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初めて耳にするドリームシップという単語。そこに姫守利子はいるかもしれなかった。
「シップというからには船かい?」
「あぁ。かれこれもう一か月前から停泊してるんだ。金を払えば俺みたいな貧乏人だろうと楽園に連れていってくれるんだって。あと一週間したらこの国を離れちゃうからそれまでに大金欲しいんだよ!」
「あぁ、だから紙飛行機を盗んで売ろうとしたんだ」
お金にがめつい子どもの一連の行動に納得した信参。それはそれは素敵な場所へ連れて行ってくれるのだろうと海を渡る旅客船やリゾート地を想像した。
優はそんな彼に見向きもせず、ドリームシップの事を追求する。
「そのドリームシップとはどこへ連れて行ってくれるんだい?」
「チラシあるよ。ほら」
そうして子どもが見せてきた紙には、ドリームシップと思われる大きな船を中心に様々な情報が掲載されていた。
「祭りのポスターみたいだな…」
「大衆受けしやすいデザインにして人が来るようにしているのだろう。それにしてもこのドリームシップ、なんだか胡散臭いぞ…」
乗船には大金を必要としているが金額が記載されていない。
楽園とされる目的地もだ。一体お金を払って乗った後、どこへ運ばれるのだろうか。
「こんな怪しい船に高校生が乗るのか…?」
「高校生だから乗るのだろう。君の言っていたトーヨコに人が集まるのと同じ理屈だ」
目的地は決まった。優はドリームシップが停泊しているという北の港を向いた。
「なぁ!俺も連れてってよ!」
「雇えとでも?私達はもう一銭も持ってないぞ」
「一銭もってお前!さっき俺の財布から金出しただろ!自分のはないのかよ!」
「生憎だがキャッシュレス派でね。古土君は?」
「犯罪者に渡す金なんてありません」
「…というわけだ」
「ケチくせ…まあいいや。向こうに着いたら考えよ。俺はハブク。よろしく」
盗人の子どもハブクを同行者に加えると、優は折り紙を飛ばした。
向かう先は変わらず北。ドリームシップとやらに利子はいるのか。




