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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第41話 尾道三部作と、部室の三日間

今治から帰ってきた翌週の放課後。

写真部の部室には、

いつもより少しだけ“旅の余韻”が残っていた。


「しまなみ、やっぱすごかったなぁ」

悠斗が椅子を回しながら言う。


「橋も島も、全部きれいやったね」

ひよりが笑う。


すずは机に置いた写真を眺めていた。


「……海、静かだった」


湊はプリントした写真を並べながら言った。


「また行きたいな。

 今度は自転車で渡ってみたい」


その言葉に、加藤先生がふっと笑った。


「自転車でしまなみを渡るなら、

 “尾道”も知っておくといいぞ」


「尾道?」

悠斗が首をかしげる。


先生は棚から古いDVDケースを三つ取り出した。


「大林宣彦監督の“尾道三部作”だ。

 『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』

 しまなみ海道の“文化的な入口”みたいな作品だよ」


ひよりが目を輝かせる。


「えっ、映画なんですか?」


「そうだ。

 尾道の坂道、海、街の空気がそのまま映っている。

 しまなみを語るなら、避けて通れない三本だ」


すずが静かにDVDケースを手に取った。


「……見てみたい」


悠斗が言う。


「三本ってことは……三日連続で見るん?」


加藤先生が頷く。


「今日から月・火・水の三日間、放課後に上映会をしよう。

 写真部の“文化週間”だ」


ひよりが嬉しそうに手を叩く。


「やった!

 映画見るの久しぶり!」


湊も自然と笑みがこぼれた。


(旅の後に映画……なんかいいな)



◆ 月曜日『転校生』


部室のカーテンを閉め、

プロジェクターをつけると、

白い壁に尾道の街並みが映し出された。


坂道、石段、古い家並み、

そして海。


「うわ……雰囲気あるなぁ」

悠斗が小声で言う。


ひよりが頷く。


「尾道って、こんな街なんやね」


すずは画面をじっと見つめていた。


「……坂、多い」


湊は思った。


(今治とは違うけど、

 どこか“瀬戸内の匂い”がする)


映画が終わると、

部室には静かな余韻が残った。


加藤先生が言う。


「尾道は“坂の街”だ。

 しまなみ海道の本州側の玄関口でもある」


ひよりが言う。


「いつか行ってみたいね、尾道」


悠斗が拳を握る。


「行こうや!

 しまなみ渡ったら、そのまま尾道や!」


すずも小さく頷いた。


「……行きたい」


湊は胸の奥が少し温かくなった。



◆ 火曜日『時をかける少女』


翌日。

部室には昨日より少し多くの部員が集まっていた。


「名作やで、これ」

加藤先生が言う。


映画が始まると、

尾道の街と、

どこか懐かしい空気が部室に広がった。


ひよりが小声で言う。


「なんか……青春って感じやね」


悠斗が頷く。


「分かるわ。

 こういう雰囲気、好きや」


すずは画面を見つめながら呟いた。


「……海、きれい」


湊は思った。


(尾道の海って、

 今治とも松山とも違うんだな)


映画が終わると、

部室にはまた静かな余韻が残った。


加藤先生が言う。


「尾道は“時間がゆっくり流れる街”だ。

 映画を見ると、それがよく分かるだろう」


湊は頷いた。


(確かに……時間の流れ方が違う)



◆ 水曜日『さびしんぼう』


三日目。

部室の空気はどこか落ち着いていた。


映画が始まると、

尾道の坂道と海が、

また違う表情で映し出された。


ひよりが言う。


「尾道って、

 同じ場所でも映画によって全然違うね」


悠斗が頷く。


「街に“表情”があるんやな」


すずは静かに言った。


「……歩いてみたい」


湊は画面を見つめながら思った。


(尾道……

 いつか行ってみたいな)


映画が終わると、

部室には三日間の余韻がゆっくりと積もっていた。


加藤先生が言う。


「三本見てどうだった?」


ひよりが笑う。


「尾道、行きたくなりました!」


悠斗が拳を握る。


「しまなみ渡って、そのまま尾道やな!」


すずも小さく頷いた。


「……行こう」


湊は静かに言った。


「いつか、みんなで行きたいですね」


加藤先生が満足そうに微笑む。


「そのためにも、

 まずは“松山での日常”をしっかり楽しめ。

 旅はいつでも逃げない」


部室の窓の外には、

松山の夕暮れがゆっくりと広がっていた。


三日間の映画鑑賞は、

旅の続きのようで、

でも確かに“日常への帰還”でもあった。


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