訪れた時に動けなければダメだろう?」
「…何か策でもあんのかよ」
「手は打った。後は待つだけだ」
優は既に行動を終えていた。喜美子もただ寝ているのではなく、それを見越して体力を保持するための行動だった。
優を信じるのは癪だが、信参だって命は惜しい。棒を作るのをやめると、楽な姿勢を取った。
そして、ここから無事に脱出できた後の事を考えるのだった。




