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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第46話 来島海峡大橋と、最初の風

ペダルを踏み出すと、

海からの風がふわりと頬を撫でた。


サンライズ糸山を出て、

来島海峡大橋へ向かうスロープを登っていく。


「うわ……もう海が見える」

ひよりが息を弾ませる。


「橋、めっちゃ高いやん……!」

悠斗が思わず声を上げた。


すずは静かに海を見つめた。


「……光、強い」


湊は胸の奥がじんわり熱くなる。


(ここから……本当に始まるんだ)



スロープを登り切ると、

巨大な白い橋が目の前に広がった。


来島海峡大橋。

三連吊橋が連なる、しまなみ海道の象徴。


ひよりが息を呑む。


「……大きい。

 なんか、空に浮いとるみたい」


悠斗が笑う。


「写真で見るより、何倍も迫力あるな!」


すずは風に髪を揺らしながら言った。


「……海の上に、道がある」


湊はスマホを構えたが、

すぐに下ろした。


(写真じゃ……このスケールは伝わらない)


加藤先生が後ろから声をかける。


「しまなみ海道は“走って初めて分かる景色”だ。

 まずは風を感じろ」


湊は深く頷いた。


(そうだ……

 まずは、この道を感じたい)



四人はゆっくりと橋へ進んだ。


海風が強く、

潮の匂いが濃くなる。


「風、気持ちいい!」

ひよりが笑う。


「潮の匂い、すごいな……!」

悠斗が声を上げる。


すずは静かにペダルを踏みながら言った。


「……波、速い」


湊も気づいた。

橋の下では、白い波が複雑に渦を巻いている。


(これが……来島海峡の潮流)


橋の上から見下ろす海は、

ただ青いだけじゃなかった。

白い筋、渦、影。

海が“動いている”のが分かる。


ひよりが言う。


「なんか……生き物みたいだね」


悠斗が頷く。


「海って、こんなに動いとるんやな」


すずは静かに呟いた。


「……音が違う」


湊は耳を澄ませた。

風の音、波の音、橋のワイヤーが鳴る音。

全部が混ざり合って、

しまなみの“最初の音”になっていた。



橋の中央付近に差し掛かると、

景色が一気に開けた。


「うわ……!」

ひよりが思わず声を上げる。


「島がいっぱい見える!」

悠斗が指をさす。


すずは目を細めて言った。


「……海の色、変わる」


湊は息を呑んだ。


(本当だ……

 手前は深い青、

 遠くは薄い青、

 島の影が落ちて緑が混ざる)


写真では絶対に伝わらない“色の層”があった。


加藤先生が言う。


「しまなみ海道は“海の色が変わる道”だ。

 島が近づくと色が変わり、

 橋を渡ると風が変わる」


湊は胸の奥が震えた。


(この旅……

 絶対に忘れられない)



橋の終わりが近づくと、

大島の緑がゆっくりと近づいてきた。


ひよりが言う。


「次は……大島だね」


悠斗が笑う。


「よっしゃ、最初の島や!」


すずは静かに言った。


「……海の匂い、変わってきた」


湊は深く息を吸った。


(しまなみ海道……

 最初の橋を渡ったんだ)


四人の自転車は橋を降り、

大島の道へと入っていった。


夏の風が、

次の景色へと四人を誘っていた。


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