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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第43話 出発の準備と、夏のしまなみへ向けて

七月の午後。

蝉の声が校庭に響き始め、

夏の気配がじわりと濃くなってきた。


写真部の部室では、

四人が机を囲んで準備を進めていた。


「まずは自転車の整備からやな」

悠斗が工具箱を開ける。


「チェーン、ちょっと錆びとるね」

ひよりが覗き込む。


すずは静かにタイヤを押して確認した。


「……空気、少ない」


湊はメモを取りながら言う。


「空気圧、チェーン、ブレーキ……

 全部チェックしないと」


加藤先生が部室に入ってきた。


「お、いい感じに進んでるな。

 しまなみは距離が長い。

 整備は“命綱”だぞ」


悠斗が胸を張る。


「任せてください!

 俺、こういうの得意なんで!」


ひよりが笑う。


「悠斗くん、頼りにしとるよ」


すずは静かに頷いた。


「……大事」


湊は工具を手に取りながら思った。


(旅って、準備の時間も楽しいんだな)



整備が一段落すると、

次は荷物の確認に移った。


加藤先生がホワイトボードに書く。


「三日間の旅だが、荷物は最小限にする。

 自転車旅は“軽さが正義”だ」


ひよりが手を挙げる。


「服は……一泊分でいいんですか?」


「洗えばいい。

 夏だからすぐ乾く」


悠斗が言う。


「水分は?

 ペットボトル何本いるん?」


「途中の島ごとに自販機がある。

 ただし、熱中症対策でスポドリは必須だ」


すずが静かに言った。


「……日焼け止め、いる」


「絶対いる。

 しまなみは“日陰が少ない”からな」


湊はリュックの中身を確認しながら言う。


「カメラは……

 予備バッテリー二つ、SDカード三枚。

 これで足りますか?」


加藤先生が頷く。


「十分だ。

 撮影は“量より質”だぞ」


ひよりが笑う。


「でも、いっぱい撮りたくなるよね」


悠斗が言う。


「島ごとに景色違うしな!」


すずは地図を見つめながら呟いた。


「……海の色、変わる」


湊はその言葉に胸が少し震えた。


(確かに……

 島ごとに“海の青”が違うんだ)



次は、旅のテーマを決める時間になった。


加藤先生が言う。


「テーマは“夏のしまなみ”でもいいし、

 もっと個人的な視点でもいい。

 自由に決めていいぞ」


ひよりが言う。


「私は……“島の暮らし”を撮りたいです。

 人の気配とか、港とか」


悠斗が言う。


「俺は“橋の迫力”やな!

 多々羅大橋とか絶対撮りたい!」


すずは静かに言った。


「……風の道」


湊は少し考えてから言った。


「僕は……

 “旅の途中の色”を撮りたいです。

 海の青、橋の白、島の緑……

 全部が“夏の色”になる気がして」


加藤先生は満足そうに頷いた。


「いいテーマだ。

 四人とも違う視点を持っている。

 それが旅を豊かにする」



準備が終わると、

部室の空気はどこか“出発前夜”のような高揚感に包まれた。


悠斗が言う。


「先生、当日の流れってどうなるん?」


「朝、うちの実家のトラックで

 自転車を四台積んで今治へ向かう。

 サンライズ糸山の近くで降ろして、

 そこから四人は自転車でスタートだ」


ひよりが言う。


「先生は……?」


「私はトラックで後ろからついていく。

 無理はしない。

 撮りたい場所があれば、いつでも止まれ」


すずが安心したように言った。


「……よかった」


湊は胸の奥が熱くなる。


(本当に……行くんだ)


加藤先生が締めくくる。


「しまなみ海道は“旅の道”だ。

 焦らず、ゆっくり、

 自分たちのペースで進め。

 初日は尾道まで行く。

 そこで一泊だ」


ひよりが笑う。


「尾道……楽しみ!」


悠斗が拳を握る。


「絶対ええ写真撮るで!」


すずは静かに言った。


「……夏の海、撮りたい」


湊は窓の外の青空を見上げた。


(夏のしまなみ……

 どんな景色が待ってるんだろう)


準備は整った。

あとは、出発の日を待つだけだった。


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