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ゾンビ編 3/5

こちらへ階段を駆け上がってくる足音に俺達は身構えた。

全く対抗手段を用意してなかった。

いざとなれば職員室に逃げ込むか?



どんどん足音が近づいてきて、階段から音の主が顔を覗かせた。 



上ってきたのはリッチーだった。


しかも全然元気そうだ。



「悪ぃな!待たせちまって!!」



「リッチー!!なんでお前…さっき死んだはずじゃ…」



「あぁ、俺も噛まれて一度ゾンビになりかけたんだがな。それで…みんなに話しておきたい事がある…」



深刻そうな表情でリッチーが俺達を見た。



「話しって何さ…?」



卓やんが心の準備が出来たと判断したリッチーが応えた。




「実は俺は一度死に、魔界にいた事がある」



「「「え?」」」



卓やんと円華は突然聞き慣れない言葉が飛び出してきたことで全く理解が追いついていなかった。


俺は違った。聞いた事がある。嫌な予感しかしなかった。



「まぁ、みんな信じないだろうが聞いてくれ。俺は魔界で育ち様々な修行を積んできた。そこで覚えた『死者蘇生術(Reアンデッドリビング)』の術が発動してな。一度はゾンビになったが術のおかげでこの通り、元に戻る事が出来た。心配かけたな!!」



「そうだったんだ!俺、心配したんだよ…」



「よくわかんないけど、リッチー君が無事で良かった!」



半べそかきながら泣いているの二人の肩をリッチーが優しく抱きしめ、リッチーも泣いている。リッチーの妄想の中の住民の適応力があれば人間は宇宙服無しに生きていけそうだ。




「いや、ちょっと待て。おかしいおかしい」



俺だけ冷静だった。



「なんだよ、魔界って。お前もしかしてリッチーなのか?」



頭が混乱してきた。嫌な予感しかしなかった。質問もかなり雑な質問になってしまったようだ。



「あぁ、俺はお前らの知ってるリッチーだぜ。安心しろ、本物だよ」



笑顔のリッチーだったが、偽物とか本物とか、俺が聞きたいのはそういう事じゃない。少し論点がズレてる。



「リッチー、お前また妄想してんだろ?」



リッチーがポカーンとこちらを見て止まった。



「さてはお前、ソーシか?!なんでお前がここにいるんだよ?さては卓やんと城島も?」



「いやいや、逆だよ!なんでお前がまた俺の妄想の中にいるんだよ!」



「いや、お前こそ!」



……




「マジか…」



「あぁ…」



「は、恥ずかしいとこ見せちまったな…」



「もういいよ。知ってる…」



リッチーが死んだ魚の目をしていた。結局俺も俺で懲りずに妄想してるんだ。お互い様だった。




「その…卓やんは…」



「大丈夫、この二人は俺とお前の妄想だ」



「よかった…」



「にしてもなんだ『死者蘇生術(Reアンデッドリビング)』って。アンデッドなのかリビングデッドなのか、重複してるだろ。Reとかも付けりゃいいってもんじゃねーし。わけわかんねーよw」



「とりあえずそれのおかげで復活出来んだよ。この前のテロリストの時も、それでお前も俺も助かったろ?感謝しろよ?」



「アレ、設定だったのかよ!てかお前、魔界転生設定引っ張り過ぎだろw!」



「俺の妄想を語る上で魔界転生編は欠かせねーんだよ!龍昇想波拳だって、ホラっ!」



そういって正拳突きをして見せたリッチーの拳の先の壁に衝撃波が当たり、壁に亀裂が入った。



もうダメだ。もうお仕舞いだ。ダメ、全然ダメ。リアリティもヘッタクレも無くなった。



「ホラっ!じゃねーよ!バカリッチー!!あーもう!一応お前の妄想設定確認するぞ、話してみろよ」



「な、なんでそんな怒ってんだよー。怖ぇよ!ゾ、ゾンビより怖ぇよ。あー、殺されるぅ~!!ソーシに食われちまうぅ~ww!!」




いつものノリでリッチーが返してきたが、俺様が知力を駆使してゾンビ蔓延るこの街で見事なまでにサバイブする予定この妄想の中、設定度外視して土足で踏みにじり、しかもこのノリはかなりイラっとした。




「わ、わーったよ。そんな怖い顔すんなよwあのなぁ、ここの妄想の世界で俺は一度ゾンビに噛まれてゾンビになんだよ。でも『死者蘇生術(Reアンデッドリビング)』の術が発動して復活。あとはゾンビの群れを相手に俺の龍昇想波流の技の数々が炸裂し、ゾンビ共を全滅させて人類は救われる、ってワケ」



「ってワケ。じゃねーよ。それじゃこの前のテロリストと全然一緒じゃねーかよ!場面違うだけじゃねーか!テロリストの妄想でもしてろよ!」



「全然ちげぇだろ!テロリストとゾンビが同じに見えんのか?色とか違ぇじゃん!肌とか!」



「そういう話しじゃねーんだよ!設定が大切なんだよ!リアリティなんだよ!」




「よ、よくわかんねーけど、ゾンビ全部倒そう?な?」



ダメだ、本物にわかってないな。



「そもそもな、ゾンビものの妄想をする場合、自分の世界にゾンビが現れたらどうやって生き残るか、って考えてるもんなんだよ!」



「そうなのか?」



「そうだよ!!!」



「お、おう…ならお前の妄想聞かせてくれよ」



「いいか。俺達は一般人だ。ゾンビに対して非力なんだよ」



「そうなのか、残念だな!俺には龍昇想波流があるぜ!」



「黙れ。ゾンビ自体はそんなに強くなくてもな、数に圧倒されていずれやられてしまうんだよ。そうなる前に俺はホームセンターに立てこもる。そこに行くまでの壮絶なゾンビとの戦い、たどり着いたホームセンター内での人々の衝突!ゾンビとの攻防の果てに立てこもった俺達は楽園を作り出す。そこで自衛隊の救援により事態は終息を迎える」



「な、なるほど。んで、どうすんの?」


「どうするって…これからか?」



「うん。ホームセンターってあそこの中古本屋のとこ?どうやってあそこまで行くんだ?」




俺は気持ちを持ち直した。



「それで…この車の鍵をパクってきた」



俺は山下先生の車のキーを見せた。





今日の夕方頃4話アップ予定です


よろしくお願いします!

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