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海山羊に関すること〜異世界周航記〜  作者: 碁式游
第一章 人を売り買いする者

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10/16

第10頁 海賊

1週間毎日投稿1日目


「何が起きた!?何も見えねぇッ!」


突然の強い光によって視界を奪われ、混乱する海賊達。


「そいっ!」


「ぐはぁっ!」


船員の一人が、後頭部に打撃を受けて倒れ伏す。


「おい!どうした!?おぼぉっ!?」


腹部を強打されてまた一人倒れる。

また一人、また一人と、海賊達が一撃でノされていく。


「無茶振りかと思ったけど、全然問題ないな……」


カプラが薙ぎ倒した海賊達を、俺が後ろ手に縛り上げていく。


「やっと見えるように……ひいっ!?」


歯抜けの船員は、自分以外が立っていないことに気付き、そして自らの首に何者の手がかかったことに、驚きの声を上げる。


「さて、お前らの頭はどいつだ?」


横長の瞳孔に見つめられた船員は、逆らえばそこで転がる仲間と同じ目に遭うことを悟った。


「せ、船長は……あれ、いない?」


船員は甲板を見渡すが、転がっているのは同じ船員服の者のみ。一際目を引くあの高貴なコートが見当たらないことに疑問を覚える。


その時、船員の首根っこを掴んでいたカプラの背後から、影が伸びる。


「カプラ!後ろだ!」


カプラの脳天めがけて、サーベルが振り下ろされた──!


「危なッ!」


カプラは船員の首から手を離し、凶刃を避ける。

サーベルは船員の服を切り裂いた後、避けたカプラを素早く水平斬りで追い、カプラはさらに距離をとってサーベルを避ける。


「ちいッ!」


仕留め損ねて舌を打った髭面の男は、俺たちを視界の端に入れながら、周囲を見渡す。


「まさか、たった二人にここまで制圧されるとはなァ……」


襟の高いロングコートに、髑髏を付けた大きな帽子、左目に眼帯といった、いかにも海賊船の船長である風貌の男は、自嘲するように笑う。


「ラクに稼げる新しいシノギのせいで、弛《たる》みきっていたようだ……なッ!」


船長の男が大きく踏み込み、カプラとの間合いを詰める。

弛みきっていたと自嘲していたにも関わらず、洗練された足捌きから繰り出される、無駄のないサーベルの連撃は、カプラに反撃の隙を与えない。


カプラは、力は強いものの戦闘の経験がない。ましてや剣相手など。

故に距離を取って、防戦一方である。

カプラが甲板を大きく動き回り、息切れを狙うも、不安定な船上での戦闘経験値の差が、身体能力の差を僅かに上回っており、サーベルをギリギリで躱し続けるカプラに、焦りの表情が浮かぶ。


「このままじゃジリ貧だ。何か手を打たなければ……!」


海賊船の甲板から身を乗り出し、海賊船に横付けした自らの船で待機しているマーレに、指示を送る。


「マーレ!石を!」


「了解……じゃ!」


マーレがスリングショットを用いて飛ばしたものは、洞窟の光る鉱石。

明かりとして使えるこれを、売れると思いバラスト代わりに積んでいた。

そしてこれは、魔力を強く込めると──強い光を一瞬放つ。


カプラと船長の間に投げ込まれた石礫の内部から、漏れ出すように光が放たれ──


「またかッ!」


強い光を再び受けた船長は、眼帯を剥ぎ取り、左目を開けて応戦しようとして──

女が視界にいないことに気付いた。


「どこだ……!?」


「ほッ──!」


光に眩んだ一瞬に、男の後方に回り込み放たれたカプラのハイキックは、男の後頭部を痛打し、男は力なく崩れ落ちた。


倒れた男と、しれっと他の者の縄を解こうとしていた小柄の船員を縛り上げて、カプラに駆け寄る。


「やったな!カプラ!」


「感謝と激励は、とびきりのものを期待しているぞ」


カプラは白い髪を掻き上げ、誇らしげな顔をする。

横目に俺をチラリと見るさまは、一言では足りないと言わんばかりだ。


「分かった。船の中も確認した後でな」


「……仕方ないか」


露骨にテンションを下げるカプラに、報酬の増量を検討する。

塩漬けの干し肉があれば貰っておくか……

──マーレもいい仕事してくれたし、しっかり褒めてやらないとな。


小柄の船員から船内構造の概要を聞き出す。

入口のハッチが3箇所、部屋も複数あり、それらは扉で繋がっているようだ。


「入れ替わりで外に出られたら厄介だな……」


「その辺に転がってる奴らで塞ぐのはどうだ?」


2箇所のハッチを3人ひと縛りにした船員の山で塞ぐ。


「よし、行くぞ」


──と、その前に……


「フラッシュバン」


「「うぐあああッ!!」」


投げ込んだ石礫の発光によって、複数人の呻き声がハッチの下から聞こえる。

うーん、便利だ。


「今だ!」


ハッチを降りてすぐの、大砲が両脇に並ぶ部屋にいた海賊達を迅速に制圧し、他の部屋へと移動する。


「くそッ!開かない──ぐはぁッ!」


別のハッチがある船首楼に待機していた者を縛り上げる。


「やっぱりいた」


反対側のハッチも確認し、階下へと向かう。

階下は倉庫。食料や金品が所狭しと並んでいる。そして、前後に扉。

ぶら下がった塩漬けの干し肉をひとつ取って前の部屋へ向かう。


「こっちは……火薬庫か」


銅板で覆われた丈夫な作りの部屋。

そこに、火薬の詰まった小分けの麻袋が詰め込まれている。

反対側の扉を開けると──


「ひッ……!」


3人の女性が、錠をつけられて壁に繋がれていた。


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