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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第42話 夏の気配と、しまなみ海道の計画

七月。

期末試験が終わった放課後の部室には、

どこか“夏の匂い”が漂っていた。


「終わったぁぁぁ……」

悠斗が机に突っ伏す。


「数学、ギリギリやった……」

ひよりがプリントを扇子みたいにあおぐ。


すずは静かに椅子に座り、

ほっと息をついた。


「……終わった」


湊も胸の奥がふっと軽くなるのを感じた。


(これで、夏が来る)


加藤先生が部室に入ってきた。


「お、みんなお疲れ。

 試験が終わったということは……

 そろそろ“しまなみ海道”の計画を本格的に始めるぞ」


悠斗が勢いよく顔を上げる。


「来た!

 ついにしまなみやな!」


ひよりが目を輝かせる。


「ほんとに行けるんですか?」


「もちろんだ。

 ただし、今回は“本格的な遠征”になる。

 しっかり準備するぞ」


すずが静かに言った。


「……橋、長い」


「長い。

 でも、景色は最高だ」


湊の胸が高鳴った。


(しまなみ海道を……自転車で渡るんだ)



加藤先生はホワイトボードに

大きく「しまなみ海道・夏の遠征計画」と書いた。


「まず、移動手段だが……

 今回は“うちの実家のトラック”を使う」


悠斗が驚く。


「先生の実家、トラックあるん!?」


「ある。農家だからな。

 荷台に自転車を四台積んで、

 今治のしまなみ海道入口まで運ぶ」


ひよりが手を挙げる。


「じゃあ、私たちは今治からスタート?」


「そうだ。

 サンライズ糸山の近くまで運ぶ。

 そこから四人は自転車でしまなみ海道へ。

 私はトラックで後ろから併走する」


湊が聞く。


「併走って……ずっとですか?」


「基本は後方支援だ。

 体調不良やケガがあったらすぐ拾えるようにする。

 荷物も最低限でいい」


すずが小さく頷いた。


「……安心」


ひよりが言う。


「撮影場所とかペースは、

 私たちが決めていいんですか?」


「もちろんだ。

 “写真部の旅”だからな。

自分たちで見たい景色を選べ」


悠斗が拳を握る。


「よっしゃ!

 めっちゃ楽しみになってきた!」


湊も胸の奥が熱くなる。


(旅の“自由さ”がある……)



加藤先生は地図を広げた。


「今回の旅は三日間だ」


ひよりが身を乗り出す。


「三日間?」


「そうだ。

 初日:今治 → 尾道まで走破(尾道泊)

 二日目:尾道の街を撮影

 三日目:尾道から松山へ帰還(船・電車・バスのいずれか)

 この三日間で行く」


悠斗が目を丸くする。


「尾道で泊まるん!?

 めっちゃええやん!」


すずが地図を指でなぞる。


「……尾道、坂が多い」


「そうだ。

 坂の街、海の街、映画の街だ。

 写真を撮るには最高の場所だぞ」


湊は胸が高鳴った。


(尾道……

 映画で見たあの街を、自分の目で見られるんだ)



加藤先生が続ける。


「しまなみ海道は七つの島を渡る。

 大島、伯方島、大三島、生口島、因島、向島……

 そして尾道だ」


ひよりが言う。


「島ごとに雰囲気が違うんですよね?」


「違う。

 橋も全部違う。

 写真部としては“宝の道”だ」


すずが呟く。


「……海が近い」


「近いどころか、

 “海の上を走る”感覚だぞ」


悠斗が言う。


「先生、これ……

 撮影しながらやと、結構時間かかるんちゃう?」


「だからこそ三日間だ。

 急がない。

 “撮りたいものを撮る旅”にする」


湊は思った。


(今治編みたいに、

 ゆっくり景色を味わえるんだ)



加藤先生が締めくくる。


「来週から準備を始める。

 自転車の整備、荷物の確認、

 撮影テーマの相談もしておけ」


ひよりが言う。


「テーマかぁ……

 “夏のしまなみ”とか?」


悠斗が言う。


「“海と橋”とかもええな」


すずは静かに呟いた。


「……風の道」


湊は胸の奥が少し震えた。


(風の道……

 しまなみ海道にぴったりだ)


加藤先生が微笑む。


「いいテーマだ。

 夏の旅は、準備から始まっている。

 最高の三日間にしよう」


部室の窓から差し込む七月の光が、

机の上の地図をやわらかく照らしていた。


しまなみ海道の夏が、

確かに動き始めていた。


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