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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第52話 大三島へ渡る橋と、神の島の空気

伯方ビーチを後にして走り出すと、

海風が少しだけ冷たくなった。


「……風、変わった」

すずが呟く。


ひよりが頷く。


「分かる。

 なんか、さっきより“乾いた風”になったね」


悠斗が地図を見ながら言う。


「この先が“大三島橋”やな。

 渡ったら大三島や!」


湊は胸の奥がじんわり熱くなる。


(次の島……

 しまなみの中でも特別な島)


大三島は“神の島”と呼ばれ、

大山祇神社が鎮座する場所。


海の島から、

少しずつ“森の島”へと変わっていく。



大三島橋が見えてきた。


白いアーチが海の上に伸び、

その先に大三島の濃い緑が広がっている。


ひよりが息を呑む。


「大三島……

 なんか、森が深いね」


悠斗が言う。


「伯方島とは全然違うな。

 あっちは海の島って感じやったけど、

 こっちは“山の島”って感じや」


すずは静かに言った。


「……空気、重い」


湊はその言葉に気づいた。


(確かに……

 海の匂いが薄くなって、

 森の匂いが強くなってきた)


加藤先生が言う。


「大三島は“しまなみの中心”だ。

 海と山が一番近い島だぞ」


四人は橋へ向かって進んだ。



大三島橋の上は、

伯方大橋や来島海峡大橋とは違う静けさがあった。


風は穏やかで、

潮の匂いよりも“木の匂い”が混ざっている。


ひよりが言う。


「なんか……

 橋の上なのに、森の匂いするね」


悠斗が頷く。


「島が近いんやろな。

 緑が濃いわ」


すずは海を見下ろしながら言った。


「……海の色、深い」


湊はその言葉に目を向けた。


(本当だ……

 伯方島の透明な海とは違う。

 深い青に、緑が混ざっている)


島が変わると、

海の色も変わる。


それがしまなみ海道の魅力だった。



橋を降りると、

空気が一気に変わった。


ひよりが驚く。


「わ……

 森の匂いが強い……!」


悠斗が言う。


「大三島って、こんなに山深かったんやな」


すずは静かに言った。


「……音が少ない」


湊は耳を澄ませた。


(確かに……

 波の音が遠くなって、

 代わりに木の葉の音が聞こえる)


加藤先生が言う。


「大三島は“神の島”だ。

 大山祇神社があるからな。

 空気が少し違うだろう?」


ひよりが頷く。


「なんか……

 静かだけど、あったかい空気」


悠斗が言う。


「分かる。

 落ち着く感じするわ」


すずは森の方を見つめた。


「……風が、ゆっくり」


湊は胸の奥が少し震えた。


(この島……

 なんか特別だ)



大山祇神社へ向かう道は、

ゆるやかな坂と森の影が続いていた。


ひよりが言う。


「この道、好きかも。

 なんか“参道”って感じする」


悠斗が笑う。


「確かに。

 神社に向かってるって感じやな」


すずは静かに言った。


「……光、柔らかい」


湊はその言葉に頷いた。


(森の光って……

 海の光とは違う)


木漏れ日が道に落ち、

風が葉を揺らすたびに光が揺れる。


加藤先生が言う。


「大山祇神社は“しまなみの心臓”だ。

 行けば分かる。

 空気が違う」


ひよりが笑う。


「楽しみ……!」


悠斗が言う。


「よっしゃ、行こか!」


すずは静かにペダルを踏み出した。


「……森の匂い、好き」


湊は深く息を吸った。


(大三島……

 この島の空気、好きだ)


四人は森の道を進み、

大山祇神社へ向かっていった。


夏の光が、

木漏れ日の中で揺れていた。


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