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光のしまなみ、夏のさざなみ  作者: 双鶴


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第39話 海鮮の夜と、帰り道の静けさ

海沿いの食堂に入ると、

店内には煮付けの甘い香りと、

焼き魚の香ばしい匂いが広がっていた。


「絶対うまいやつやん……」

悠斗がすでに目を輝かせている。


ひよりが笑う。


「今治は海の街やけんね。

 魚はどれも新鮮なんよ」


すずは静かに席についた。


「……楽しみ」


加藤先生がメニューを開く。


「せっかくだから“地魚盛り”を頼もう。

 旅の締めにふさわしいやつだ」



運ばれてきた大皿には、

鯛、アジ、サワラ、タコ。

瀬戸内の海がそのまま乗っているようだった。


湊は思わず息を呑んだ。


(色がきれいだ……)


ひよりが説明する。


「瀬戸内の魚はね、

 潮が速いけん身が締まっとるんよ」


悠斗は刺身を一口。


「……うまっ!

 なんやこれ、歯ごたえすごい!」


すずはじゃこ天をゆっくり噛みしめる。


「……香りがいい」


加藤先生が頷く。


「瀬戸内の魚は“味が濃い”と言われる。

 潮に揉まれて育つからだ」


湊も刺身を口に運んだ。


(確かに……噛むほどに味が広がる)


煮付けの甘い香り、

じゃこ天の香ばしさ、

刺身の清々しい旨味。


旅の夜にぴったりの食卓だった。



食事を終えると、

五人は港へ向かって歩いた。


夜の海は静かで、

船の灯りがゆらゆらと揺れている。


「今日、いろんな景色見たね」

ひよりが言う。


「島も橋も、全部すごかったわ」

悠斗が伸びをする。


すずは海を見つめたまま呟いた。


「……夜の海、好き」


湊は港の柵に手を置いた。


(今治の夜って、こんなに静かなんだ)


加藤先生が時計を見て言う。


「そろそろ駅に向かうぞ。

 松山行きの電車に間に合わなくなる」


「はーい!」

四人の声が揃った。



今治駅のホームに立つと、

夜風が少し冷たく感じられた。


電車が滑り込み、

五人は乗り込む。


座席に腰を下ろすと、

今日の疲れがふっと抜けていくようだった。


ひよりが言う。


「なんか……あっという間やったね」


悠斗が頷く。


「でも濃かったわ。

 今治、めっちゃええとこやな」


すずは窓の外を見つめた。


「……また来たい」


加藤先生が微笑む。


「旅は“また来たい”と思えたら成功だ」


湊は静かに外を眺めた。


(今治……

 また来たいな)


電車はゆっくりと動き出し、

港町の灯りが遠ざかっていく。


旅の終わりの静けさが、

五人を包み込んでいた。


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