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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第55話 生口島の光と、レモンの香り

多々羅大橋を降りると、

空気がふっと軽くなった。


ひよりが深呼吸する。


「……なんか、甘い匂いする」


悠斗が鼻をひくつかせる。


「これ……レモンの匂いちゃう?」


すずは静かに言った。


「……光、黄色い」


湊はその言葉に目を向けた。


(確かに……

 大三島の森の光とは違う。

 どこか“明るい黄色”が混ざっている)


道の両側には、

レモン畑が広がっていた。


青い海、白い道、

そしてレモンの木々の緑と黄色。


ひよりが目を輝かせる。


「わ……かわいい……!

 レモン畑って、こんなに広いんだ」


悠斗が笑う。


「しまなみって、ほんまに島ごとに顔違うな。

 ここは“光の島”って感じや」


すずはレモンの木を見つめたまま呟いた。


「……風が、甘い」


湊は胸の奥がじんわり温かくなる。


(生口島……

 空気が明るい)



瀬戸田の町に近づくと、

アート作品がぽつりぽつりと現れ始めた。


ひよりが指をさす。


「あ、あれ……アート作品だよね?」


悠斗が驚く。


「ほんまや!

 なんかオシャレやな!」


すずは静かに言った。


「……島の色と、合っとる」


湊はその言葉に頷いた。


(アートが“浮いてない”。

 島の光と風に溶けてる)


加藤先生が言う。


「生口島は“アートの島”だ。

 瀬戸田は特に、光と影の使い方が美しい」


ひよりが笑う。


「写真、いっぱい撮りたくなるね」


悠斗が言う。


「レモン畑も撮りたいし、アートも撮りたいし……

 忙しいな!」


すずは静かにカメラを構えた。


「……光、柔らかい」


湊はシャッターを切った。


(この島の光……

 優しい)



瀬戸田の港に着くと、

海が一段と明るく見えた。


ひよりが言う。


「海の色……

 伯方島とも違うね」


悠斗が頷く。


「なんか“白っぽい青”やな。

 光が強いんやろか」


すずは海を見つめたまま言った。


「……空の色が、海に落ちとる」


湊はその言葉に胸が震えた。


(確かに……

 空の青がそのまま海に溶けてるみたいだ)


加藤先生が言う。


「瀬戸田は“光の港”だ。

 午後の光が海に反射して、

 島全体が明るく見える」


ひよりが笑う。


「なんか……

 ここにいるだけで元気になるね」


悠斗が言う。


「大三島の静けさもよかったけど、

 ここはここでええな!」


すずは静かに頷いた。


「……風、軽い」


湊は深く息を吸った。


(生口島……

 この島の光、好きだ)



加藤先生が地図を広げる。


「このあと、瀬戸田の中心街を抜けて、

 “耕三寺”の前を通る。

 そのあと、海沿いの道を走って生口橋へ向かう」


ひよりが目を輝かせる。


「耕三寺……

 写真で見たことある!

 すごい色の建物だよね」


悠斗が言う。


「アートの島に寺って、なんか面白いな」


すずは静かに言った。


「……光、反射しそう」


湊は胸の奥が高鳴った。


(耕三寺……

 どんな色なんだろう)


四人は再びペダルを踏み出し、

瀬戸田の町へと進んでいった。


レモンの香りと、

夏の光が道を照らしていた。


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