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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第54話 多々羅大橋と、風が歌う道

大山祇神社を後にして北へ向かうと、

森の匂いが少しずつ薄くなり、

代わりに海の匂いが戻ってきた。


ひよりが深呼吸する。


「……また海の匂いになってきたね」


悠斗が頷く。


「大三島って、ほんまに“森の島”って感じやったな。

 海が見えてきたらホッとするわ」


すずは静かに言った。


「……光、強くなった」


湊はその言葉に目を向けた。


(確かに……

 森の影が薄くなって、

 海の光が前に出てきた)


道の先に、

巨大な白い橋が姿を現した。


ひよりが息を呑む。


「……あれが、多々羅大橋?」


悠斗が目を丸くする。


「でっか……!

 なんか、空に浮いとるみたいや!」


すずは橋を見つめたまま呟いた。


「……風の音、聞こえる」


湊は胸の奥が震えた。


(しまなみ海道の中でも、

 特別な橋だ)



多々羅大橋の入口に着くと、

風が一段と強くなった。


ひよりが髪を押さえる。


「わ……風、強い!」


悠斗が笑う。


「でも気持ちええな!

 海の上って感じするわ!」


すずは静かに言った。


「……音が、歌みたい」


湊は耳を澄ませた。


(本当だ……

 風がワイヤーに当たって、

 低い音が響いている)


橋全体が、

風で“鳴っている”ようだった。


加藤先生が言う。


「多々羅大橋は“風の橋”だ。

 風が強い日は、橋が楽器みたいに鳴る」


ひよりが目を輝かせる。


「すごい……

 自然の音なのに、音楽みたい」


悠斗が言う。


「こんなん初めて聞いたわ」


すずは静かに頷いた。


「……風が歌っとる」


湊は胸の奥がじんわり熱くなる。


(この橋……

 渡るだけで特別な気持ちになる)



四人はゆっくりと橋へ進んだ。


海は深い青で、

ところどころに白い波が立っている。


ひよりが言う。


「海、広いね……

 なんか、空とつながっとるみたい」


悠斗が笑う。


「橋の上って、なんでこんなワクワクするんやろな」


すずは海を見下ろしながら言った。


「……島の影、きれい」


湊はその言葉に目を向けた。


(生口島の影が……

 海に長く伸びている)


午後の光が島の輪郭を照らし、

海に淡い影を落としていた。


加藤先生が言う。


「多々羅大橋を渡ると、

 しまなみ海道の“雰囲気”が変わる。

 生口島は“アートの島”だからな」


ひよりが目を輝かせる。


「アートの島……楽しみ!」


悠斗が言う。


「大三島とはまた違うんやろな」


すずは静かに呟いた。


「……風、優しくなってきた」


湊は深く息を吸った。


(生口島……

 どんな景色が待ってるんだろう)



橋の終わりが近づくと、

生口島の緑がゆっくりと近づいてきた。


ひよりが言う。


「次の島……生口島だね」


悠斗が笑う。


「よっしゃ、行くで!」


すずは静かにペダルを踏み出した。


「……光、柔らかい」


湊は胸の奥が高鳴った。


(しまなみの旅……

 まだまだ続く)


四人は多々羅大橋を降り、

生口島の道へと入っていった。


風の歌が、

背中をそっと押していた。


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