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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第73話 松山の夏と、もう一つの光

尾道から帰ってきて数日。

しまなみ海道の疲れもすっかり抜け、

松山の街には夏祭りのざわめきが満ちていた。


ひよりからのメッセージが届いた。


『今日、浴衣で行くね!』


湊は思わず心臓が跳ねた。


(浴衣……?

 ひよりの……?)


悠斗からも電話が来た。


「湊! すずも浴衣らしいぞ!

 やばいな今日!」


「……やばいって何が」


「いや、絶対かわいいやん!

 覚悟しとけよ!」


湊は苦笑しながらも、

胸の奥がそわそわしていた。



松山まつりの会場に着くと、

提灯の光と太鼓の音が街を包んでいた。


ひよりが手を振る。


「湊ー! 悠斗ー!」


その瞬間、

湊も悠斗も固まった。


ひよりは淡い水色の浴衣。

すずは白地に薄紫の花模様。


二人とも、

いつもの制服姿とはまったく違う雰囲気だった。


悠斗が小声で言う。


「……湊。

 これ、反則やろ」


「……うん。

 ちょっと、びっくりした」


ひよりが頬を赤くしながら言う。


「そんなに見ないでよ……

 恥ずかしいじゃん」


すずも視線をそらしながら呟いた。


「……浴衣、変じゃない?」


湊は慌てて首を振った。


「全然!

 すごく……似合ってる」


悠斗も勢いよく言う。


「めっちゃかわいいで!

 ほんまに!」


ひよりとすずは、

同時に照れたように笑った。



祭りの通りは、

太鼓の音と歓声で揺れていた。


ひよりが屋台を指さす。


「わたあめ食べたい!」


悠斗が笑う。


「子どもか!」


すずは金魚すくいを見つめながら言う。


「……光、揺れてる」


湊はその言葉に目を向けた。


(屋台の灯りが、

 水面に細く揺れている)


旅の光とは違う、

“祭りの光”だった。



四人は射的をしたり、

かき氷を食べたり、

人混みに流されながら笑い合った。


ひよりが言う。


「なんか……

 尾道とは違う楽しさだね」


悠斗が頷く。


「せやな。

 旅の静けさとは真逆やわ。

 でも、これも夏って感じや」


すずは太鼓の音を聞きながら言った。


「……胸がドキドキする」


湊はその言葉に胸が温かくなる。


(旅の終わりの静けさも好きだったけど、

 こういう賑やかな夏も好きだ)



やがて、

祭りのクライマックスの踊りが始まった。


ひよりが湊の袖を引く。


「ねぇ、一緒に見よ」


すずも悠斗の隣に立った。


太鼓の音が身体に響き、

提灯の光が揺れ、

人々の声が夜空に溶けていく。


悠斗が言う。


「なんか……

 また絆深まった気がするな」


ひよりが笑う。


「うん。

 しまなみも、今日も……

 全部、夏の思い出だね」


すずは静かに呟いた。


「……光、いっぱい」


湊は空を見上げた。


(しまなみの光、

 尾道の光、

 そして松山の夏の光)


全部が胸の中でつながっていた。


「また……

 みんなでどこか行こうね」


その言葉に、

三人が同時に頷いた。


夏の夜風が、

四人の間を優しく通り抜けていった。


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