第57話 夕方の海と、生口橋へ続く道
休憩所を出て走り始めると、
海沿いの道に柔らかい光が差し込んでいた。
ひよりが言う。
「……夕方の光になってきたね」
悠斗が頷く。
「昼の光と全然違うな。
なんか白っぽいというか……優しいわ」
すずは静かに呟いた。
「……海の色、薄くなった」
湊はその言葉に目を向けた。
(本当だ……
さっきまで濃い青だった海が、
今は淡い水色に近い)
生口島の海は、
夕方になると光を吸い込むように色を変える。
風も少し冷たくなり、
肌を撫でる感触が昼とは違っていた。
四人は海沿いの道を並んで走った。
ひよりが言う。
「さっき休憩したから、ちょっと楽になったね」
悠斗が笑う。
「マッサージ効いたわ。
湊、ありがとな」
「いや、こちらこそ……」
すずは静かに言った。
「……肩、軽くなった」
湊は胸の奥がじんわり温かくなる。
(疲れてるけど……
みんなで走ると、不思議と前に進める)
海沿いの道はゆるやかで、
潮風が一定のリズムで吹いていた。
波の音も、
昼より少しだけ静かだった。
やがて、
道の先に白い橋が見えてきた。
ひよりが息を呑む。
「あれ……生口橋?」
悠斗が目を丸くする。
「おおっ、次の島に渡る橋やん!
なんかテンション上がってきた!」
すずは橋を見つめたまま言った。
「……光、橋に集まっとる」
湊はその言葉に胸が震えた。
(夕方の光が……
橋の白に反射して、淡く光ってる)
生口橋は、
多々羅大橋ほど大きくはないけれど、
夕方の光を受けると
“静かな輝き”を放つ橋だった。
加藤先生が言う。
「生口橋を渡れば、
次は“因島”だ。
今日の旅も終盤に入るぞ」
ひよりが頷く。
「なんか……
今日一日がすごく長かった気がする」
悠斗が笑う。
「でも、めっちゃ濃かったな。
橋も島も、全部違うんやもん」
すずは静かに言った。
「……風、冷たくなってきた」
湊は深く息を吸った。
(夕方のしまなみ……
昼とは違う静けさがある)
生口橋の入口に着くと、
海が一段と明るく見えた。
ひよりが言う。
「夕方の海って……
なんか“透明な光”みたいだね」
悠斗が頷く。
「昼より静かやな。
風も落ち着いとるし」
すずは海を見下ろしながら言った。
「……波、ゆっくり」
湊はその言葉に耳を澄ませた。
(確かに……
波の音が柔らかい)
加藤先生が言う。
「夕方のしまなみは“静けさの時間”だ。
疲れが出るけど、景色は一番きれいだぞ」
ひよりが笑う。
「じゃあ……
この橋もゆっくり渡ろっか」
悠斗が拳を握る。
「よっしゃ、ラストスパートや!」
すずは静かにペダルを踏み出した。
「……風、優しい」
湊は橋を見上げた。
(今日の旅も、あと少し)
四人は生口橋へ向かって進んでいった。
夕方の光が、
静かに道を照らしていた。




