第61話 因島の朝と、最後の道へ
朝の光が障子越しに差し込み、
部屋の空気がゆっくりと明るくなっていった。
ひよりが布団の中で伸びをする。
「……あ、体が軽い。
昨日あんなに疲れてたのに」
悠斗が笑う。
「寝たら復活するんやな、やっぱり。
でも脚はちょっと筋肉痛やわ」
すずは静かに言った。
「……手のしびれ、なくなった」
湊は布団から起き上がりながら思った。
(昨日の疲れが……
ちゃんと抜けてる)
窓を開けると、
朝の海が淡い青で静かに揺れていた。
潮風は冷たく、
夜の気配を少しだけ残している。
朝食の時間になると、
焼き魚と味噌汁の香りが部屋に広がった。
ひよりが目を輝かせる。
「朝ごはん……めっちゃ美味しそう!」
悠斗が箸を持ちながら言う。
「旅の朝飯って、なんでこんなにうまいんやろな」
すずは静かに呟いた。
「……光、白い」
湊はその言葉に頷いた。
(朝の光って……
昨日の夕方とは全然違う)
加藤先生が言う。
「今日は“向島”を越えて、
いよいよ尾道だ。
距離は短いが、最後の道は特別だぞ」
ひよりが笑う。
「なんか……
ゴールが近いって思うとドキドキするね」
悠斗が言う。
「でも寂しいな。
もう終わりかって思うと」
すずは静かに言った。
「……今日の海、どんな色かな」
湊は胸の奥がじんわり温かくなる。
(最後の島……
どんな景色が待ってるんだろう)
出発の準備をして外に出ると、
朝の風が四人の頬を撫でた。
ひよりが深呼吸する。
「朝の海って……
なんか“始まりの匂い”がするね」
悠斗が頷く。
「昨日の夕方とは全然違うわ。
今日は今日の空気やな」
すずは海を見つめながら言った。
「……波、静か」
湊はその言葉に耳を澄ませた。
(確かに……
朝の海は、音が柔らかい)
加藤先生が言う。
「さぁ、行くぞ。
因島を抜けて、向島へ渡る。
今日がしまなみ海道の“最終日”だ」
ひよりが笑う。
「よし……行こう!」
悠斗が拳を握る。
「最後まで走り切るで!」
すずは静かにペダルを踏み出した。
「……風、優しい」
湊は自転車にまたがり、
朝の光に照らされた道を見つめた。
(今日で終わるんだ……
でも、まだ旅は続いてる)
四人は因島の朝の道を走り出した。
向島へ続く海が、
静かに光っていた。




