第10頁 海賊
1週間毎日投稿1日目
「何が起きた!?何も見えねぇッ!」
突然の強い光によって視界を奪われ、混乱する海賊達。
「そいっ!」
「ぐはぁっ!」
船員の一人が、後頭部に打撃を受けて倒れ伏す。
「おい!どうした!?おぼぉっ!?」
腹部を強打されてまた一人倒れる。
また一人、また一人と、海賊達が一撃でノされていく。
「無茶振りかと思ったけど、全然問題ないな……」
カプラが薙ぎ倒した海賊達を、俺が後ろ手に縛り上げていく。
「やっと見えるように……ひいっ!?」
歯抜けの船員は、自分以外が立っていないことに気付き、そして自らの首に何者の手がかかったことに、驚きの声を上げる。
「さて、お前らの頭はどいつだ?」
横長の瞳孔に見つめられた船員は、逆らえばそこで転がる仲間と同じ目に遭うことを悟った。
「せ、船長は……あれ、いない?」
船員は甲板を見渡すが、転がっているのは同じ船員服の者のみ。一際目を引くあの高貴なコートが見当たらないことに疑問を覚える。
その時、船員の首根っこを掴んでいたカプラの背後から、影が伸びる。
「カプラ!後ろだ!」
カプラの脳天めがけて、サーベルが振り下ろされた──!
「危なッ!」
カプラは船員の首から手を離し、凶刃を避ける。
サーベルは船員の服を切り裂いた後、避けたカプラを素早く水平斬りで追い、カプラはさらに距離をとってサーベルを避ける。
「ちいッ!」
仕留め損ねて舌を打った髭面の男は、俺たちを視界の端に入れながら、周囲を見渡す。
「まさか、たった二人にここまで制圧されるとはなァ……」
襟の高いロングコートに、髑髏を付けた大きな帽子、左目に眼帯といった、いかにも海賊船の船長である風貌の男は、自嘲するように笑う。
「ラクに稼げる新しいシノギのせいで、弛みきっていたようだ……なッ!」
船長の男が大きく踏み込み、カプラとの間合いを詰める。
弛みきっていたと自嘲していたにも関わらず、洗練された足捌きから繰り出される、無駄のないサーベルの連撃は、カプラに反撃の隙を与えない。
カプラは、力は強いものの戦闘の経験がない。ましてや剣相手など。
故に距離を取って、防戦一方である。
カプラが甲板を大きく動き回り、息切れを狙うも、不安定な船上での戦闘経験値の差が、身体能力の差を僅かに上回っており、サーベルをギリギリで躱し続けるカプラに、焦りの表情が浮かぶ。
「このままじゃジリ貧だ。何か手を打たなければ……!」
海賊船の甲板から身を乗り出し、海賊船に横付けした自らの船で待機しているマーレに、指示を送る。
「マーレ!石を!」
「了解……じゃ!」
マーレがスリングショットを用いて飛ばしたものは、洞窟の光る鉱石。
明かりとして使えるこれを、売れると思いバラスト代わりに積んでいた。
そしてこれは、魔力を強く込めると──強い光を一瞬放つ。
カプラと船長の間に投げ込まれた石礫の内部から、漏れ出すように光が放たれ──
「またかッ!」
強い光を再び受けた船長は、眼帯を剥ぎ取り、左目を開けて応戦しようとして──
女が視界にいないことに気付いた。
「どこだ……!?」
「ほッ──!」
光に眩んだ一瞬に、男の後方に回り込み放たれたカプラのハイキックは、男の後頭部を痛打し、男は力なく崩れ落ちた。
倒れた男と、しれっと他の者の縄を解こうとしていた小柄の船員を縛り上げて、カプラに駆け寄る。
「やったな!カプラ!」
「感謝と激励は、とびきりのものを期待しているぞ」
カプラは白い髪を掻き上げ、誇らしげな顔をする。
横目に俺をチラリと見るさまは、一言では足りないと言わんばかりだ。
「分かった。船の中も確認した後でな」
「……仕方ないか」
露骨にテンションを下げるカプラに、報酬の増量を検討する。
塩漬けの干し肉があれば貰っておくか……
──マーレもいい仕事してくれたし、しっかり褒めてやらないとな。
小柄の船員から船内構造の概要を聞き出す。
入口のハッチが3箇所、部屋も複数あり、それらは扉で繋がっているようだ。
「入れ替わりで外に出られたら厄介だな……」
「その辺に転がってる奴らで塞ぐのはどうだ?」
2箇所のハッチを3人ひと縛りにした船員の山で塞ぐ。
「よし、行くぞ」
──と、その前に……
「フラッシュバン」
「「うぐあああッ!!」」
投げ込んだ石礫の発光によって、複数人の呻き声がハッチの下から聞こえる。
うーん、便利だ。
「今だ!」
ハッチを降りてすぐの、大砲が両脇に並ぶ部屋にいた海賊達を迅速に制圧し、他の部屋へと移動する。
「くそッ!開かない──ぐはぁッ!」
別のハッチがある船首楼に待機していた者を縛り上げる。
「やっぱりいた」
反対側のハッチも確認し、階下へと向かう。
階下は倉庫。食料や金品が所狭しと並んでいる。そして、前後に扉。
ぶら下がった塩漬けの干し肉をひとつ取って前の部屋へ向かう。
「こっちは……火薬庫か」
銅板で覆われた丈夫な作りの部屋。
そこに、火薬の詰まった小分けの麻袋が詰め込まれている。
反対側の扉を開けると──
「ひッ……!」
3人の女性が、錠をつけられて壁に繋がれていた。




