第40話 松山へ帰る道と、旅の余韻
電車が今治駅を離れると、
窓の外に港町の灯りがゆっくり遠ざかっていった。
車内は静かで、
揺れが心地よいリズムを刻んでいる。
「なんか……終わったんやなぁ」
悠斗が座席に深く沈む。
ひよりが笑う。
「でも、すごく濃い二日間やったよね。
今治って、こんなに見どころ多いんやね」
すずは窓の外を見つめたまま言った。
「……海、きれいだった」
加藤先生が頷く。
「旅は“全部見た”と思っても、
また来たくなるものだ。
今治は特にそういう街だな」
湊は静かに外を眺めた。
(今治の海、橋、島、街……
どれも“また見たい”と思える景色だった)
電車は海沿いを走り、
遠くにしまなみ海道の影が見えた。
ひよりが指さす。
「見て、あれ多々羅大橋やない?」
悠斗が身を乗り出す。
「ほんまや!
昼間とは全然違うな。
夜の橋もええなぁ」
すずは小さく呟いた。
「……静か」
湊はその景色を目に焼き付けた。
(旅の帰り道って、
なんでこんなに“余韻”が残るんだろう)
松山駅に着くと、
夜の空気が少しひんやりしていた。
「帰ってきたねぇ」
ひよりが伸びをする。
「松山の空気、なんか落ち着くわ」
悠斗が笑う。
すずは駅前の灯りを見上げた。
「……ただいま、って感じ」
加藤先生が言う。
「今日はよく歩いたな。
写真もたくさん撮れただろう。
明日からまた部活で整理しよう」
湊は頷いた。
「はい。
なんか……“旅の写真”って、
撮った瞬間より、帰ってきてからの方が
意味が分かる気がします」
先生は満足そうに微笑んだ。
「それでいい。
写真は“思い出すための道具”だからな」
ひよりが言う。
「また行きたいね、今治」
悠斗が拳を握る。
「次は自転車でしまなみ渡ろうや!」
すずも小さく頷いた。
「……渡ってみたい」
湊は駅前の空を見上げた。
(また行きたいな。
今治にも、島にも)
旅の終わりは静かで、
でもどこか温かかった。
五人はそれぞれの帰り道へ歩き出し、
松山の夜がゆっくりと広がっていった。




