第74話 2学期と、続いていく日々
夏休みが終わり、
松山の空に少しだけ秋の気配が混ざり始めた頃。
2学期の始業式の日、
校舎の前には、いつもの四人が揃っていた。
ひよりが手を振る。
「おはよー! 二学期だね!」
悠斗が笑う。
「夏休み短すぎやろ。
でもまぁ……楽しかったからええか」
すずは静かに言った。
「……光、白い」
湊はその言葉に目を向けた。
(夏の光とは違う。
でも、この光も好きだ)
教室に入ると、
クラスメイトたちが夏休みの話で盛り上がっていた。
ひよりが机に荷物を置きながら言う。
「なんか……
しまなみ海道が遠い昔みたいだね」
悠斗が首を振る。
「いや、俺はまだ脚に覚えとるで。
あの坂の感じとか」
すずは窓の外を見ながら呟いた。
「……海の光、まだ覚えてる」
湊は胸の奥がじんわり温かくなる。
(旅の光は、まだ消えていない)
休み時間になると、
四人は自然と廊下に集まった。
ひよりが笑う。
「ねぇ、またどこか行きたいね。
次はどこがいいかな」
悠斗が言う。
「山でもええし、街でもええし。
なんならまた尾道でもええで」
すずは静かに頷いた。
「……光、また見たい」
湊はその言葉に胸が震えた。
(旅は終わったけど、
この4人の時間は終わっていない)
放課後。
夕方の光が校舎の影を長く伸ばしていた。
ひよりが言う。
「今日も帰ろっか、4人で」
悠斗が笑う。
「せやな。
なんかそれが一番落ち着くわ」
すずは自転車置き場の方を見ながら言った。
「……風、優しい」
湊は深く息を吸った。
(しまなみの風とは違うけど、
この風も好きだ)
四人は自転車にまたがり、
ゆっくりと校門を出た。
並んで走る影が、
夕方の道に長く伸びていく。
ひよりが笑う。
「なんか……
夏がまだ続いてるみたいだね」
悠斗が言う。
「続いとるんやろ。
俺らの中では」
すずは静かに呟いた。
「……光、まだ消えてない」
湊は心の中でそっと答えた。
(そうだ。
旅は終わっても、
この4人の時間は続いていく)
今日も4人は、
同じ道を並んで帰っていった。
夏の思い出を胸に、
新しい季節へ向かって。




