第51話 伯方ビーチの透明な海と、午後の光
伯方ビーチに近づくにつれて、
風の匂いがまた変わった。
「……なんか、甘い匂いする」
ひよりが深呼吸する。
悠斗が笑う。
「海の匂いに混ざって、
なんか南国っぽい匂いするよな」
すずは静かに言った。
「……光が、白い」
湊はその言葉に頷いた。
(大島の海とも違う……
伯方島の海は“光が強い”)
道の先に、
白い砂浜と青い海が見えてきた。
ひよりが思わず声を上げる。
「わ……きれい……!」
悠斗が目を丸くする。
「透明度やばっ!
底まで見えるやん!」
すずは海を見つめたまま呟いた。
「……水、光ってる」
湊は息を呑んだ。
(本当に……透明だ)
砂浜に自転車を止めると、
四人は海の近くまで歩いていった。
波打ち際に立つと、
足元の砂がさらさらと崩れた。
ひよりが足を入れる。
「冷たっ……でも気持ちいい!」
悠斗も靴を脱いで足を入れる。
「うわ、これ……
プールより透明やん!」
すずは静かに海に手を伸ばした。
「……光が、水の中で揺れとる」
湊はその光景に胸を打たれた。
(海の中に、光の線が揺れてる……
こんなの、写真じゃ全部写らない)
午後の光が海に差し込み、
水面の揺れが砂の上に模様を描いていた。
波が寄せるたびに、
光の模様がふわりと動く。
加藤先生が言う。
「伯方ビーチは“光の海”だ。
午後のこの時間が一番きれいだぞ」
ひよりが笑う。
「ほんとだ……
海がキラキラしとる」
悠斗が言う。
「ここ、泳ぎたくなるな……」
すずは静かに言った。
「……音が優しい」
湊は耳を澄ませた。
(波の音が……
さっきの港よりもっと柔らかい)
砂浜に座ると、
風がゆっくりと肌を撫でた。
しばらく海を眺めたあと、
四人はそれぞれカメラを構えた。
ひよりは砂浜の足跡を撮り、
悠斗は海の透明さを撮り、
すずは光の模様を撮り、
湊は……海と空の境界を撮った。
(青と白の境目が……
ゆっくり溶けていくみたいだ)
シャッターの音が、
夏の午後の空気に溶けていった。
加藤先生が言う。
「そろそろ行くぞ。
次は“大三島”だ。
しまなみの中でも特別な島だ」
ひよりが立ち上がる。
「大三島……神社がある島だよね」
悠斗が言う。
「大山祇神社やろ?
めっちゃ有名なとこやん!」
すずは静かに頷いた。
「……森の匂い、するかな」
湊は海を振り返った。
(伯方島の海……
忘れられない色だ)
四人は自転車にまたがり、
大三島へ向かって走り出した。
夏の光が、
次の島への道を照らしていた。




