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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第53話 大山祇神社と、神域の静けさ

森の道を進んでいくと、

空気がさらにひんやりとしてきた。


「……なんか、温度下がった?」

ひよりが腕をさする。


悠斗が頷く。


「さっきまで暑かったのに、

 ここだけ涼しいな」


すずは静かに言った。


「……風が、ゆっくり」


湊はその言葉に頷いた。


(確かに……

 風が“止まる”瞬間がある)


木々の間から、

大きな鳥居が見えてきた。


「わ……」

ひよりが息を呑む。


悠斗が思わず声を落とす。


「なんか……

 空気が違うな」


すずは鳥居を見上げた。


「……静か」


湊は胸の奥がじんわり熱くなる。


(ここが……大山祇神社)



鳥居をくぐると、

世界が一段階静かになった。


風の音が遠くなり、

足音が砂利に吸い込まれる。


ひよりが小声で言う。


「なんか……

 声、大きく出せんね」


悠斗も同じく小声になる。


「分かる。

 なんか“静けさを壊したらあかん”って感じや」


すずは木々を見上げた。


「……光が、柔らかい」


湊はその言葉に目を向けた。


(木漏れ日が……

 さっきより白い)


境内の光は、

海の光とも、森の光とも違う。

どこか“澄んだ白”をしていた。


加藤先生が言う。


「大山祇神社は“日本総鎮守”。

 昔から武士たちが必ず参拝した場所だ。

 空気が違うのは当然だ」


ひよりが鳥居の奥を見つめる。


「なんか……

 時間がゆっくりになった気がする」


悠斗が頷く。


「しまなみの旅の途中とは思えんわ。

 別の世界みたいや」


すずは静かに言った。


「……音が、ない」


湊は耳を澄ませた。


(本当に……

 風の音も、鳥の声も、遠い)



境内の奥へ進むと、

巨大な楠が姿を現した。


ひよりが息を呑む。


「……大きい……!」


悠斗が目を丸くする。


「これ……

 何百年とかのレベルやろ」


すずは木の幹にそっと手を当てた。


「……あったかい」


湊はその姿を見て胸が震えた。


(木なのに……

 “生きてる”って感じがする)


加藤先生が言う。


「この楠は“御神木”だ。

 樹齢は数千年とも言われている。

 しまなみの歴史よりずっと古い」


ひよりが小さく呟く。


「……すごい」


悠斗も静かに言った。


「なんか……

 背筋伸びるな」


すずは目を閉じた。


「……風、止まった」


湊は深く息を吸った。


(この島……

 本当に特別だ)



参拝を終えると、

四人は境内のベンチに座った。


ひよりが言う。


「なんか……

 心が落ち着くね」


悠斗が頷く。


「さっきまで“旅のテンション”やったのに、

 ここ来たら静かになるわ」


すずは木漏れ日を見つめながら言った。


「……光、きれい」


湊は空を見上げた。


(しまなみの旅って……

 海だけじゃないんだ)


加藤先生が言う。


「大三島は“しまなみの心臓”だ。

 ここを通ると、旅の意味が少し変わる」


ひよりが笑う。


「なんか分かる気がする」


悠斗が立ち上がる。


「よし、次はどこ行くん?」


先生が地図を指す。


「このまま北へ向かう。

 多々羅大橋を渡って“生口島”だ」


すずが小さく頷く。


「……風、また変わる」


湊は胸の奥が高鳴った。


(次の島……

 どんな景色が待ってるんだろう)


四人は自転車にまたがり、

大山祇神社を後にした。


森の静けさが、

背中をそっと押していた。


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